eぶらあぼ 2023.8月号
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SACDCDCDCD1181995年から沼尻竜典と活動を共にしてきたトウキョウ・ミタカ・フィルハーモニア(旧トウキョウ・モーツァルトプレイヤーズ)による2000年ライブ録音の初リリース。「密」なアンサンブルがじつに芳しい2大弦楽セレナードだ。それぞれの声部のあいだを狭め、しっとり溶け合う、柔らかな光を帯びた響き。チャイコフスキーは、滑らかにエピソードを繋いでいくが、終楽章の対位的な表現では立体感のある広がりで聴かせる。ドヴォルザークも活発な動きと、カンタービレを巧みに交代させながら、フィナーレまで溶々たる流れを作り出す。その音楽の運びの至妙なこと! (鈴木淳史)バッハをはじめドイツ・バロック音楽の演奏に定評のある鍵盤楽器(フォルテピアノ、チェンバロ)奏者、高田泰治の最新盤は、フランスの作曲家クープランのクラヴサン音楽集。有名なバッハ・ファミリーならぬクープラン一族というコンセプトが面白い。いわゆる大クープラン、フランソワを中心に3世代にわたる作品が収録されている。舞曲系組曲から各曲が標題を持った曲集へ、という同国のクラヴサン音楽の様式の変遷が見て取れるのも興味深い。高田の演奏は各曲の性格を鮮やかに描く一方で、音価の指示がないが故に想像力と即興の能力が問われる前奏曲でも確信に満ちた解釈を感じさせる。(大津 聡)第1回ショパン国際ピリオド楽器コンクール優勝者のトマシュ・リッテル。コンクールライブ盤に続く本アルバムでは1819年製グラーフのレプリカを使用し、そのウィーン的サウンドが生かされるプログラムを組んだ。ショパンの前の世代のポーランド人作曲家・レッセルの「幻想曲」やベートーヴェンの変奏曲では、重みのある多彩な音がオルガンやオーケストラを思わせる。ショパンからは、ウィーンの楽器で作曲されていたと言われる初期作品のノクターンやスケルツォ第1番を選び、感情や情景の幻想的な移ろいを丸みのある音で巧みに描く。ピリオド楽器のパワー、表現の広さを存分に伝える。(高坂はる香)N響の奏者を務めながら、様々なアンサンブルで活躍する池上亘の初のソロ・アルバム。まずはトロンボーン独奏の代表作が並んだ選曲が、“満を持して”の意気込みを感じさせる。芳醇な音色とスムーズな音の運びで奏される、堅牢かつ濃密な音楽は、どれも聴き応え十分。特にカステレードやダヴィットの作品等は一般ファンに一聴をお薦めできるし、N響の打楽器奏者・竹島悟史の委嘱作もなかなか味わい深い。城綾乃の繊細なピアノも快演に大きく貢献。4曲が今年の日本管打楽器コンクールの課題曲・選択曲に指定されているので、奏者の規範としても格好の1枚だ。(柴田克彦)チャイコフスキー:弦楽セレナード ハ長調/ドヴォルザーク:弦楽セレナード ホ長調沼尻竜典(指揮)トウキョウ・ミタカ・フィルハーモニアアルマン=ルイ・クープラン:「クラヴサン曲集」より〈道化またはアダム〉〈悲しむ人〉〈おしゃべり女たち〉〈シェロン〉/フランソワ・クープラン:クラヴサン曲集第1巻 第4オルドル、同第3巻 第13オルドル/ルイ・クープラン:組曲 イ短調高田泰治(クラヴサン)レッセル:幻想曲 ハ長調/ハイドン:幻想曲(カプリッチョ) ハ長調/ヴォジーシェク:幻想曲風ソナタ 変ロ短調/ベートーヴェン:創作主題による32の変奏曲 ハ短調/ショパン:夜想曲 嬰ハ短調「レント・コン・グラン・エスプレッシオーネ」、スケルツォ第1番 ロ短調 他トマシュ・リッテル(ピリオド・ピアノ)NIFC/東京エムプラスPNIFCCD 146 ¥3143(税込)デュティユー:コラール、カデンツァとフガート/カステレード:ソナチネ/ボザ:バラード/ヒンデミット:トロンボーン・ソナタ/ダヴィット(R.ミュラー編/ツィンマーマン版):コンチェルティーノ 変ホ長調/竹島悟史:フロウ・ウィズ・ザ・ブリーズ 他池上亘(トロンボーン)城綾乃(ピアノ)フォンテックFOCD9881 ¥3080(税込)収録:2000年9月、三鷹市芸術文化センター(ライブ)オクタヴィア・レコードOVCL-00815 ¥3850(税込)ナミ・レコードWWCC-7984 ¥2750(税込)チャイコフスキー&ドヴォルザーク:弦楽セレナード/沼尻竜典&ミタカ・フィルクープラン一族のクラヴサン音楽集/高田泰治幻想曲集〜レッセル、ハイドン、ヴォジーシェク/トマシュ・リッテルフロウ・ウィズ・ザ・ブリーズ/池上亘

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