第617回 定期演奏会 5/24(火)19:00 サントリーホール問 読響チケットセンター0570-00-4390 https://yomikyo.or.jp5/26(木)~6/4(土) 飛行船シアター(旧・上野学園石橋メモリアルホール)、紀尾井ホール、TCMホール(東京音楽大学 中目黒・代官山キャンパス)問 テレビマンユニオン03-6418-8617 https://tivc.jp52上岡敏之 ©読響イレベルに歌いこなす超人のようなソプラノで、今年5月の前半にもドレスデン州立歌劇場で蝶々夫人を歌う。森谷はすでに同じベルクの《ルル》で、高音もコロラトゥーラも声量も圧倒的なスケールのルルを披露しており、《ヴォツェック》でも人間心理の闇に深く迫るに違いない。アントワン・タメスティ ©Julien Mignotンデミット、ブリテンの無伴奏曲など、ファイナルはブラームスのソナタとウォルトンの協奏曲といったヴィオラの名作で、俊才たちがその腕を振るう。審査の緊張感に、活動制限のあった1年間の思いも加わり、聴きごたえのある時間になるのは間違いない。森谷真理 ©タクミジュン そして後半は、シェーンベルクの弟子ではなく師であるツェムリンスキーの交響詩「人魚姫」が取り上げられるのがおもしろい。無調と伝統的書法の間で迷いながら描かれた人魚姫の葛藤が、大編成のオーケストラを変幻自在に操舵する上岡のタクトを通じて、熱く浮かび上がるだろう。今井信子 ©Nicolas Lieber また、期間中には2回のガラ・コンサートがあり、審査委員をはじめ内外の名手や若手、桐朋学園オーケストラも参加。無伴奏から協奏曲まで、古典から現代新作まで、幅広い曲目でヴィオラの底知れない魅力をたっぷり味わえる。中でもやはりタメスティの演奏は要注目だ。文:香原斗志文:林 昌英上岡敏之(指揮) 読売日本交響楽団刺激的な20世紀ウィーンの音楽世界、森谷真理の鬼気迫る歌唱も 刺激的なプログラムである。5月の読売日本交響楽団、ドイツ在住の上岡敏之は得意のドイツもののなかでも、前半は新ウィーン楽派の無調音楽で揃えてきた。 まずウェーベルンの「6つの小品」は、無調で書かれたオーケストラによる箴言のような作品だ。今回演奏される1928年版は師のシェーンベルクに捧げられたもので、上岡のタクトで、その簡潔な美しさに気づかされるはずだ。 続いて、同じくシェーンベルクの弟子、ベルクによる20世紀オペラの傑作《ヴォツェック》から「3つの断章」。全曲の上演前、ベルク自身がソプラノと管弦楽のために3場面を抜粋したもので、無調音楽の精緻な構成に乗せて歌われる、美しくも鬼気迫る旋律と響きが格別だ。 注目はなんといっても国際的に活躍する森谷真理。軽いコロラトゥーラの役から蝶々夫人やサロメまでをハヴィオラスペース2022 Vol.30 第5回東京国際ヴィオラコンクールワールドワイドのヴィオラコンクール、待望の再開 ヴィオラの祭典、「ヴィオラスペース」の時期が近づいてきた。1992年に始まった本イベントは今年第30回の記念の節目を迎え、第5回「東京国際ヴィオラコンクール」を開催。本当に久しぶりに国際色豊かなイベントが実現する見込みとなった。2009年開始の本コンクールは3年に1回の開催だったが、今回は2018年以来の機会となる。お気づきのように、本来は2021年が第30回とコンクール第5回になるはずだったが、20年が残念ながら延期になったことで、1年ずつ後ろにずれたのである。 コンクールについて、前回までヴィオラスペース創始者の今井信子が務めてきた審査委員長を、今回から現在世界最高のヴィオリストのひとりであるアントワン・タメスティが務めることになった。新たな節目を迎えたコンクールは、10日間にわたって4つの審査段階があり、いずれも観客入りで行われる予定。それぞれでバッハ、ヒ
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