5/11(水)18:30 日経ホール問 日経公演事務局03-5227-4227 https://stage.exhn.jp第522回日経ミューズサロン上原彩子 デビュー20周年記念ピアノ・リサイタル節目の年に紡がれる「展覧会の絵」 2002年、チャイコフスキー国際コンクールピアノ部門で、女性として、日本人として初めて優勝し、一躍時の人となった上原彩子。以後、3人の娘の出産と子育てを経験しつつ第一線で演奏を続け、さらには教育にも携わるなど、精力的に活動してきた。 今年は優勝から20年の節目で、数々の記念公演が予定されている。なかでも、ピアノソロに適したサイズの会場でじっくり彼女の音を堪能できる機会となるのが、第522回日経ミューズサロンでのリサイタルだ。43Interview中村 愛(ハープ) & 伊藤悠貴(チェロ)チェロとハープが奏でる美しき「レクイエム」 多彩な活動を展開するハープの中村愛と、国際的に活躍するチェロの伊藤悠貴が、6月にデュオ公演を行う。世界でも稀なこの意外なコラボは、「2019年以来数回行ってきたが、フルサイズの公演は今回が初」。伊藤は「これが凄く合う。それにピアノとの共演時とは音の出し方がまったく変わるので、演奏するのが楽しみ」、中村は「弦楽器同士ということもあって、音色・音量的に対等な関係で演奏できる」と語る。 プログラムはすべて近代フランスの大家フォーレの作品。「今、絵画や文学と音楽の関係の研究に傾注している。例えば今回演奏する『月の光』はヴェルレーヌの詩に基づき、その詩は画家のワトーの絵に影響されている、といったこと」と語る中村と、「今は1人の作曲家に焦点を当てたコンサートに意義を感じている」伊藤の双方にとってタイムリーな企画でもある。 前半はハープでの「月の光」「パヴァーヌ」やデュオでの「夢のあとに」「エレジー」等の有名な小品、そして後半はなんと「レクイエム」の完全全曲版(中村愛編曲・世界初演)だ。中村「私は元々、ハープでオール・フォーレ・プロをと思っていました。ただ小品だけでないインパクトのある内容を考えた時、大好きな『レクイエム』をやろうと。何しろ人の声を奏でる楽器といえ 前半はシューマンの「幻想小曲集 op. 12」に続き、リストがシューマンに献呈した作品であるピアノ・ソナタ ロ短調。ピアニストにとって重要なレパートリーに挑む。そして後半はムソルグスキー「展覧会の絵」。彼女が20代半ばで録音し、その後も取り上げているレパートリーだ。堂々たる「キエフの大門」で閉じられるこの楽曲に、今、どんな想いをのせて届けてくれるのだろうか。ばチェロ以外にないですから」 とはいえ編曲は大変そうだ。中村「フォーレの良さの1つは内声の美しさ。そこで内声の大事な部分をチェロに割り振ったり、その間にハープが合唱の部分を弾いたりなど、色々と工夫しています。全体に、片方が合唱を担当するといった作りにはしていませんし、室内楽のようなレクイエムができたかな、と思っています」伊藤「本当に室内楽的で、弾いてみて『ここまで上手くいくんだ』と感心しました」 3大レクイエムの1つである曲自体、清澄な名作で人気も高い。中村「面白いのはフォーレが信仰心の厚い人ではなかった(といわれている)こと。だからこそ、『怒りの日』を欠くなど、レクイエムの形式を踏まない、ハープでも演奏可能な曲ができたと思うのです。しかもフォーレ自身が考える魂の救済が全編を貫いています」浜離宮ランチタイムコンサートvol.215 中村 愛(ハープ) & 伊藤悠貴(チェロ)6/14(火)11:30 浜離宮朝日ホール問 朝日ホール・チケットセンター03-3267-9990 https://www.asahi-hall.jp/hamarikyu/中村 愛 ©Ryusei Kojima 今回の「レクイエム」が聴く人にもたらすのは何だろう?伊藤「まさしく魂の救済。色々と厳しい時代だからこそ届けたい曲です。しかも今回は人間の声という生々しい部分を排除してそれを表現できる点が意義深いと思っています」 さらに2人は、フォーレ自体の魅力を「和声感」だと話す。その魅力を伝えるのに、伊藤が「東京で最もリサイタルに相応しい」と語る浜離宮朝日ホールは最適だ。ここは、興味津々の当デュオを生体験し、清新な音世界に浸りたい。取材・文:柴田克彦文:高坂はる香伊藤悠貴 ©平舘 平©武藤 章
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