eぶらあぼ 2022年5月号
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in in 本項では、ぶらあぼONLINEで好評だった連載を抜粋でお届けします!2012年のブルージュ国際古楽コンクール優勝以来、世界でもっとも注目されるチェンバリストとなったフランスの若き鬼才、ジャン・ロンドーさん。最新CD『J.S.バッハ:ゴルトベルク変奏曲』が話題沸騰中です。2月、ベルギーを拠点に活躍するフルート&フラウト・トラヴェルソ奏者、柴田俊幸さんがパリのジャンさんを訪ねました。ジャンの言葉からは、彼の音楽的思考の一端を垣間見ることができます。柴田俊幸(T) あなたの演奏で大好きなのは、音と柴田俊幸(T)音のあいだで「歌う」ことができる点です。チェンバロという楽器の特性上、技術的には不可能だと言われています。でも、CDやコンサートで聴く限り、あなたはどうにかしてそれをやってのけていますね。そのコツは何ですか?ジャン・ロンドー(J) 難しいけれど、不可能ではあジャン・ロンドー(J)りません。チェンバロは撥弦楽器なので、フルートやヴァイオリンのように音のシェイプを作ることのできる楽器とは違い、アタックとリリースしかできません。「チェンバロは表現力がない、ダイナミクスがない」♪沈黙に存在する質量34などという声をよく耳にするけど、そんなことはありません! 実際は音の強弱を作り出すことは可能です。欠陥品ではないのです。 多くの偉大な作曲家が、チェンバロのために素晴らしい曲を書いてきました。音楽的に考えてもチェンバロでないとダメだったのです。この楽器で音楽を表現するためにはしっかりした技術が必要で、その技術を会得するための正しい筋道、つまり教育が必要です。それを理解した上で初めて、どうやってこの楽器を使って歌わせることができるかを考え始めなければならないのです。 アタックとリリースの間に何もない。そう考えてしまうのは、“piège” つまり「罠」です。チェンバロで音楽を歌わせるには、アタックとリリースの間も常に古楽シーン最前線を行くチェンバロ奏者 古楽シーン最前線を行くチェンバロ奏者 ジャン・ロンドーに聞く    ジャン・ロンドーに聞く    ParisParisジャン・ロンドー ×× 柴田俊幸ジャン・ロンドー柴田俊幸

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