eぶらあぼ 2022年5月号
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 「サントリーホール チェンバーミュージック・ガーデン(CMG)」が今年も“開園”する。「ブルーローズ」で多彩な作品を楽しめる室内楽の祭典も12回目を迎え、今年は6月4日から19日までの16日間、22公演が予定されている。ここでは4つのトピックスから12公演をご紹介したい。◆アトリウム弦楽四重奏団  ベートーヴェン・サイクル  CMGの顔となっているシリーズ「ベートーヴェン・サイクル」は、ベートーヴェンの弦楽四重奏曲全曲を1つの団体が完奏する名物企画。団体ごとに演奏スタイルやプログラムの組み方が違うため、演奏者の個性と作品の魅力を毎年新鮮に楽しめるのである。 今年の出演はロンドンとボルドーという名門コンクールの両方を制し、20年を超えるキャリアで屈指の人気と実力を誇るロシア発・ベルリン在住の団体、アトリウム弦楽四重奏団。骨太な音色、熱気と繊細さを併せもつ彼らのベートーヴェンは聴き逃がせないし、各回の曲の組み合わせ方が独特で、現代作曲家ボドロフの新作日本初演(6/7)など新機軸もある。実は彼らはベートーヴェン生誕250年の2020年に出演予定だったが、残念ながら実現できなかった。2年の時を経ての6公演、思いを込めて堪能したい。◆フォルテピアノ・カレイドスコープ  およそ200年前に製作されたフォルテピアノの典雅な音色を、ブルーローズで味わう時間。今年は2公演、18~19世紀に製作された3つの銘器と弦楽器とのアンサンブルで構成されている。公演Ⅰ(6/12)はオリジナル楽器による名アンサンブル、デンハーグピアノ五重奏団が出演。小川加恵のソロによるベートーヴェンのピアノ協奏曲第3番の室内楽版(ラハナー編)と、同世代のアンリ゠ジャン・リジェルの日本初演曲、藤倉大によるソロ・フォルテピアノのための委嘱新曲などという凝った演目を楽しめる。公演Ⅱ(6/15)は、名匠渡邊順生が2つの楽器を弾き分けて、フランスでも活躍する実力者、酒井淳のチェロと共演。オール・ベートーヴェンでチェロ・ソナタ第2番・第3番など、聴きごたえある名曲集を聴かせる。両公演とも往時の響きを瑞々しく味わえる好機となる。◆クァルテット・インテグラ リサイタル サントリーホールは室内楽アカデミーを実施するなど、若手音楽家の育成にも力を入れている。そこで成長した若手たちの演奏が聴けるCMGならではの舞台で、かつ今回屈指の注目公演といえるのが「クァルテット・インテグラ リサイタル」(6/6)。 クァルテット・インテグラは同アカデミーで4年間の研鑽を積み、その期間中から研ぎ澄まされた高水準の演奏で注目の存在だったが、昨秋にはバルトーク国際コンクール優勝という快挙を成し遂げて室内楽ファンを驚かせた、まさに旬のクァルテットである。彼らにとって“凱旋公演”となるリサイタルは、モーツァルト第15番、デュティユー「夜はかくの如し」、バルトーク第5番という、古典の名作と20世紀のユニークな傑作が並ぶ意欲的なプログラム。特にコンクールでも別格の名演を聴かせたバルトークは注目で、彼らの力量を存分に見せつけてくれるだろう。◆入門者でも楽しめる 「室内楽のしおり」「プレシャス 1pm」 室内楽に興味はあるけどきっかけがなくて…という方にこそお薦めしたい企画を2つご紹介。 まず、CMG初企画で入門編となる「室内楽のしお文:林 昌英出逢いと、夢と、喝采で育まれた庭サントリーホール チェンバーミュージック・ガーデン

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