InformationElegant Time Concert〜上質な時間を貴方に〜 アストル・ピアソラ没後30th Anniversary 小松亮太 Homage to Piazzolla(ピアソラへのオマージュ)−featuring 古川展生−5/26(木)14:00 ヤマハホール出演/小松亮太(バンドネオン)、古川展生(チェロ) 近藤久美子(ヴァイオリン)、田中伸司(コントラバス) 熊田 洋(ピアノ)曲目/A.ピアソラ:ブエノスアイレスの四季よりブエノスアイレスの冬、 天使のミロンガ、コラール、リベルタンゴJ.プラサ:ダンサリン E.ロビーラ:エバリスト・カリエーゴに捧ぐJ.コランジェロ:夢のすべて G.ロドリゲス:ラ・クンパルシータA.トロイロ=A.ピアソラ:コントラバヘアンドS.ピアナ:悲しいミロンガ 他■ ヤマハ銀座店インフォメーション03-3572-3171https://www.yamahamusic.jp/shop/ginza/hall/ バンドネオン奏者の小松亮太は、これまで国内外でさまざまな音楽家と共演を重ねてきたが、5月26日にヤマハホールで行われるアストル・ピアソラ(1921〜92)没後30年の記念公演では、チェロの古川展生との初共演が実現。ピアソラの「ブエノスアイレスの冬」「天使のミロンガ」「コラール」などの人気曲が披露される予定。 「ステージでの初共演になりますので、チェロをフィーチャーする曲を主体に選んでいます。ピアソラの人気の高い曲をたっぷりと聴いていただきたい。終演後にはふたりのトークも予定されています」 このトークとデザートプレートセットも楽しめる特別プランはSOLD OUTとなってしまったが、ピアソラの名曲をイメージしたオリジナルドリンク「リベルタンゴ」のドリンクセット券は、まだ手に入れることが可能だ。 「今回はピアソラ以外の曲もプログラムに組んでいます。タンゴのいろんな曲を知ってほしいという思いと、タンゴの本質的な面、ブエノスアイレスの黄金期から現在まで、さまざまなタンゴが生まれたということなど、より深く興味を持ってほしいからです」 小松亮太は戦っている人である。本物のタンゴを知ってほしいと、その歴史、伝統、アルゼンチンでの全盛期から現在にいたるまでのタンゴの流れを演奏とともに著書『タンゴの真実』(旬報社、2021年)でも発信するなど、強く熱く深いタンゴへの思いは、まさに音楽による戦いともいえる。ひとりでも多くの人がタンゴの真の姿、本当の魅力に気づいてほしいと孤独な戦いを自身に課している。そこで今回のピアソラ以外の曲を説明してもらうと…。 「フリアン・プラサ(1928〜2003)はアルゼンチンのバンドネオン奏者、ピアニスト、作編曲者で、ピアソラよりも年下。『ダンサリン』は踊り子という意味で、Aメロ・Bメロだけを駆使したシンプルな曲ですが、タンゴの匂いが濃厚にただよっています。エドゥアルド・ロビーラ(1925〜80)もアルゼンチンのバンドネオン奏者で、テクニックがものすごい。『エバリスト・カリエーゴに捧ぐ』はリズム、和声を大切にしたタンゴ界の前衛派らしい曲です。ホセ・コランジェロ(1940〜)は現存するタンゴのピアニストで、『夢のすべて』はポップなタンゴですね。アンヘル・ビジョルド(1861〜1919)はタンゴの初期の形を作ったひとり。トロイロ=ピアソラの『コントラバヘアンド』は、アルゼンチンのタンゴ黄金期に活躍したバンドネオン奏者で、自身の名を冠した楽団を創設したアニバル・トロイロ(1914〜75)とピアソラの合作で、初めてコントラバスが主役として使われています。 セバスティアン・ピアナ(1903〜94)の『悲しいミロンガ』は、ミロンガ、つまりハバネラと同じリズムを用いた曲。ピアナは白人ですが、アフリカから南米に奴隷として連れて来られた黒人たちの音楽を研究し、それをタンゴとして再現した人なのです。当時の南米の歴史や文化を知ると、タンゴがどのように生まれ、発展し、アルゼンチンとウルグアイでいかなる曲が作られたかがわかり、とても興味深い。そのひとつの例として、ウルグアイのヘラルド・エルナン・マトス・ロドリゲス(1897〜1948)が若いときに作った『ラ・クンパルシータ』は、当初あまり演奏されず、その後さまざまな人や楽団によって再編されて有名になりました。ロドリゲスは新聞記者で、パリに滞在しているときに自分の曲がタンゴ楽団によって演奏されているのを聴き、これは自分が書いた曲だと裁判を起こして著作権を勝ち取ったという経緯があります」 小松の説明を聞けば聞くほど、タンゴの奥深さが理解でき、タンゴ奏者が情熱と意志を込めて演奏に没頭する姿が浮かんでくる。今回のコンサートは、その意味でタンゴの世界へと聴き手を近づけてくれる貴重な内容。ピアソラ以外にもタンゴの作曲家、演奏家は数多く存在し、それらを小松亮太が橋を架けて結ぶ役割を果たす。その気概を音楽から受け取りたい。23取材・文:伊熊よし子 写真:野口 博タンゴの本質的な面により深く興味を持ってほしい
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