eぶらあぼ 2020.12月号
40/161

37東京芸術劇場開館30周年記念 読売日本交響楽団演奏会新時代の逸材たちがフランスの名曲でアニヴァーサリーを祝う文:柴辻純子12/4(金)19:00 東京芸術劇場コンサートホール問 東京芸術劇場ボックスオフィス0570-010-296 https://www.geigeki.jp 今年開館30周年を迎えた東京・池袋の東京芸術劇場。地道な企画と着実な歩みで、存在感のある劇場へと進化を遂げてきた。劇場と事業提携を結ぶ読売日本交響楽団による記念演奏会は、指揮にフランスの俊英マキシム・パスカルを迎えて、華麗なフランス音楽で開館を寿ぐ。 パスカルは1985年生まれ。パリ国立高等音楽院でフランソワ=グザヴィエ・ロトに師事した。近現代作品のスペシャリストとしてドビュッシー、ラヴェルからブーレーズに至るフランス音楽で高く評価され、シュトックハウゼンの連作オペラ《光》のプロジェクトもパリで進行中だ。日本では昨年、東京二期会制作の黛敏郎《金閣寺》の指揮で話題を集めた。オーケストラコンサートは、今回が東京デビュー。若き才能に期待が高まる。 一方、ラヴェル「左手のためのピアノ協奏曲」では人気の若手、反田恭平が登場するのも注目だ。コロナ禍でも有料コンサートの配信やYouTubeでの発信など新しい挑戦を続け、10月にはオーストリア・ウィーン楽友協会にデビューを果たした。単一楽章のラヴェルの協奏曲は、濃厚でジャズの語法も含む難曲。反田は溢れる情熱と卓抜の技巧で圧倒しつつ、ふと見せる素直な表現やしなやかな感性で聴き手を惹きつける。ラヴェルの演奏も楽しみだ。そして、ドビュッシー「海」とラヴェル「ラ・ヴァルス」はともに、オーケストラの醍醐味が発揮される作品。好調の読響が、きらめく音響でスケールの大きな演奏を聴かせてくれるだろう。MIKIMOTO 第64回 日本赤十字社 献血チャリティ・コンサート New Year Concert 2021人気アーティストの名演を聴いて社会貢献文:林 昌英2021.1/23(土)14:00 サントリーホール 12/11(金)発売問 ソニー音楽財団03-3515-5261 https://www.smf.or.jp 新型コロナウイルスによる混乱の中で顕在化したことのひとつが、「献血協力者の減少」である。喫緊の問題としてたびたび報じられた時期もあり、改めて継続的な献血の重要性を知る機会になった。すでに60回以上の開催を重ねる「MIKIMOTO 日本赤十字社 献血チャリティ・コンサート」は、その収益を「献血で治療を受けられる環境がより整うことを願い“献血運搬車の購入・整備等の血液事業への充当”に目的を限定して日本赤十字社に寄付」するという公演であり、その意義はこれまで以上に増している。 第64回となる年始の公演は、いま最注目の指揮者である原田慶太楼と東京都交響楽団、ソリストにトップクラスの実力と人気を誇るギタリストの村治佳織を招き、華やかなオーケストラコンサートになる。村治が奏でるのはロドリーゴのアランフェス協奏曲。哀愁に満ちた第2楽章の名旋律が広く知られるギターの代表作で、彼女ならではの美しい名演を堪能したい。オーケストラは、ビゼー《カルメン》組曲抜粋、ドヴォルザークの交響曲第9番「新世界より」と、これも別格の人気曲を聴かせてくれる。 原田と都響は、意外にもこれが初共演とのこと。それだけでも興味を引くが、原田はこの夏、複数の演奏会で、美演、快演、剛演と、曲ごとにタイプの異なる方向性で、個性的かつ魅力あふれるパフォーマンスを見せてきた。よって、この日も都響からどんな演奏を引き出すかは、その瞬間までわからない。意義深さとライブの楽しみを備えた、注目されるべき公演となる。村治佳織 ©Ayako Yamamoto原田慶太楼 ©Claudia Hershner反田恭平 ©M.Yamashiroマキシム・パスカル ©Guillaume de Sardes

元のページ  ../index.html#40

このブックを見る