98CDCDCDマリス・ヤンソンス ラスト・コンサート/ヤンソンス&バイエルン放送響音の旅~夜明けのセレナーデ~/工藤重典&福田進一re-Discovery/ナチュラルホルンアンサンブル東京一柳慧:弦楽四重奏曲集/フラックス弦楽四重奏団R.シュトラウス:歌劇《インテルメッツォ》からの4つの交響的間奏曲/ブラームス:交響曲第4番、ハンガリー舞曲第5番(パーロウ版)マリス・ヤンソンス(指揮)バイエルン放送交響楽団ヴィラ=ロボス:アリア ブラジル風バッハ第5番/ミヨー:コルコバード/ロドリーゴ:夜明けのセレナーデ/ドゥミヤック:中世風小組曲/ペルゴレージ:シチリアーナ/ショパン:ロッシーニの主題による変奏曲/モーツァルト:なんと美しい絵姿、妹よ ごらんなさい 他工藤重典(フルート)福田進一(ギター)ベッローリ:ホルン四重奏曲第2番/ライヒャ:24の三重奏曲より第1集/リヒター:3本のホルンのための6つの小品/クロル:バースラー・ロマンツェ/ロッシーニ:「狩の集い」4本のホルンのためのファンファーレ 他ナチュラルホルンアンサンブル東京【藤田麻理絵 大森啓史 大野雄太 下田太郎 伴野涼介 塚田聡(以上ホルン)】一柳慧:弦楽四重奏曲 第0番~第5番フラックス弦楽四重奏団【トム・チウ コンラード・ハリス(以上ヴァイオリン) マックス・メンデル(ヴィオラ) フェリックス・ファン(チェロ)】収録:2019年11月、ニューヨーク(ライブ)BR KLASSIK/ナクソス・ジャパンNYCX-10174 ¥2500+税マイスター・ミュージックMM-4082 ¥3000+税コジマ録音ALCD-3118 ¥2800+税収録:2020年1月、神奈川県民ホール(小)(ライブ)カメラータ・トウキョウCMCD-15157~8(2枚組) ¥3000+税ヤンソンスの最後の公演となった昨年11月8日、カーネギーホールでのライブ。21世紀に入りヤンソンスの指揮はエネルギッシュで情熱的なものからどっしりと構えた巨匠風のそれへと変わっていったが、バイエルン放送響の首席に迎えられ腰を据え取り組めるようになったことが大きかったのではないか。本公演は最後まで指揮ができるか、団員も分からないほど緊迫した状況下で行われたようだが、それでも両者が深い絆の下に築いてきた、大らかで落ち着きのある懐の深い音楽がしっかりと鳴っている。アンコールのハンガリー舞曲は荘厳な表情を湛え、その後の悲劇を予感し身構えているかのようだ。(江藤光紀)ライナーによれば1979年からの共演歴を誇る工藤重典と福田進一によるフルートとギターのデュオ作品集、まさに練達の出来栄え。オリジナル曲とアレンジ曲をうまく織り交ぜてまったく退屈させないが、中でもヴィラ=ロボスの「ブラジル風バッハ 第5番」のアリアの哀切さに満ちた歌、対照的にショパンの「ロッシーニの主題による変奏曲」での快速かつ技巧的なパッセージを難なく吹き切る工藤は特に冴え渡る。どちらかと言えばフルートが主役のアルバムだが、ある時は対等に渡り合い、またある時にはスッと背後に回る福田のギターも相手の手の内を知り尽くしたがゆえの名人芸と言うべき。(藤原 聡)在京著名楽団を中心とするモダン・オーケストラの奏者たちが2016年に結成した、日本初の本格的ナチュラルホルンアンサンブルのデビュー・アルバム。古典派時代のイタリアの作曲家ベッローリ(四重奏曲第2番はなかなかの充実作)とドイツ・ロマン派のアントン・リヒターの珍しい作品から、ライヒャとロッシーニの定番作品、ドイツのクロルの現代作品まで、三、四、六重奏の多様な音楽が耳を喜ばせる。古雅で柔らかな独特のサウンドはことのほか愉しく、アンサンブルも精妙かつ豊潤。一般ファンにも同楽器の魅力や可能性を満喫&再発見させてくれる。(柴田克彦)60年余という長期にわたって紡がれた、一柳慧の6曲の弦楽四重奏曲。ケージの影響、前衛の旗手から、震災を経て実存的作風への回帰に至る、彼の作曲の変遷の象徴であり、時代の潮流(あるいは懐疑)も自ずと反映される。その広大なパースペクティブを、現代音楽演奏の最先端にあるフラックス弦楽四重奏団による、ライブとは思えぬ恐るべき水準と共感を伴う名演で通観できるのは幸甚。各曲後の拍手が収録されることで、生身の人間(聴衆も含む)こそが音楽という芸術を創造する、という原点を痛感させてくれる。ウイルス禍前夜、一柳のメッセージが我々に突きつけたものとは。(林 昌英)CD
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