57小林研一郎(指揮) 日本フィルハーモニー交響楽団特別演奏会2019「第九交響曲」熱気に溢れる「第九」で1年を締めくくる文:林 昌英12/21(土)14:00 横浜みなとみらいホール 12/24(火)19:00、12/26(木)19:00、12/28(土)14:00 東京芸術劇場 コンサートホール 12/27(金)19:00 サントリーホール 問 日本フィル・サービスセンター03-5378-5911 https://www.japanphil.or.jp/※「第九」公演全日程の詳細は上記ウェブサイトでご確認ください。 毎年12月の恒例となっている、小林研一郎と日本フィルハーモニー交響楽団の「第九」公演。今年は3会場で5公演開催される。近年はいっそうの円熟味と、安定感のある演奏を聴かせている小林。何度も「炎のコバケン」の愛称を持ち出すのも恐縮なくらいだが、その尽きない情熱こそが彼の演奏の土台であり、熱心なファンを獲得してこれほどの公演を継続させるパワーともなっている。「名曲は何度取り組んでも発見の連続」と常々語る小林のベートーヴェンは、毎回作品の持つエネルギーを最大限に引き出して、聴く人の興奮を誘う。“これぞ年末の「第九」!”という堂々たるベートーヴェンを味わいたいなら、うってつけの公演だ。 出演歌手陣も豪華な顔ぶれ。組み合わせは公演日によって変わるが、ソプラノにザリナ・アルティエンバエヴァ、市原愛、アルトに加藤のぞみ、山下牧子、テノールに錦織健、バリトンに青戸知、青山貴と、どの日も劣らぬ名歌手たちの共演が楽しめる。合唱は東京音楽大学、武蔵野合唱団、日本フィルハーモニー協会合唱団の公演ごとの競演となる。 この5公演でもうひとつ注目されるのは、全日ともコンサート前半に名オルガニストの石丸由佳が、ブルーンス「前奏曲ホ短調」、ブクステフーデ「甘き喜びに包まれ BuxWV197」、J.S.バッハ「トッカータとフーガ ニ短調 BWV565」の3曲を演奏すること。有名なバッハ作品をはじめ、各会場のオルガンの雄大な小林研一郎 ©山本倫子第17回ヘンデル・フェスティバル・ジャパンヘンデル:オラトリオ「ヨシュア」(演奏会形式)イスラエルの民を約束の地へと導く壮大な物語を描いた傑作文:三ヶ尻 正講演会「『ヨシュア』の魅力」 12/21(土)14:00 池上ルーテル教会コンサート 2020.1/25(土)15:30 浜離宮朝日ホール問 HFJ事務局0297-82-7392 http://www.handel-f-j.org/ 上演機会の少ないオラトリオ「ヨシュア」(1747作曲、翌年初演)を生で聴ける機会がやってきた。 指導者モーセはエジプトからイスラエルの民を救い出し、民族の故郷カナンを目指すも道半ばで他界した。ヨシュアはその遺志を継いで民を導き、道を阻む敵を次々に撃退してついに帰還を果たす。筋からして派手な戦闘シーンや華やかな祝勝の場が聴きどころとなる。エリコではラッパの音とともに城壁が崩れ、ギブオンでは太陽が中空に止まる奇蹟に乗じて敵陣を攻略する。祝勝の合唱「見よ、勇者は還る!」(表彰式の曲)は、後に「ユダス・マカベウス」に移植され、そちらの方が有名になった。 武将オトニエルと恋人アクサの物語がドラマに膨らみを加えているが、彼らは聖書の別の箇所(士師記)の人物で、聖書を知る人は唐突に感じるかもしれない。実はこの頃女帝マリア・テレジアの即位に端を発したオーストリア継承戦争(1740~48)が大詰めを迎えていた。戦勝を賛美し軍人が恋人と結ばれる台本からは、軍事介入を強めれば英国有利の講和条件を引き出せる、という好戦派の政治的主張を読み取ることができる。 ヘンデル・フェスティバル・ジャパンは「メサイア」一辺倒の日本の現状を打破すべく多様な作品の上演を目指してきた団体。三澤寿喜指揮のもと、辻裕久、広瀬奈緒、波多野睦美などこの分野を代表する歌手陣や器楽奏者たちが揃った。曲のカットや編成の改変をしない原作に忠実な演奏に特色があり、12月には作品の魅力を事前に紹介する講演会も開かれる。左より:三澤寿喜/辻 裕久/広瀬奈緒 ©Kohei Take/波多野睦美 ©Hideya Amemiya響きを、名手の演奏でじっくり味わうことができる好機となる。
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