44©Kiyotaka SaitoYamaha Hall 10th Anniversary 仲道郁代 スペシャル・コンサート~フォルクハルト・シュトイデ(ヴァイオリン)を迎えて~2020.1/13(月・祝)14:00 ヤマハホール問 ヤマハ銀座ビルインフォメーション03-3572-3171https://www.yamahaginza.com/hall/仲道郁代(ピアノ)アニバーサリーのためのスペシャルなコンサート取材・文:柴田克彦Interview 銀座のヤマハホールでは、2020年1~3月に(リニューアルオープン)10周年記念シリーズが開催される。その第1弾が「仲道郁代 スペシャル・コンサート」。日本屈指の名ピアニストが、ウィーン・フィルのコンサートマスターにしてソリストのフォルクハルト・シュトイデを迎えて贈る、まさに“スペシャル”なコンサートだ。 「10周年の1回目ですから他ではやっていないことをと思い、『トヨタ・マスター・プレイヤーズ,ウィーン』での共演などで存じ上げていたシュトイデさんに出演をお願いしました。彼は美しい音を持ち、ウィーンの伝統を受け継ぐと同時に、現代を生きる演奏家です」ホールの特性を活かしたソロとデュオのプログラム 今回は、「お客様のお顔がよく見え、思いをお一人おひとりにお伝えできる」同ホールを意識した、「ソロとデュオの両方がある、我ながら良いプログラム」が用意されている。 前半は、ベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタ第7番とピアノ・ソナタ第21番「ワルトシュタイン」の組み合わせ。 「ヴァイオリン・ソナタ第7番は“運命の調”ハ短調で、『ワルトシュタイン』はハ長調。つまり運命への抗いに始まり、『ワルトシュタイン』に入るとそれを乗り越えようとし、終楽章で雲間が晴れて光が差し込みます。このハ短調からハ長調へ続く形は、苦難を自分の力にし、神に対して人間はこれほど力強いのだと語るベートーヴェンのメッセージを明確に感じさせます。それを皆様に体感していただけたら嬉しい」 後半は、クララ・シューマンの「3つのロマンス op.22」と夫シューマンの「幻想小曲集 op.12」からの数曲に、後者のヴァイオリン・ソナタ第1番が続く。 「後期に書かれたヴァイオリン・ソナタには、幸せだと思われたクララとの結婚を経ながら、次第に精神を病んでいくシューマンの“折れた心の美しさ”が表現されています。そこに入る前に、彼の愛の原動力だったクララのロマンティックな作品を置くことによって、見えてくるものがあるのではないかと。『幻想小曲集』はその間にある“心の揺らぎ”の世界。夢と怖れが混在していますから、この後にヴァイオリン・ソナタを聴くと、シューマンという人により共鳴できると思います」 ソロの2曲には、当然深い思い入れがある。 「私は『ワルトシュタイン』を“十字架ソナタ”と名付けています。第1楽章に出てくる横の動きと縦のフレーズが十字架のかたちを形成し、人間が背負わねばならない宿命的なものを表している。そしてその十字架を乗り越えていく道のりに、人間力の凄さが描かれています。またペダルを存分に使う終楽章には、それまでのベートーヴェンになかった響きの在り方が示されてもいます。シューマンの『幻想小曲集』の中で絶対に弾くのは8曲目の『歌の終わり』。クララにプロポーズした頃に書かれた作品ですが、彼は『結婚式と葬式の鐘の音が同時に鳴っている』と言っています。つまり夢と不安が同時にある。それがヴァイオリン・ソナタにも通じます」“大人”の方に聴いてほしい さらには本公演についてこう語る。 「ヤマハホールは私の中では“大人な”ホール。今回は、人生の悲喜こもごもを経て、それを心のなかで整理することもできる“大人”の方に、リアリティと共感を持っていただけるプログラムだと思います」 彼女は現在、ベートーヴェン没後200年にして自身のデビュー40周年にあたる2027年に向けて「Road to 2027 プロジェクト」を展開中。本公演はその傍らで、ひと味違った光を放っている。
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