eぶらあぼ 2019.12月号
177/205

174CDCDCDラフマニノフ:チェロ・ソナタ 他/堤剛&萩原麻未魔法のピアノ/田中正也ショスタコーヴィチ:交響曲第5番 他/ポリャンスキー&ロシア国立交響楽団トランジション/トロンボーンクァルテット・クラールラフマニノフ:チェロ・ソナタ/ベートーヴェン:チェロ・ソナタ第4番/酒井健治:レミニサンス/ポリモノフォニー チェロのための/J.S.バッハ:無伴奏チェロ組曲第5番よりサラバンド堤剛(チェロ)萩原麻未(ピアノ)シベリウス:5つの小品「樹の組曲」より第5番〈樅の木〉/山田耕筰:スクリャービンに捧ぐる曲/プロコフィエフ:ピアノ・ソナタ第6番/プーランク:「15の即興曲」より第15番〈エディット・ピアフを讃えて〉/モーツァルト:幻想曲 ニ短調 K.397/ショパン:バラード第3番/武満徹:雨の樹 素描 他田中正也(ピアノ)チャイコフスキー:大序曲「1812年」/ショスタコーヴィチ:交響曲第5番「革命」、バレエ音楽「ボルト」より〈荷馬車引きの踊り〉ヴァレリー・ポリャンスキー(指揮)ロシア国立交響楽団《シンフォニック・カペレ》グリーグ(廣瀬大悟編):「抒情小品集」より〈愛の歌〉〈ふるさとにて〉〈夜警の詩〉〈祖国の歌〉/ネリベル:3つの気質/ヴァンブスラール:ラ・ミリス・デュ・ファール/ロジャース(廣瀬編):エーデルワイス/ルイス:3つのジャズ風小品 第1集 他トロンボーンクァルテット・クラール【今込治 上田智美 廣瀬大悟(以上トロンボーン) 黒金寛行(バス・トロンボーン)】マイスター・ミュージックMM-4067 ¥3000+税ナミ・レコードWWCC-7909 ¥2500+税収録:2017年11月、東京オペラシティ コンサートホール(ライヴ) 他N&FNF-28803 ¥3000+税日本アコースティックレコーズNARD-5069 ¥2500+税押しも押されもせぬ巨匠・堤剛が、最高のセンスをもつ俊英・萩原麻未と出会い、弾きこんできた名曲で新たな境地を見せる。今回はラフマニノフとベートーヴェン第4番、対照的なソナタ2作が選ばれた。萩原独特の感性と名技による瑞々しいピアノに包まれるように、堤は激することなく静けさすら漂う演奏を展開。力業になりがちなラフマニノフから落ち着いた詩情を引き出し、後期の作風に入ったベートーヴェンとの内面的つながりすら明らかにする。バッハの無伴奏とそれをモティーフとする酒井健治の新作の録音も意義深く、バッハの名品「サラバンド」の深みはさすがの一言。 (林 昌英)ロシアで研鑽を積み、国際的なコンクールの受賞歴も多数。プロコフィエフのスペシャリストとしても期待されるピアニスト。2010年に宗次ホールから始まり、好評につき全国に拡大中のおしゃべりコンサート「魔法のピアノ」が今回CD編として登場。同シリーズの大きな魅力である独創的な“選曲”の妙が発揮され、シベリウス〈樅の木〉に始まる音の滴が得意のロシア作品を核に経由して、プーランクやモーツァルト、ショパンと時空を超えて飛翔し、最後に武満徹の〈雨の樹〉の葉に集まり、茂りの全体からポタポタと神秘の雨を降らせるかのようだ。まさにイメージの魔法。(東端哲也)ロシアのオケというと腹にずしりとくる重量感に魅力を感じる人も多いだろう。このコンビはその最右翼で、広大な大地の土の匂いまでが感じられてくる。「1812年」では大河のように滔々と流れる弦が、クライマックスでの爆発的な勝利にまでパワフルに広がっていく。かつてショスタコーヴィチの息子が音楽監督を務めていただけあって、この作曲家の解釈も立派。交響曲第5番は分厚い装甲の戦車のように、磨き上げたサウンドが鈍い光を放ち爆走する。ここぞというところで粗削りになるのも魅力だ。アンコールの「荷馬車引きの踊り」は片田舎の農村の祝祭のようなはじけっぷりで、爽快この上ない。(江藤光紀)トロンボーンクァルテット・クラール待望の初CD。ファンの多さからは意外だが、「クオリティに妥協が無い」とのライナー文言、それゆえ「練りに練った」のが本作と、納得の出来栄え。全く隙間風の吹かない鉄壁の合奏、音楽的呼吸の一致。4楽器が融合する局面とそれぞれがソリスティックに振る舞う箇所での振幅の大きさ、表現の幅。雄大さはグリーグ「祖国の歌」で、小回りが効きに効いたすばしっこさはⅠ.ルイス「3つのジャズ風小品 第1集」で堪能されたし。また、本作の要たるJ.P.ヴァンブスラール作品トラックではライナーと連動した「仕掛け」が! これは聴いてのお楽しみ。 (藤原 聡)CD

元のページ  ../index.html#177

このブックを見る