eぶらあぼ 2019.9月号
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62ルドルフ・ブッフビンダー ピアノ・リサイタル“ラディカル”なウィーンの巨匠、渾身のベートーヴェン文:江藤光紀9/23(月・祝)19:00 東京オペラシティ コンサートホール問 ジャパン・アーツぴあ0570-00-1212 https://www.japanarts.co.jp/ 著名アーティストは世界の大都市に定期的に招かれているものだが、そんな時代にあってもブッフビンダーの名はウィーンと切り離せない。ハイドン、モーツァルト、ブラームス、そして何といってもベートーヴェンというこの音楽の都で活躍した作曲家をレパートリーの柱にし、厳しい耳を持つ聴衆を納得させてきたからである。ウィーン楽友協会では2019/20のシーズンに、ウィーン・フィルをはじめドイツ語圏の名門オーケストラ計5団体とベートーヴェンの5曲のピアノ協奏曲を連続演奏するが、これは同協会始まって以来のプロジェクト。そこでソロを担うブッフビンダーは現代の最もオーセンティックなベートーヴェン弾きと言っていい。 今回の来日では、「悲愴」「ワルトシュタイン」「熱情」という三つのソナタを披露。これらの作品で、ベートーヴェンはドラマティックなスタイルを一作ごとに探求し、古典的なソナタ観を塗り替える革命を起こす。いわば32曲の“新約聖書”のキモ中のキモを選曲した。 ブッフビンダーのスタイルは一見すると正統派のイメージ、悠然としたヴェテランらしさとはいささか異なる。時には10近い校訂譜を緻密に比較しつつ彼が表現するのは、その色あせないラディカルさだ。アレグロはエネルギーに満ちて足早に疾走し、巨大なクライマックスを築き上げる。演奏のたびに革命児ベートーヴェンが現前し、語り掛けてくるようなのである。言うまでもなく、この豪快さにはたくさんの仕掛けやアイディアが詰め込まれている。今回の三大ソナタで、その技をじっくりと賞玩しよう。©Marco Borggreve八王子音楽祭2019 ~Shall We JAZZ?~東京交響楽団 第5回八王子定期演奏会 ~オーケストラ plays JAZZ~オーケストラとトリオでジャズの熱いコンサートを文:藤本史昭9/28(土)14:00 オリンパスホール八王子問 八王子市学園都市文化ふれあい財団042-621-3005http://www.hachiojimusicfestival.com/ 3年に一度おこなわれていた「ガスパール・カサド国際チェロ・コンクール」の開催がない年のイベントとして2007年にスタートして以来、今年で11回目を数える八王子音楽祭(9/21~9/29)。昨年からは「ジャンル特化」という新たな切り口で、市民はもとより全国からも注目されているこの音楽祭だが、今年のテーマはなんとジャズ! 「 Shall We JAZZ?」と題して、我が国を代表する一流ジャズマンが市内の各ホールで様々なスタイルのジャズを披露するほか、街中のカフェやストリートでのライヴ、日本茶店の蔵でのレコード・イベントやジャズ・シネマの上映、ジャム・セッションなど多岐にわたる関連イベントが、9日間にわたって開催される。 そんな中、今回の目玉の1つとなるであろうステージが、東京交響楽団の八王子定期公演シリーズの一環でもある「オーケストラ plays JAZZ」だ。今注目の若きマエストロ、原田慶太楼を指揮者に迎え、演奏されるのはカルヴィン・カスター編曲「デューク・エリントン!」やレナード・バーンスタイン「シンフォニック・ダンス」。オーケストラならではのダイナミックで躍動感にあふれたジャズが、ファンを魅了することはまちがいない。 そこにさらなる華を添えるのが、もう1人の主役、ジャズ・ピアニストの山中千尋だ。世界を舞台に活躍する彼女が東響と共演するのは、おなじみガーシュウィンの「ラプソディ・イン・ブルー」。エモーショナルな歌心にあふれた山中のピアノが、果たしてどんなガーシュウィン・ワールドを描き出すのか。また山中のトリオによるスペシャル・ステージも用意されているというので、こちらも期待大だ。山中千尋原田慶太楼 ©Claudia Hershner
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