eぶらあぼ 2019.9月号
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58第149回 リクライニング・コンサート北村 聡 & 徳永真一郎 デュオ・リサイタル10/2(水)15:00 19:30 Hakuju Hall問 Hakuju Hallチケットセンター03-5478-8700 https://www.hakujuhall.jp/北村 聡(バンドネオン)& 徳永真一郎(ギター)対照的な楽器が呼び起こすスリリングな世界取材・文:宮本 明Interview Hakuju Hallの「リクライニング・コンサート」にバンドネオンの北村聡とギターの徳永真一郎がデュオを組んで登場。この数年のあいだに一気に同世代の旗手に躍り出た北村と、パリ国立高等音楽院で学び、昨年のデビューCD『テリュール』が芸術祭優秀賞を受賞した新鋭・徳永。二人はこのコンサートが初共演となる。 「とにかくやりたい曲をやってみる」という二人の意欲がみなぎるプログラムには、数年前に北村の委嘱で生まれた2曲が含まれている。三枝(みえだ)伸太郎の「片翼の天使」と、アルゼンチンの作曲家・ピアニストのディエゴ・スキッシの「スケルツォとトンゴ」。 北村「三枝さんは、坂東玉三郎さんの舞台で音楽監督などを務めたり、目下大活躍中。タンゴの仕事も多いので、バンドネオンをよく知っている作曲家です。スキッシは、常に新しい音楽を目指すという意味ではピアソラの後継者とも言える人。この曲も普通の4拍子なのに、諧謔的というのか、すごくトリッキーなリズムの面白い作品です。『トンゴ』というのは彼の造語だそうで、自分の音楽をへりくだって、タンゴほどすごい音楽じゃないので、じゃあトンゴで、みたいな(笑)。と言いつつ、タンゴとは違う新しい音楽なんだという自信もある」 徳永「スキッシの曲は打ち合わせで教えてもらったのですが、面白いですね。ピアソラに近いものも感じるけれど、新鮮な響き。絶賛勉強中です」 バンドネオンとギター。対照的な楽器同士だという。 北村「バンドネオンは音が伸びる楽器ですが、ギターは音が減衰する楽器。フレーズの中で音を伸ばせるというのは武器なのですけれど、減衰する音への憧れもあるんです。はかなさというか。響きをどんどん積み重ねていく作り方ですね」 徳永「音が伸びる楽器の人と演奏すると、ギターの響きが聴こえなくなる不安もあるんですよ。ギターもオプションで音が伸びたらいいのになあとは思います(笑)。でも、先日聴かせていただいたライヴでも、北村さんは相手の響きをすごく聴いている。音が出たり消えたり。アンサンブルとしてすごく緻密な演奏で、でも熱い。すごい! と思いました。一緒にやらせてもらうとどうなるのか、楽しみです」 発表されている曲目はほかに、ピアソラの「タンゴの歴史」(抜粋)とヴィラ=ロボスの「ブラジル風バッハ 第5番」のアリア。デュオだけでなく互いのソロも予定されている。サウンドのキャラクターの異なる楽器同士がジャンルを超えたレパートリーでどんな化学反応を起こすのか。注目の共演。ボリス・ペトルシャンスキー ピアノリサイタル比類なき進化を遂げる透徹したピアニズム文:伊熊よし子 伝統的なロシア・ピアニズムの継承者として世界各国で幅広い演奏活動を展開しているボリス・ペトルシャンスキーは、ピアノ好きの心を強くとらえる音楽性の持ち主である。彼はモスクワ音楽院においてゲンリヒ・ネイガウス、レフ・ナウモフという歴史に名を残す偉大なピアニストから教えを受け、その後リーズやミュンヘン・コンクールで上位入賞を果たした。現在はイタリアのイモラ国際ピアノアカデミーで教鞭を執りながら、今年のチャイコフスキー国際コンクールの審査員を務めるなど、後進の指導にも積極的である。9/25(水)19:00 東京/ヤマハホール10/5(土)14:00 広島/エリザベト音楽大学 ザビエルホール問 アルペンミュージックオフィス03-5324-2513 http://www.alpenmusic.com/ 今回の選曲はヘ短調のシリアスな主題が変奏されていくハイドンから開始、シューベルトの美しき歌謡性が凝縮している「即興曲 D935」に移り、第二次世界大戦の最中に書かれたプロコフィエフの傑作、ソナタ第6番で締めくくるという趣向。まさにペトルシャンスキーの多面的なピアニズム、表現、解釈が味わえる。特にプロコフィエフの「戦争ソナタ」が聴きどころ。徳永真一郎 ©Tohru Yuasa北村 聡 ©植村元喜
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