eぶらあぼ 2019.9月号
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49ピエタリ・インキネン(指揮) 日本フィルハーモニー交響楽団バイロイト《リング》を振るインキネンがベートーヴェン・ツィクルスを始動文:山田治生第714回 東京定期演奏会10/18(金)19:00、10/19(土)14:00 サントリーホール問 日本フィル・サービスセンター03-5378-5911 https://www.japanphil.or.jp/ フィンランド出身のマエストロ、ピエタリ・インキネンは、まだ30歳代の若さながら、日本フィル、プラハ響、ドイツ放送フィルのシェフを兼務する、最も多忙な指揮者の一人である。この4月には日本フィルのヨーロッパ演奏旅行を成功に導いた。また、2020年には、バイロイト音楽祭の《ニーベルングの指環》(全曲)の指揮も担い、ますます世界的に注目されている。 ワーグナー、マーラー、ブルックナーなど独墺音楽での評価を高めているインキネンが、20年のベートーヴェン生誕250年を祝して、この秋から日本フィルとのベートーヴェン交響曲ツィクルスをスタートさせる。その第1弾として10月の東京定期演奏会で、ベートーヴェンのピアノ協奏曲第4番と交響曲第3番「英雄」を取り上げる。ピアノ協奏曲の独奏を務めるのは、ロシア出身のアレクセイ・ヴォロディン。ほぼ同世代で、ヨーロッパでも共演を重ねている二人だけに、息の合った演奏が聴けるに違いない。「英雄交響曲」ではインキネン&日本フィルが若きベートーヴェンの情熱を蘇らせる。また、このツィクルスで、インキネンは、最初にチェコの比較的珍しい作品を紹介する。彼は、15年からプラハ響の首席指揮者を務め、チェコ音楽に積極的に取り組んでいるのだが、今回はドヴォルザークの歌劇《アルミダ》序曲というもの。ドヴォルザークの最晩年の作品でありながら、ほとんど上演される機会のないオペラのために書かれた序曲を聴く、貴重な機会となる。アレクセイ・ヴォロディン ©Marco Borggreve神戸市室内管弦楽団 生誕250年 ベートーヴェン・チクルス 「ベートーヴェンの森」多彩な顔ぶれが揃う、記念年にふさわしい壮大なプロジェクト文:小味渕彦之前夜祭 11/16 (土)16:00 神戸文化ホール (大)第1回 2020.1/11(土)15:00 神戸文化ホール(中)第2回 2020.3/20(金・祝)15:00 神戸文化ホール(中) 3/22(日)15:00 東京/紀尾井ホール問 神戸市民文化振興財団078-361-7241 http://www.kobe-ensou.jp/※第3回以降の詳細は上記ウェブサイトでご確認ください。 神戸市室内管弦楽団が2020年のベートーヴェン生誕250年に向けて、「ベートーヴェンの森」と名付けた演奏会シリーズを開催する。今年11月16日に開く「前夜祭」を含め、21年1月までの全7回。ベートーヴェンの交響曲9曲に、5曲のピアノ協奏曲とヴァイオリン協奏曲、三重協奏曲の全協奏曲を組み合わせた。加えて「前夜祭」では大作「ミサ・ソレムニス」が用意され、指揮は秋山和慶が登場。神戸市室内管にとって初共演となるだけでなく、秋山がこの曲を振るのも珍しい。合唱は神戸市混声合唱団。そこに伊藤恵が弾く「ピアノ協奏曲第2番」が加わる。 この企画は18年10月に亡くなった同室内管・前音楽監督の岡山潔が、資金面にも苦慮しつつ数年来温めてきたもの。各回のカップリングもすでに岡山が計画をしていた。ほかに指揮者はリューディガー・ボーン、ジョナサン・コーエン、クリストフ・ポッペン、鈴木秀美、下野竜也、石川星太郎と多彩な顔ぶれが揃う。独奏者はエリソ・ヴィルサラーゼ、キム・ソヌク、シャイ・ウォスナー、小菅優(以上ピアノ)、ライナー・ホーネック(ヴァイオリン)、「三重協奏曲」はヘルベルト・シュフ(ピアノ)、アリーナ・ポゴストキーナ(ヴァイオリン)、石坂団十郎(チェロ)という陣容。 阪神・淡路大震災から25年の機会に行われる本プロジェクトは、昨年から正規メンバーにオーボエとホルンが加わった神戸市室内管の本格的なお披露目という意味でも必聴だ。伊藤 恵 ©大杉隼平ピエタリ・インキネン ©山口 敦秋山和慶
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