eぶらあぼ 2019.9月号
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42トッパンホール19周年 バースデー企画 ハーゲン プロジェクト 2019世界のトップ・クァルテットが魅せる清新な音楽世界文:柴田克彦 Ⅰ 10/1(火) ハイドン:第75番・第76番「5度」、バルトーク:第2番 Ⅱ 10/2(水) ハイドン:第77番「皇帝」・第78番「日の出」、バルトーク:第3番Ⅲ 10/3(木) ハイドン:第79番「ラルゴ」・第80番、バルトーク:第6番各日19:00 トッパンホール問 トッパンホールチケットセンター03-5840-2222 http://www.toppanhall.com/ 第一線で活動を続ける弦楽四重奏団の代表格、ハーゲン・クァルテットは、アジアの本拠地と位置付けるトッパンホールで、刮目すべきプロジェクトを展開してきた。そこで今年10月、ホール19周年のバースデーに合わせて行うのが「ハイドン&バルトーク・ツィクルス」。日本とオーストリア&ハンガリー友好150周年を記念した注目の公演だ。 ハーゲンQは、兄弟姉妹が主軸ゆえの絶妙な呼吸感、ザルツブルク出自ゆえの伝統的な様式感をベースに、情感豊かで温かな音楽を聴かせてきた。そして近年は、培ったレパートリーを新たな視点で見直しながら作品のさらなる深奥に迫る、一段上の領域に入っている。今回演奏されるのは、ハイドンの「エルデーディ四重奏曲」(第75~80番)全6曲とバルトークの第2、3、6番。しかもハイドン2曲の間にバルトークを1曲挟んだ公演を3夜にわたって行う。前者は、「5度」「皇帝」「日の出」「ラルゴ」と愛称付きの曲が並ぶ、“弦楽四重奏曲の父”の集大成的傑作集。ここでは2015年のモーツァルト・ツィクルスで魅せたオーストリアのグループならではの芳醇な味わいが期待される。また1910、20、30年代に書かれた3曲が続くバルトークでは、書法の変遷と同時に、90年代の録音から時を経たハーゲンQの熟成された解釈が明示される。さらに同ジャンルの最初期と最終期の完成形たる両者の組み合わせは、2017年のシューベルト&ショスタコーヴィチ同様、相乗効果による新音楽世界への興味を募らせる。 ここは、“刺激的な円熟”の妙を存分に堪能したい。©Harald Homannセバスティアン・ヴァイグレ(指揮) 読売日本交響楽団自らをロットの“伝道師”と呼ぶ名匠のサウンドやいかに!?文:飯尾洋一第591回 定期演奏会 9/10(火)19:00 サントリーホール問 読響チケットセンター0570-00-4390 https://yomikyo.or.jp/ 2019年4月より読響の常任指揮者を務めるセバスティアン・ヴァイグレが、意欲的なプログラムを披露する。ハンス・ロットの交響曲ホ長調とプフィッツナーのチェロ協奏曲イ短調(遺作)。後期ロマン派の隠れた傑作に光を当てる。 ハンス・ロットはマーラーに強い影響を与えた作曲家として知られている。わずか20歳でウィーン音楽院の卒業制作として交響曲の第1楽章を提出するが、審査員たちは作品を嘲笑し、ただブルックナーのみがロットの才能を認めて擁護した。全4楽章を書き終えたロットは、ブラームスに作品の演奏を願い出るが、酷評されてしまう。ロットは精神を病んだ末に、25歳で世を去った。 ヴァイグレはこの曲に深い思い入れを持つ。早くも20年前に自筆譜の複写版を見て、自ら楽譜の400箇所以上を修正する校訂に携わったという。作品の真価を知らしめるべく、ヴァイグレは録音や多くのコンサートでこの交響曲をとりあげてきた。ヴァイグレによれば「師ブルックナーのオルガン的な色彩豊かな響きがある。ベートーヴェン、ワーグナー、ブラームスらへの尊敬の念も込められている」。マーラーの交響曲にも似ているが、先に書かれたのはロットのほうだ。 プフィッツナーのチェロ協奏曲ではアルバン・ゲルハルトが独奏を務める。ゲルハルトはすでにヴァイグレとの共演でプフィッツナーのチェロ協奏曲を録音している。完成度の高い演奏を期待できそうだ。セバスティアン・ヴァイグレ ©読響
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