eぶらあぼ 2019.9月号
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40アンドレア・バッティストーニ(指揮) 東京フィルハーモニー交響楽団地球と宇宙をダイナミックに描く!文:柴田克彦9/13(金)19:00 サントリーホール9/22(日)15:00 Bunkamuraオーチャードホール問 東京フィルチケットサービス03-5353-9522 https://www.tpo.or.jp/ 東京フィルの首席指揮者バッティストーニの持ち味が最大限に発揮されるのは、母国イタリアものとスペクタクルな音楽だ。これまで特にインパクトを与えたのは、《ナブッコ》《トゥーランドット》や「ローマ三部作」といった双方の条件を満たす作品だし、「展覧会の絵」「春の祭典」やチャイコフスキーの交響曲などの華麗な音楽でも、とりわけ熱量の多い迫真のドラマを描出してきた。 彼が指揮する東京フィル9月定期の演目は、ヴィヴァルディの「四季」とホルストの「惑星」。まさしくイタリアもの&スペクタクルな音楽である。極めて稀な組み合わせだが、前半は地球の自然や人々の生活を綴り、後半は宇宙に想いを馳せるという、壮大な“ネイチャー・プログラム”でもある。中でもフルオケの定期には珍しい「四季」のアプローチは要注目。イタリアの血が反映された演奏か? それともバッティストーニならではの鮮烈な音絵巻が出現するのか? 実に興味深い。ヴァイオリン独奏の木嶋真優は、最近テレビなどでの活躍が目立つが、もともと10代から第一線で活動し、2011年ケルン国際音楽コンクール、16年上海アイザック・スターン国際ヴァイオリン・コンクールで優勝した実力者。濃密にして爽快な語り口に期待が集まる。そして「惑星」はバッティストーニの独壇場。日本屈指のホルン・セクションをはじめとする東京フィルの妙技も相まって、あらゆる音が生命力を湛えながら躍動する、パワフルかつカラフルなスペクタクルが展開されること間違いなしだ。「海王星」の女声合唱は新国立劇場合唱団のメンバーが担当する。 名旋律と多彩なサウンド満載の人気作2つを、ドラマティックなタクトで満喫しよう!木嶋真優 ©TANKA.ジョナサン・ノット(指揮) 東京交響楽団マエストロが投げかける“謎”のプログラムが妙に刺激的文:江藤光紀第674回 定期演奏会 10/12(土)18:00 サントリーホール問 TOKYO SYMPHONY チケットセンター044-520-1511 http://tokyosymphony.jp/第150回 名曲全集 10/13(日)14:00 ミューザ川崎シンフォニーホール問 ミューザ川崎シンフォニーホール044-520-0200 https://www.kawasaki-sym-hall.jp/ ノットのプログラミングは、いつも知的刺激に満ちている。今回は、しじまの中からトランペットが密やかに語りかけてくるアイヴズの「答えのない質問」に、シューベルトの未完成交響曲を続ける。ご存じの通り後者は最初の2楽章しか書かれなかったが、なぜ後続楽章は作られなかったのかが、「答えのない質問」の含意だろう。 後半はモスクワ生まれで、欧米で着実にキャリアを広げているヴァーヴァラが、ブラームスのピアノ協奏曲第1番で日本デビューを果たす。彼女はノット自身が審査員を務めた2012年ゲザ・アンダ国際コンクールの覇者で、いわばお墨付きの才能だ。 ところでブラームスの第1協奏曲は管弦楽とピアノが、がっぷり四つにぶつかる骨太の作品で、もともと交響曲として構想されたが、途中で計画が変更された。ここで思い返されるのが、バーンスタインとグールドが行ったこの曲の伝説的名演だ。普通ならアレグロ楽章と見なす第1楽章を緩徐楽章のようなテンポで演奏したいというグールドの要望を、バーンスタインは渋々ながら受け入れたが、演奏前に「ピアニストと指揮者、どちらがボスか」と聴衆にユーモアたっぷりに問いかけたのである。 もちろん今回、グールドのように演奏するわけではないだろうけれど、バーンスタインは「答えのない質問」も持ち曲にしていたし、ハーバード大学で行った同名の連続講義も有名だ。となれば、隠れテーマは、昨年生誕100年を迎えたバーンスタイン! 牽強付会? ノットならあり得る? うーん、答えが出ない。ヴァーヴァラ ©Priska Kettererジョナサン・ノット ©K.Miuraアンドレア・バッティストーニ ©上野隆文
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