eぶらあぼ 2019.9月号
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36©塩澤秀樹アントニオ・メネセスとチェロの名手たち11/28(木)19:00 紀尾井ホール問 紀尾井ホールチケットセンター03-3237-0061 http://www.kioi-hall.or.jp/中木健二(チェロ)巨匠と様々な世代のチェリストが活躍する一期一会のアンサンブル取材・文:宮本 明Interview人生で大切なことはすべてメネセスから学んだ チェロの現代の巨匠アントニオ・メネセスが、日本のチェロ奏者7人と共演する。山崎伸子、向山佳絵子、中木健二、遠藤真理、辻本玲、伊東裕、佐藤晴真。メネセス門下でもある中木健二に聞いた。 「メネセス先生に出会ったのは2004年。シエナのキジアーナ音楽院のマスタークラスです。最初のレッスンで、すごく厳しいことを言われたんです。僕は譜面どおりに正しい音を弾いていると思っていたから、正直、そんなに言わなくてもよくない? と思って(笑)。でもレッスン後、部屋に帰って、言われたことをもう一度さらってみて愕然とした。世界が変わったというか。音楽の表情というのはこんなに変わるのか! と。それに気づいてからは、もうずっと彼の音楽の虜で、人間としての魅力にもどんどん惹かれていきました。人生で大切なことは全部先生から学んだと思っています」 師を、伝統と革新を兼ね備えた音楽家だと評する。 「戦前から戦後の世代に受け継がれてきた伝統を持っている、たぶん最後のチェリストだと思います。そして新しいものにも敏感。ガット弦でも演奏するし、バロック・チェロも弾ける。現代曲もたくさん演奏する。いつでも何か新しい刺激を探して自分の中に取り込んでいる人です。だから今回も、必ず何か新しいものを聴かせてくれるはずです。彼は『ミュージシャンシップ』と呼んでいましたが、音楽家の哲学として、昨日よりも今日のほうが絶対に素晴らしくなければならない。そのためには新しい何かを見つけなければならないし、それを努力して自分のものとして会得しなければならない。そう習いました。僕も心がけています」ヴィラ=ロボスと僕らがイメージする“ブラジル音楽”は一緒にできない 公演曲目は、メネセスの祖国ブラジルを代表する作曲家ヴィラ=ロボスと、彼も愛したJ.S.バッハの掛け合わせ。バッハのチェロ・ソナタ第3番に、ヴィラ=ロボスのチェロ・ソナタ第2番。そして「ブラジル風バッハ」の第1番&第5番。平均律クラヴィーア曲集第1巻の第8番をもとにしたヴィラ=ロボス編曲の「フーガ」。ソナタ2曲をメネセスが弾き、ほかはチェロ8本のアンサンブル編成。ピアノの田村響、ソプラノの秦茂子が共演する。 「ヴィラ=ロボス編曲のバッハの『フーガ』は、まったく知りませんでした。楽しみですね。先生がヴィラ=ロボスをどう思っているのか、話したことがないのでよくわからないのですが、以前先生の紹介で参加したブラジルの音楽祭で、『ブラジル風バッハ』の第5番を何度も繰り返し弾きました。すると演奏のたびに、ブラジルの人たちが一体感に包まれる。彼らにとっては、母国の民謡に近いエッセンスだと思います。ただ、サンバだとかボサノヴァだとか、僕らがイメージしているようなブラジル音楽とヴィラ=ロボスを一緒くたにはしないほうがいい。先生の演奏スタイルもそうですが、とてもエレガントで、けっして品格を失なうことがない。ヴィラ=ロボスはパリで勉強していますが、当時のパリの作曲家たちの、色彩感や自由な和声感で作る音楽とはちがう、構築性の高い、バッハやハイドンのような音楽。ものを組み立てるタイプの作曲家だと思います」 注目の公演だけに残席はわずか。予約を急ごう!
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