eぶらあぼ 2019.8月号2
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56CD『バッハの錬金術 Vol.2 #4/4 適正律クラヴィーア曲集 第1集・第2集 第19番~第24番』コジマ録音 ALCD-1187 ¥2800+税8/7(水)発売武久源造(チェンバロ/フォルテピアノ)鬼才の「適正律クラヴィーア曲集」全曲録音、ここに完結取材・文:那須田 務Interview バッハの「平均律クラヴィーア曲集」は鍵盤音楽の最高峰。日本を代表するピリオド鍵盤楽器奏者の一人、武久源造は、だからこそ唯一無二の録音にしたかったと言う。 まず、原題のドイツ語本来の意味からタイトルを「適正律クラヴィーア曲集」と訳した。そして、例えば第1集には第1巻の最初の6曲と第2巻の同じ調性の6曲を収録するが、前者をペダル鍵盤付きチェンバロで、後者をバッハの時代のフォルテピアノの複製で演奏するという凝りようだ。このたび、そんな「適正律」全曲(全4枚)の最後のアルバムがリリースされた。 「バッハ以前からドイツのオルガニストは伝統的に足鍵盤付きチェンバロを使っていました。モーツァルトもペダル鍵盤付きピアノを弾いていた。バッハもこのような楽器を持っていたことが分かっていますし、そもそもオルガンの名手でしたから、日常的に弾いていたはずです。実際、通常のチェンバロでは弾けない低音が出てくる曲が適正律の中にもあります」 チェンバロとフォルテピアノ、1巻と2巻の違いは何か。 「楽器が創りだす響きに心身を委ね、その上で音楽の言葉を自由に紡ぐというのがチェンバロ。楽器の音を細部に到るまで制御しようとするのがピアノ。宇宙の法則が分かったらそれで満足するニュートンか、そこから何が出来るか考えるフランクリンか?バッハはこのような人間の意識の変革期にいたんです。元々、第1巻の一部は子どもたちの教育用に作曲され、ライプツィヒのカントルに就職する際に教材用に纏めた。ハ長調から螺旋状に上昇し最後の曲で宇宙にまで行ってしまう。私もやっとそれが、骨身にしみて分かりました。バッハも1曲目から順に弾いてほしいと思っていたのではないでしょうか。一方第2巻はその後散発的に書いた曲を後で纏めたものですが、演奏して面白い曲が集まった。演奏技術的にも音楽的にも極めて多彩。芸術家は誰もが本当に自分のやりたいことと、周囲の希望との折り合いをつけるのに苦労しますね。そのバランスのとり方でいうと第2巻は凄いですよ。長い天秤棒にいろんなものが乗っているから、それらをすべて生かし切るのは本当に大変。最後の曲が書かれたのはバッハが60歳くらいのときです。私も同じ年齢になり、それでまあ録音を始めたのです。年だけはいわゆる分別ざかりというところですかね」 筆者は第1集から聴いてきたが、どの演奏も弾き手の円熟の心技を感じさせると同時に煌めくばかりのアイディアと豊かな情感に満ちている。自身で執筆した詳細な楽曲解説も読み応え十分。新たな名盤の誕生を祝したい。10/16(水)19:00 Hakuju Hall問 Hakuju Hallチケットセンター03-5478-8700https://www.hakujuhall.jp/渡辺玲子 プロデュース レクチャーコンサート vol.5異国のサウンドに惹かれたパリの作曲家たち文:笹田和人©Yuji Hori 楽譜には、作曲家が意図した隠されたメッセージがきっとある。それを知れば、きっと音楽の聴き方が変わる。国際的に活躍する名ヴァイオリニスト、渡辺玲子の案内で、名曲の秘密を易しく紐解くレクチャーコンサート。第5弾は、20世紀前半のフランスにおける2つの流行、「ジャズ」と「スペイン風」をテーマに据える。 今回も、ピアノの名手・江口玲がパートナーに。ドビュッシー「ゴリウォーグのケークウォーク」(ハイフェッツ編)、ラヴェル「ツィガーヌ」、プーランクとラヴェルの「ヴァイオリン・ソナタ」ほか、ジャズやスペイン音楽などの影響を受け、新境地を拓いた作品を特集する。さらに、ファリャによる「7つのスペイン民謡」からの3曲(コハンスキー編)や、江口のソロで聴くガーシュウィン「ソング・ブック」から〈私の愛する人〉と、逆にフランスの近代作品に心酔し、その作風に自身の個性や民族性を融合させた作品も併せて披露。名手の巧みな解説と名演が、あなたの好奇心を刺激する。

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