eぶらあぼ 2019.8月号2
40/187
37酒井 茜 & マルタ・アルゲリッチ(ピアノ・デュオ)スリリングなピアニズム全開、高密度のアンサンブルふたたび!文:伊熊よし子10/1(火)19:00 サントリーホール問 カジモト・イープラス0570-06-9960 http://www.kajimotomusic.com/ ミュージックプラント03-3466-2258 http://www.mplant.co.jp/他公演 9/27(金)愛知県芸術劇場コンサートホール(中京テレビ事業052-588-4477)、9/29(日)高崎芸術劇場(高崎音楽祭事務局027-322-9195 7/26発売) 酒井茜とマルタ・アルゲリッチは2005年のブエノスアイレス・アルゲリッチ音楽祭で初めてピアノ・デュオを行い、以来ルガーノ、パリ、リヨンをはじめとするヨーロッパ各地、ラ・フォル・ジュルネ東京でも共演を重ねている。14年に演奏した「春の祭典」は、聴衆を驚愕させるほどのエキサイティングな演奏で、いまなお語り継がれるほどだ。そのふたりがモーツァルト「4手のためのピアノ・ソナタ K.381」、プロコフィエフの組曲「シンデレラ」、ストラヴィンスキー「春の祭典」で共演する。 まず、モーツァルトのソナタは姉ナンネルとの連弾用に書かれたもので、《フィガロの結婚》のケルビーノのアリアが顔を覗かせるかろやかな曲。次いで登場するプロコフィエフの「シンデレラ」は、原曲のバレエ音楽の組曲をミハイル・プレトニョフが2台ピアノ用に編曲したもので、2台のピアノが華麗で物語性に富む旋律を豊かに歌い上げる。フィナーレを飾るストラヴィンスキーの「春の祭典」は作曲家自身による2台ピアノ用の編曲版で、酒井とアルゲリッチが火花を散らすスリリングなピアニズムが全開するメインプロラム。これはストラヴィンスキーの最高傑作と称されるバレエ音楽で、20世紀における現代音楽の出発点を成し、初演は大スキャンダルを巻き起こした。心をわしづかみにする刺激と、底なしのエネルギーに富んだ画期的な音楽をふたりが21世紀に鮮やかに蘇らせる。聴き手の心が高揚し、脳が覚醒するに違いない。©Bernard Rosenbergフィリップ・フォン・シュタイネッカー(指揮) 東京都交響楽団生誕200年に両雄の真価を再発見!文:柴田克彦第887回 定期演奏会 Cシリーズ10/2(水)14:00 東京芸術劇場 コンサートホール問 都響ガイド0570-056-057 https://www.tmso.or.jp/ これまで“スッペとオッフェンバックだけの定期演奏会”があっただろうか? 都響の10月C定期は、この喜歌劇の2大作曲家の生誕200年を記念したプログラム。都響の立体的かつ豊穣なサウンドで、“楽しく美しい”両者の名曲を見直す、妙味十分のコンサートだ。 指揮はドイツの逸材フィリップ・フォン・シュタイネッカー。アバドの薫陶を受けた彼は、オルケストル・レヴォリューショネル・エ・ロマンティーク、マーラー室内管等のチェロ奏者を歴任後、ピリオド楽器オーケストラ「ムジカ・セクロルム」を創立し、各地のオーケストラや歌劇場でも実績をあげている。《軽騎兵》《美しきガラテア》《天国と地獄》序曲などは小品として軽く流されがちだが、ここは、古楽やオペラに通じた指揮者ならではの新鮮なアプローチで、各曲の真の魅力を生き生きと伝えてくれるに違いない。 そして大きな目玉が、オッフェンバックのチェロ協奏曲の日本初演。チェロの名手として活躍していた若き日に書かれ、小太鼓が活躍する曲調から「軍隊風」と呼ばれる本作は、まさしくオペレッタのように華やかで変化に富んでおり、しかも技巧的な見せ場が満載されているので、聴けば誰もが楽しめる。ソロを弾くエドガー・モローは、1994年パリ生まれの俊英。チャイコフスキー・コンクール第2位ほか多数の賞を獲得し、ゲルギエフ、ソヒエフ等と共演している。本作は最新CDに録音し、鮮烈なソロを聴かせているだけに期待大。特に今回はチェロ奏者出身の指揮者のサポートも心強い。 耳も心も愉しい午後のひとときを、存分に満喫しよう!フィリップ・フォン・シュタイネッカー ©Annemone Taake Photographyエドガー・モロー ©Julien Mignot
元のページ
../index.html#40