eぶらあぼ 2019.8月号2
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リエット》を休憩なしの一本勝負で聴かせるという内容だ。大野和士は本作を選んだ理由についてこう語る。「憎しみ合っていた世界の人たちが、ロメオとジュリエットの二人の純愛の力で最後は親和し結ばれていく過程が、オリンピックに向かっていく日本の文化としても事業としてもメッセージとなるし、インターナショナルなメッセージ性がある作品だと思う」 つまり大野はこの「ロメオとジュリエット」という作品を、現代性をもった作品として取り上げようとしているのだ。特に重要視しているのが、最後の[第7部]でロレンス神父が歌う台詞である。 「怨恨を棄て去り和解せよという意味で『友であることを永遠に私たちは誓う!』と歌うのはベートーヴェンの『第九』と一緒。最後で大合唱し、神父たちが私たちに“友愛、平和”と叫ぶように呼びかけるんです。《ロメオとジュリエット》という哀切な作品ですが、悲劇では終わらない、最後に力や親和力をもらえる作品です」 本公演の成否を担うといっても過言ではない神父役を歌うのは 、日本が世界に誇るバス歌手として各々のオペラ公演で欠かせぬ存在を放つ妻屋秀和。前半で活躍するメゾソプラノとテノールには谷口睦美と村上公太という実力派、合唱には日本最高峰の地位にある新国立劇場合唱団と、オペラを得意とする大野らしい適材適所のキャスティングが揃っている。しかも今回は、サラダ音楽祭オリジナル・バージョンとして、芸術監督である安達悦子の振付による東京シティ・バレエ団が随所に加わり、視覚的にもこの物語を膨らませていく。90〜100分ほどの公演時間が、短めの映画ほどの感覚であっという間に過ぎゆくはずだ。ほかにも、ベイビーオペラ、パイプオルガンと合唱のコラボ、ドラゴンクエストなど見もの・聴きものがいっぱい! サラダ音楽祭のイベントは、他にも盛りだくさん。9月14日(土)〜16日(月・祝)のあいだに8公演ひらかれる30分ほどのベイビーオペラ『ムルメリ』は、2歳未満の赤ちゃんとその家族を対象にした珍しい作品だ。バーゼル歌劇場での公演を終えたばかりの歌手たちが今回のために来日する気合の入りよう。また、4歳以上から聴くことが出来る9月15日(日)の「オルガンでLet’s SaLaD!」では、会場となる東京芸術劇場のオルガンを知り尽くす同劇場副オルガニストの川越聡子がバッハの「トッカータとフーガ ニ短調」をはじめとするオルガンの名曲を披露すると共に、ソプラノのコロンえりか、エル・システマジャパンと東京芸術劇場が共同で結成した手歌合唱団「東京ホワイトハンドコーラス」や「相馬子どもコーラス」との共演をおこなう。 さらに9月19日(木)は、作曲家のすぎやまこういちが自ら指揮をする『ドラクエ・シンフォニックコンサートin SaLaD』、10月27日(日)には無料(事前申込制)の日比谷公園大音楽堂での野外コンサートと 、堅苦しくなく楽しめる公演が続いていく。これからの社会に求められるインクルーシブな公演を通じて、誰もが音楽を通して、ワクワク・ドキドキできるこの音楽祭にぜひともご注目いただきたい。Presented by Tokyo Metropolitan Government/Tokyo Metropolitan Symphony Orchestra TOKYO MET SaLaD MUSIC FESTIVAL 2019【サラダ音楽祭】トーキョー・メット・サラダ・ミュージック・フェスティバル2019〈メインプログラム〉9月14日(土)~9月16日(月・祝)※期間中、楽器体験や歌・ダンスのワークショップや会場周辺でミニコンサートを開催〈スペシャル・コンサート〉9月19日(木)・10月27日(日)会場:東京芸術劇場/池袋エリア/日比谷公園大音楽堂 ※7月から池袋・新宿・上野・多摩エリアで無料ミニコンサートを開催問 サラダ音楽祭事務局03-3663-6307 https://salad-music-fes.com/ ※音楽祭の詳細は左記ウェブサイトでご確認ください。東京シティ・バレエ団 ©鹿摩隆司小林顕作大野和士 ©Rikimaru Hotta

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