eぶらあぼ 2019.8月号2
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20藤倉大の新曲を和太鼓の林英哲と世界初披露! 2014年10月にCD『アドルフに告ぐ』でデビューを果たし、早くも4年半以上がたつ上野耕平だが、その活動はますます多岐にわたっている。ソロ奏者として日本全国のコンサートに出演するほか、「The Rev Saxophone Quartet」や「ぱんだウインドオーケストラ」等、レギュラー・アンサンブルでも活躍。CDも、アンドレア・バッティストーニの指揮で吉松隆の「サイバーバード協奏曲」(恩師である須川展也が命を吹き込んだ作品)を7月にリリースし、サクソフォンという楽器のさまざまな可能性を広げるべく挑戦し続けているのだ。 その上野が、東京・浜離宮朝日ホールで行っている「上野耕平のサックス道!」は、多彩な作品でソロ奏者としての音楽性や演奏テクニックなどに接することができる重要なコンサートであり、上野本人にとってもサクソフォンの可能性を追求できるシリーズだという。17年の第1回以来、ヴィンテージ楽器からロマン派音楽まで毎回テーマを設けながら展開してきたが、第5回となる12月のコンサートでは日本人作曲家による作品が並ぶ。 「サクソフォンはピアノやヴァイオリンなどに比べると歴史も浅く、広く知られているオリジナル作品も少ないのですが、紹介したい名作はたくさんあります。『サックス道』はそうした曲に出会っていただくためのシリーズですし、一方ではフランクのヴァイオリン・ソナタなど、すでに知られている曲をアレンジしてサクソフォンならではの音色と、そこから生まれる独自の表情などを味わっていただきたいという思いがあります。日本の作曲家も素晴らしい作品をたくさん書いていますが、今回演奏する長生淳さんの『天国の月』もそのひとつ。長生さんらしいあたたかな響きがする全2楽章の作品ですが、瑞々しさや鋭い響き、和の味わいなどが同居していて、もっと注目されていい名曲です」 ほかにも、武満徹の「小さな空」や上野本人のために書かれた作品なども予定されているが、さらに取材・文:オヤマダアツシ 写真:野口 博大きなトピックがある。ワールドワイドに活動する和太鼓奏者、林英哲との共演だ。上野は東京藝大在学中に初めて演奏を聴き、未知の音を体験して放心状態になったという。しかも今回の共演に際して新曲を依頼したのが藤倉大だと聞けば、期待はさらにふくらむだろう。もちろん今回が世界初演だ。 「初演の半年前なのに、もう完成した作品が送られてきて驚きました。しかもタイトルが『bueno ueno』という、スペイン語で“良いウエノ”ということらしいのですが、ちょっと気恥ずかしいけれど誇らしいです。和太鼓の衝撃的な音にサクソフォン1本でどう渡り合えるのかと考えていたとき、藤倉さんからソプラノ・サクソフォンで演奏するのはどうかと提案していただいて、それだったらいけるかもしれないという感触がありました。まったく響きの異なる2つの楽器がどんな世界を生み出せるのか、自分でも楽しみなのですが、決して広大ではない浜離宮朝日ホールという空間の中、ギュッと凝縮された音になり、かつて僕が体験した衝撃を皆さんにも味わっていただけるでしょう。このホールはサックス吹きとして理想的な空間であり、自分の出した音が豊かに隅々まで響き、ホールそのものが自分の楽器になったような一体感を味わえます。だからこそ思い切った選曲・演奏ができるのは間違いありません」 和太鼓とサクソフォン──どんな響きがするのだろうか。新しい創造の場を目撃できるチャンスでもあるはず。まさに「サックス道」という名の通り、極めるための試練と発見、そして挑戦がこのシリーズの真価なのだ。そして私たち聴き手にとっては、サクソフォンの個性を知る最高級の場となるだろう。Information上野耕平のサックス道! vol.5上野耕平 サクソフォン・リサイタル12/20(金)19:00 浜離宮朝日ホール問 朝日ホール・チケットセンター03-3267-9990https://www.asahi-hall.jp/hamarikyu/上野耕平Kohei Ueno/サクソフォン「La Valse by ぶらあぼ」(https://member.ebravo.jp/)では、誌面とは別の上野さんのインタビューを掲載しています。ぜひお読みください。

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