eぶらあぼ 2019.8月号2
161/187

158CDCD竹田恵子オペラひとりっ切り ―高橋悠治作品集―/竹田恵子&高橋悠治ハイドン:交響曲集Vol.8 第60番「うっかり者」、第54番/飯森範親&日本センチュリー響ビオラは歌う3/須田祥子J.S.バッハ:無伴奏ヴィオラ(チェロ)組曲〈Vol.2〉/ヴォルフガング・ヴェルファー高橋悠治:水仙月の四日、芝浜 古典落語より、めをとうし、祖母のうた竹田恵子 (うた) 高橋悠治(ピアノ)水野佐知香 亀井庸州(以上ヴァイオリン) 藤村俊介 多井智紀(以上チェロ)ハイドン:交響曲第60番「うっかり者」・第54番飯森範親(指揮)日本センチュリー交響楽団シューベルト:魔王、君こそは憩い/プロコフィエフ:「ロメオとジュリエット」より/小林秀雄:落葉松/レベッカ・クラーク:ヴィオラ・ソナタ/山田耕筰:赤とんぼ須田祥子(ヴィオラ)松本望(ピアノ)J.S.バッハ:無伴奏ヴィオラ(チェロ)組曲第4番~第6番ヴォルフガング・ヴェルファー(ヴィオラ)コジマ録音ALCD-7237 ¥2800+税収録:2017年8月、いずみホール(ライヴ)オクタヴィア・レコードOVCL-00697 ¥3200+税N&FMF25903 ¥2800+税ナミ・レコードWWCC-7898 ¥2500+税2004年にオペラシアターこんにゃく座を退座したのち竹田恵子が立ち上げた「オペラひとりっ切り」シリーズの最新CDには高橋悠冶作曲による4作品を収録。限られた音数によるある種“抑制”された高橋の音楽はそれゆえに聴き手の想像力を大いにかき立てるものがあるが、これに対して竹田の歌は様々な声色と表情を駆使して実に多様な情景を現前させ見事。この両者の絶妙なコントラストが一見モノクロームと見えるこれら「オペラ」を実に奥行きあるものたらしめている。中でも〈芝浜〉のペーソス、〈めをとうし〉の悲しさとほのかな希望の入り混じった独特の情感が胸を打つ。(藤原 聡)飯森範親と日本センチュリー交響楽団のハイドン全集第8弾。ハイドン42歳のオペラ時代の交響曲2曲。モダン楽器にピリオド奏法を加味した演奏は爽やかで美しい。チェンバロも付く。第60番は「うっかり者」という劇の音楽から取られて、その副題を持つ。6楽章構成で、トランペット、ティンパニの華やかな音色が特徴的である。通常の4楽章の後に、短い「悲歌」と終曲があり、後者にはおどけた調弦の仕草まである。第54番の緩徐楽章は20分近い異例の長さ。前半後半とも反復されるので形式の見通しは明快。反復ではソロ楽器のカデンツァも変更され、アイディア豊富で楽しめる。(横原千史)国内屈指の名ヴィオリストで、東京フィルの首席奏者としてもおなじみの須田祥子。彼女の名技と楽器への愛が詰まった「ビオラは歌う」シリーズ第3弾。シューベルトや日本の歌の深い味わいに、ヴィオラこそ人間の声に近いのだと実感。「魔王」の変幻自在の音色も凄い。「ロメオとジュリエット」は新発見のヴィオラ作品に出会えたような喜びを覚える、名編曲。特に抒情的な〈前奏曲〉〈バルコニーの情景〉はこちらが原曲?と錯覚するほど美しく感動的。クラークのソナタは、技巧的ながらも歌に満ちる名品。松本望の絶妙なピアノと、温もりある名録音も特筆したい。 (林 昌英)内に秘めた情熱が後押しする推進力と、静謐さが同居する快演だ。ヴォルフガング・ヴェルファーは、名巨ザハール・ブロン門下で唯一のヴィオリストにして、ウィーン・フィルでも活躍した名手。バッハの無伴奏チェロ組曲のヴィオラ版の録音は、第1〜3番を既に3年前に発表しており、当盤で完結の運びに。しっかり弓圧をかけた明瞭な発音を基本として、音符ごとに精緻な表現を織り込む。あるいは、ルバートしたい場面も、あえてインテンポで。機動力に勝る楽器の特性を生かした、きびきびとした音楽創りに磨きがかかり、「ヴィオラで弾くこと」の意義が、より明確に示されている。(笹田和人)CDSACD

元のページ  ../index.html#161

このブックを見る