eぶらあぼ 2019.7月号
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48大野和士(指揮) 東京都交響楽団天上へ向かう絶美の献奏文:柴田克彦第884回 定期演奏会Aシリーズ 9/3(火)19:00 東京文化会館第885回 定期演奏会Bシリーズ 9/4(水)19:00 サントリーホール問 都響ガイド0570-056-057 https://www.tmso.or.jp/ 至高、浄化、告別、永遠…等々の言葉が次々に浮かぶ。5年目を迎えた音楽監督・大野和士が都響を指揮するベルクのヴァイオリン協奏曲「ある天使の思い出に」とブルックナーの交響曲第9番。これは、作曲家の最晩年の作品が多く並ぶ今季の同楽団のプログラムの中でも白眉と言っていい。 ベルクのヴァイオリン協奏曲は、マーラーの未亡人アルマと建築家グロピウスの間の娘マノンの夭折を悼んで作曲しながら、自らのレクイエムともなった作品。十二音技法の中にバッハのコラール等を盛り込んだ、厳しくも清澄な逸品だ。ブルックナーの交響曲第9番は、終楽章の完成を死に阻まれた未完の大作。しかし劇的かつ濃密な音楽はブルックナーの到達点に値し、第3楽章アダージョの浄化されるような完結感は、まさしく“最期”に相応しい。 大野は、今年1月の都響定期でシェーンベルクのヴァイオリン協奏曲とブルックナーの交響曲第6番を取り上げ、情感豊かでニュアンスに富んだ演奏を聴かせた。したがって楽曲がより深遠な今回は、さらなる名演への期待も十分だ。加えて両曲は機能性抜群の今の都響で耳にしたい作品でもある。ヴァイオリン独奏は、16歳でラトル&ベルリン・フィルと共演して以来、世界の第一線で活躍するドイツの上昇株ヴェロニカ・エーベルレ。豊潤で柔らかな音とナチュラルなパッションをもつ彼女の演奏も要注目だ。なお本公演は、1986年から95年まで都響のシェフを務めて水準向上に大きく貢献した若杉弘の没後10年に捧げられる。ならばいつにも増して一体感に溢れた特別な一夜となるに違いない。ヴェロニカ・エーベルレ ©Felix Broedeチョン・ミョンフン(指揮) 東京フィルハーモニー交響楽団絆の深まるコンビによる渾身の「新世界より」文:山田治生7/18(木)19:00 サントリーホール7/19(金)19:00 東京オペラシティ コンサートホール問 東京フィルチケットサービス03-5353-9522 http://www.tpo.or.jp/ 新しい時代のスタートを祝うように、チョン・ミョンフン&東京フィルがドヴォルザークの交響曲第9番「新世界より」を演奏する。彼にとって、ドヴォルザークは特別に愛着のあるレパートリーであり、かつてドイツ・グラモフォンでウィーン・フィルとともに、交響曲第3番、第6番、第7番、第8番、弦楽セレナード、管楽セレナードなどの録音を行い、素晴らしい演奏を残した。2011年のチェコ・フィルとの来日公演での「新世界」も見事だった。また12年の東京フィル創立100周年特別演奏会でも同曲を取り上げている。「新世界」にオープンで自由なスピリットを感じるチョン・ミョンフンが今回も新鮮でドラマティックな演奏を聴かせてくれるに違いない。 演奏会の前半では、15年のシベリウス国際コンクールで第1位を獲得したクリステル・リーがシベリウスのヴァイオリン協奏曲を弾く。リーは、韓国系カナダ=アメリカ人であり、チョン・キョンファの弟子である。若い才能の紹介にも熱心に取り組むチョン・ミョンフンが、姉の推薦を受けて、リーの東京フィル・デビューのサポートをする。 20年近くを経て、ますます絆を深めているマエストロと東京フィルは、昔のように彼が強引に引っ張らなくても、東京フィル自体が自分たちで音楽を作るようになっている。そんな変化も生の演奏会で確かめたい。今、東京で最も聴くべき指揮者とオーケストラのコンビの一つといえるだろう。クリステル・リー ©Boris Zaretsky大野和士 ©Herbie Yamaguchiチョン・ミョンフン ©上野隆文

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