eぶらあぼ 2019.7月号
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30幸田浩子Hiroko Kouda/ソプラノヒロインたちの人生を薔薇の花になぞらえて歌います取材・文:岸 純信 (オペラ研究家) 写真:小林秀銀 美しい花のようにあでやかな舞台姿と、月の光を思わせる涼やかな声音で客席を魅了する幸田浩子。日本オペラ界の最前線をひた走る名ソプラノが、この7月、紀尾井ホールの豊かな音空間のなか、まったく新しいステージを披露する。 「昨年、CDデビュー10周年かつ10枚目の記念盤として、『ARIA 花から花へ〜オペラ・アリア名曲集』(日本コロムビア)と題したCDを出させていただきました。《椿姫》のヴィオレッタや《ラ・ボエーム》のミミから日本オペラの《夜叉ヶ池》まで収録しましたが、曲を決める際には、『これまではレパートリーを纏める方向でCDを作ってきましたが、今回は、これからの10年を共に生きていきたい役柄を』と考えて、ヴィオレッタのような大人の女性像を中心とした一枚を作りました。今までは娘役が多かったのですが、もうそろそろ『大人の役もやれるんですよ。やってもいいよね?』と言いたい自分が居たので(笑)。お陰さまでCDもご好評をいただきましたが、そこでプロデューサーの方から『このアリア集の世界観を、舞台上で具現化してみませんか?』というご提案をいただきまして、いろいろお話しした結果、ぜひやらせてほしいとお願いしたのです」 そこで斬新なステージングが実現。藤満健のピアノ伴奏によるリサイタルのかたちながら、特別に演出(馬場紀雄)をつけ、人気テノールのジョン・健・ヌッツォが相手役として登場。前半は《ジャンニ・スキッキ》や《つばめ》《ラ・ボエーム》といったプッチーニの名作オペラの聴きどころを取り上げ、後半はヴェルディの《リゴレット》と《椿姫》の名場面を。字幕も用意し、照明(上杉圭太郎)と舞台装花(大泉麗仁)の力も借りるという。 「大泉さんがいけるお花を、一つの舞台装置として捉えつつ歌ってゆくつもりです。上杉さんの照明も本当に光が柔らかくて素敵なんですよ! ところで、花といえば、以前は緑から白へとすっと変わるカラーが好きでしたが、最近は薔薇がやはり魅力的です。香りが本当に豊かですし、蕾の時から本当に存在感があって、薔薇って凄いな! と単純に思えるようになりました(笑)。リサイタルでも、ラウレッタやミミの初々しいアリアから、華々しい日々を送ったヴィオレッタが死の床につくまで歌い通しますので、薔薇が少しずつ花開き、でも最後には散ってしまうといったヒロインたちの人生像を、客席の皆様にたっぷり味わっていただければと思います」 今回のリサイタルでは、共演者もひときわ贅沢な顔ぶれに。 「ピアノの藤満さんは作曲家でもある方なので、オペラの全曲からご自身で作り上げた創作曲も演奏して下さいます。テノールのジョン・健・ヌッツォさんは、私がウィーンのフォルクスオーパーの専属として歌っていた時期に国立歌劇場やフォルクスで舞台に立たれていて、その頃から信頼している方です。今回は、ご一緒できることになって本当に嬉しいです。本番がとても楽しみです」 歌一筋に生きるプリマドンナであり、テレビやラジオへの出演も非常に多い幸田。でも、その華やかな活動の原動力となるのは、幼少期から身の回りに溢れていた素朴な歌声なのだという。 「7月のリサイタルの後は、9月にはベッリーニの歌劇《清教徒》の演奏会形式全曲上演に出演する予定です。大好きな歌の世界で機会を与えていただける今の自分を心から幸せに思っていますし、コンサートやオペラにお出でいただく皆様にも、私が積んできた経験への感謝の気持ちを、歌声の形でお返しできればと感じています。ご来場お待ちしています!」
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