eぶらあぼ 2019.7月号
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170CDCDCDベートーヴェン × シューベルト/ジョン・健・ヌッツォMasters, Masterworks/小森邦彦テレマン:無伴奏ヴァイオリンのための12のファンタジア/川田知子souvenirs~記憶~/岡本愛子ベートーヴェン:アデライーデ、君を愛す、歌曲集「遙かなる恋人に寄す」/シューベルト:歌曲集「白鳥の歌」より〈セレナーデ〉〈漁師の娘〉、春への想い、ます、ミューズの子、歌曲集「美しき水車小屋の娘」より〈知りたがる者〉 他ジョン・健・ヌッツォ(テノール)河原忠之(ピアノ)ドラックマン:水の反映/セリー:マリンバのためのラプソディ“ナイトラプソディ”/スタウト:セディメンタルストラクチャーズ/クラッツォゥ:ヴァイオリンとマリンバのためのソナタ/ファー:タンガロア小森邦彦(マリンバ)花田和加子(ヴァイオリン)テレマン:無伴奏ヴァイオリンのための12のファンタジア川田知子(ヴァイオリン)ドビュッシー:牧神の午後への前奏曲/デュティーユ:波動のままに/プーランク:「城への招待」より〈躊躇いのワルツ〉、オーボエとピアノのためのソナタ/メシアン:前奏曲集岡本愛子(ピアノ)カトリーヌ・カンタン(フルート) クリストフ・グランデル(オーボエ) 他収録:2017年6月、電気文化会館 ザ・コンサートホール(ライヴ)フォンテックFOCD9814 ¥2500+税ナミ・レコードWWCC-7896 ¥2500+税マイスター・ミュージックMM-4057 ¥3000+税収録:2008年5月、12年10月、東京文化会館(小) 他 (ライヴ)コジマ録音ALCD-9195 ¥2800+税2000年にウィーン国立歌劇場デビューを果たし、NHK大河ドラマ『新選組!』テーマ曲の歌唱などでクラシック・ファン以外にも抜群の知名度を誇るテノールの新譜。近年はドイツ歌曲の歌い手としても定評のある彼が、17年に名古屋で行った公演のライヴ録音盤。前半は“楽聖”ベートーヴェンによる愛の歌で、大作「遙かなる恋人に寄す」の6篇などは単なるラヴ・ソングを超えた崇高な雰囲気。後半“歌曲王”シューベルトによる名曲集でも音楽への真摯な想いをテキストに重ねた歌唱が圧巻だ。“うたを知り尽くした”ピアニスト、河原忠之による好サポートも聴きどころ。 (東端哲也)録音もマリンバの運動性よりは奥深い鳴りに焦点を当てているからだろうか、第一印象は少し地味に感じた。が、師や作曲家、同僚との交流などを記したライナーノートを片手に聴き進めるうちに、作品をその技術的なタフさを感じさせず、最も美しい形で現前させたいという小森邦彦の思いが伝わってきた。例えば「ナイトラプソディ」は多数の声部を操る相当な難曲だが、完璧なテクニックで実に整然とまとめている。高い熱量で疾走する「タンガロア」も、固い撥で派手な効果を狙うのではなく、柔らかい音の粒立ちの連なり、豊かな残響の中から、なめらかな運動性と重厚感が二つながらに浮かび上がる。(江藤光紀)独バロックの巨匠テレマンの「無伴奏ヴァイオリンのための12のファンタジア」は1735年、作曲者自身の手で出版され、当時の大ヒット作に。しかし、今ではバッハの一連の無伴奏作品に取り組むため、必要な技術を習得する“前段階”の作品と位置付けられがちだ。だが、国際的に活躍する名手・川田知子は、時代特有の様式感を踏まえつつ、モダン楽器ならではの剛性と明晰な発音の特性を最大限に生かして、バッハとは異なる精神と感性に基づいた、この作品のスタイリッシュな魅力を現出。色調も1曲ごとに繊細に変容させ、多層的で機知に富む、独自の筆致を余さず表現し尽くす。(寺西 肇)フランス近現代の音楽に愛を注ぎ、40年にわたる演奏活動を通じてその魅力を伝え続けてきた岡本愛子。本アルバムは、その軌跡の一端を収めた、楽しくも貴重なライヴ録音である。メシアン生誕100周年、デュティーユの特集、そしてパリのソリストたちとの室内楽シリーズのリサイタルから選りすぐりの録音が並べられる。フルートと共演する「牧神の午後への前奏曲」の香しさ、プーランクの「躊躇いのワルツ」の洒脱さ、メシアンの前奏曲集の倍音の豊かさなど、どこをとってもフランス音楽への深い眼差しと、音楽する喜び、響きへの優しさに満ち溢れている。(飯田有抄)CD

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