eぶらあぼ 2019.7月号
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168CDCDCDCD音の万華鏡/原田亮子&佐藤紀雄クリムトと1900年―ウィーンを巡る音楽―ピアノ・ソロ2/ファジル・サイ天の舞 Celestial Dance/Bach Artists Japan 匠R.シャンカール:魅惑の夜明け/J.S.バッハ:ソナタ ト長調BWV1021/エルガー:2つの小品(夜の歌・朝の歌)/バスケス:渦巻きの庭/権代敦彦:Mae Nam Khong~水の母~ヴァイオリンとギターのための 他原田亮子(ヴァイオリン)佐藤紀雄(ギター)アルマ・マーラー:静かな街/グスタフ・マーラー:「リュッケルト歌曲集」より〈私はこの世に忘れられて〉/ドビュッシー:美しい夕暮れ/J.シュトラウスⅡ:ほろ酔いの歌/ベートーヴェン:交響曲第9番「合唱付」 他小川里美(ソプラノ) 佐藤正浩(ピアノ)ヘルベルト・ブロムシュテット(指揮) シュターツカペレ・ドレスデン 他ファジル・サイ:トロイ・ソナタ、「動く邸宅」より〈アタテュルクへのオマージュ〉、「ピアノの技法」より〈金髪の少女〉〈イスタンブールの冬の朝〉ファジル・サイ(ピアノ)モラレス:天の舞、サイクロン、シティスケープス/プレスティ:5本のトランペットのための組曲/レイノルズ:5本のトランペットのための音楽 他Bach Artists Japan 匠【安藤友樹 長谷川智之 井上圭 尹千浩 佐藤友紀(以上トランペット)】コジマ録音ALCD-7235 ¥2800+税キングレコードKICC-1479/80(2枚組) ¥2778+税エイベックス・クラシックスAVCL-25988 ¥3000+税オクタヴィア・レコードOVCC-00155 ¥3000+税ありそうで少ないヴァイオリンとギターのデュオCDに面白い1枚が登場。内容がありきたりではなく、原田のために書かれたユニーク極まりないバスケスの「渦巻きの庭」以外の曲も全て原曲からの編曲が施されている(1曲のみ原曲ママのソロヴァイオリン曲はあるが)。例えばフルートのためのレパートリーとして有名なラヴィ・シャンカールの「魅惑の夜明け」は、ここでのデュオによってまたフルートの明快とは異なる幽玄な雰囲気を湛えた世界を現出させているし、先に記したバスケス作品では両楽器の多様な奏法によって特異な音色を追求。われわれはまだヴァイオリンとギター・デュオの可能性を知らない?(藤原 聡)現在好評開催中、過去最大級のクリムト展とのタイアップ・アルバム。19〜20世紀を生きた稀代の「ファム・ファタル(運命の女)」にして、クリムトに強烈なインスピレーションを与えたミューズでもあったアルマ・マーラーの歌曲を中心に、世紀末ウィーンを彩った音楽が満載。特に人気ソプラノ、小川里美によるマーラー〈私はこの世に忘れられて〉、ドビュッシー〈美しい夕暮れ〉、J.シュトラウスⅡ〈ほろ酔いの歌〉の新録音3曲は聴き逃せない。第14回ウィーン分離派展のために描かれた大作《ベートーヴェン・フリーズ》の元ネタ「第九」の完全収録(DISC2)も嬉しい。 (東端哲也)ファジル・サイ自作ソロ曲のみによる録音。約40分にわたる大曲「トロイ・ソナタ」は、トロイ遺跡の世界遺産登録20周年を記念するフェスティバルのため作曲された。特殊奏法も含む枠に捉われない音楽表現を巧みに組み合わせ、エキゾチックなメロディを浮かび上がらせつつ、力強い物語を展開する。トルコ共和国建国の父アタテュルクが、邸宅横のプラタナスを守るため家の方を動かしたエピソードに基づく「動く邸宅」は、目まぐるしく表情を変える神秘的な響きの音楽が、優れた指導者の持つエネルギーを表すよう。新しさと懐かしさ、刺激が共存する。密度の濃い美音も魅力だ。(高坂はる香)N響、東響の首席奏者等、日本を代表する5人の名手が集結した、“トランペット五重奏&四重奏のみ”のアルバム。グループ名の「Bach」は、同楽器のトップブランドたる「バック」を意味している。つまり5人はその愛用者であり、本作も統一感のある音色が大きな特徴をなしている。アメリカ人作曲家のオリジナル中心の選曲には一切の媚びがなく、楽器の特性を生かした音楽がひたすら続く内容は、きわめて真摯で潔い。演奏はむろんハイレベルで、サウンドは終始快適。中でも「シティスケープス」が実に愉しい。トランペットの魅力を堪能できる好ディスク。 (柴田克彦)
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