eぶらあぼ 2019.7月号
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166CDCDCDショスタコーヴィチ:交響曲第12番「1917年」&第15番/ラザレフ&日本フィルパストラーレ J.S.バッハ作品集 6/福田進一ファンタジー 木管五重奏によるモーツァルト作品集/アンサンブル・ミクストバッハ オルガン・コラールの世界~アルテンブルク城教会のトロスト・オルガン~/椎名雄一郎ショスタコーヴィチ:交響曲第12番「1917年」、同第15番アレクサンドル・ラザレフ(指揮) 日本フィルハーモニー交響楽団J.S.バッハ:「ゴルトベルク変奏曲」より〈アリア〉、ソナタ ト短調BWV1001、「パストラーレ」より〈アリア〉、パルティータ ニ短調BWV1004、コラール前奏曲「イエスよ、私は主の名を呼ぶ」、「平均律クラヴィーア曲集 第1巻」より〈プレリュード ハ長調〉福田進一(ギター) モーツァルト:自動オルガンのための幻想曲 ヘ短調K.608、フランスの歌「ああ、お母さん聞いて」による12の変奏曲K.265、自動オルガンのためのアンダンテ へ長調K.616、セレナード第12番K.388アンサンブル・ミクスト【梶川真歩(フルート) 本多啓佑(オーボエ) 尾上昌弘(クラリネット) 嵯峨郁恵(ホルン) 中田小弥香(ファゴット)】J.S.バッハ:前奏曲とフーガ ホ短調BWV548、同 ハ短調BWV546、コラール編曲「心よりわれは求めん」BWV727、幻想曲「イエスよ、わが喜び」BWV713、コラール・パルティータ「ようこそ、慈しみ深いイエスよ」BWV768 他椎名雄一郎(オルガン)収録:2018年11月、16年7月、サントリーホール(ライヴ)オクタヴィア・レコードOVCL-00694 ¥3000+税マイスター・ミュージックMM-4058 ¥3000+税ナミ・レコードWWCC-7897 ¥2500+税コジマ録音ALCD-1186 ¥2800+税日本で聴けるショスタコーヴィチの極北と言うべき豪演を繰り広げる、ラザレフ指揮日本フィルのライヴ。第12番は冒頭から気迫に満ち、第1楽章の強烈な推進力と壮絶な爆発に興奮。第3・4楽章の全奏のエネルギーも凄まじく、全てをなぎ倒すように進む結尾の“勝利の行進”は空恐ろしくなるほど。このコンビの長所が詰まった名演だ。第15番は繊細さと緻密さが要求される難曲だが、初演のリハーサル現場にいたというラザレフが、熱気と冷気が両立した緊張感で、鋭くもニュアンス豊かな好演を実現。彼らのショスタコーヴィチ交響曲録音も半分を超え、今後もさらに期待したい。(林 昌英)ギター界の大家によるバッハの編曲ものシリーズが、無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第1番、同パルティータ第2番を中心に編んだ本6作目をもってひとまず完結。聴きなれた旋律がヴァイオリンでは想像で補うよりない和声に支えられ、ポジションの複雑な切り替えもなんのその、抜群の安定感で聴き手を包み込んでいく。パルティータのジーグではそれまでの落ち着いた歩みが、一気に激しく情熱的なステップに変わり、間髪いれずに始まるシャコンヌの荘厳さが際立った。そこからは多彩な音色、タッチの細かい変化、ここぞという場面で見せる気迫に魅了された。べテランの名に恥じない仕上がりだ。(江藤光紀)東京藝大の学生(現在は在京オケやフリーの奏者)によって2003年に結成された木管五重奏団のモーツァルト・アルバム。モーツァルトは木管五重奏曲を書いていないのだが、巧みな選曲と編曲によって温かさや愉悦感が表出され、彼が木管に合ったテイストをもつ作曲家たることを実感させる。中でも同アンサンブルが編曲したセレナード第12番は、五重奏のレパートリーに成り得ること間違いなしだ。演奏自体は、16年活動しているだけあって自然な呼吸感が光り、各楽器の対話やハーモニーの妙味が横溢。密度の濃い好演でモーツァルトの醍醐味を満喫させる。 (柴田克彦)中部ドイツ・アルテンブルク城の聖堂内にある、名工トロスト作のオルガン(1739年)は、完工時にバッハも試奏した銘器。欧州各国の名オルガンに触れてきた名手・椎名雄一郎は今回、このオルガンに対峙し、時を超えて守り継がれてきた音色で、バッハがオルガニストとして紡いだコラールの世界を掘り下げる。まずは、「前奏曲とフーガ」2曲と「パルティータ」を枠組みに。椎名は、これら規模の大きな作品で、楽器を鳴らし切るダイナミックな快演を聴かせる一方、合間に配したコラール編曲や幻想曲を慈しむように奏で、その表現法やハーモニーの多様性を知らしめる。(笹田和人)CD

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