eぶらあぼ 2019.6月号
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164CDCDCDFrance Romance/福間洸太朗R.シュトラウス:英雄の生涯、リムスキー=コルサコフ:シェエラザード/川瀬賢太郎&神奈川フィル山本裕之作品集 輪郭主義ハイドン:交響曲集Vol.7/飯森範親&日本センチュリー響ドビュッシー:夢、レントより遅く/ラヴェル:亡き王女のためのパヴァーヌ、ラ・ヴァルス(福間編)/サティ:ジュ・トゥ・ヴ(同)/ワイセンベルク:シャルル・トレネによる6つの歌の編曲/ルノワール:聞かせてよ、愛の言葉を(同) 他福間洸太朗(ピアノ)R.シュトラウス:交響詩「英雄の生涯」リムスキー=コルサコフ:交響組曲「シェエラザード」川瀬賢太郎(指揮)﨑谷直人 石田泰尚(以上ヴァイオリン・ソロ)神奈川フィルハーモニー管弦楽団山本裕之:輪郭主義Ⅰ~Ⅶ、輪郭主義・ミニ藤田朗子 中村和枝 及川夕美 内本久美(以上ピアノ) 橋本晋哉(テューバ) 加藤訓子(ヴィブラフォン) 村田厚生(トロンボーン) 佐藤まどか(ヴァイオリン) 多久潤一朗 ジョヴァンニ・マレッジーニ(以上フルート) 松本卓以(チェロ) 原田綾子(クラリネット) 鈴木生子(バス・クラリネット) 他ハイドン:交響曲第37番・第78番・第16番・第100番「軍隊」飯森範親(指揮)日本センチュリー交響楽団ナクソス・ジャパンNYCC-27308 ¥2500+税収録:2017年10月&12月、横浜みなとみらいホール(ライヴ)フォンテックFOCD9809/10(2枚組) ¥3500+税コジマ録音ALCD-121 ¥2800+税収録:2017年3月&8月、いずみホール(ライヴ)オクタヴィア・レコードOVCL-00692 ¥3200+税福間洸太朗が、自身のピアノ人生における重要な出来事とゆかりのフランス音楽を集めたアルバム。自ら編曲を手がけた「ラ・ヴァルス」や「ジュ・トゥ・ヴ」は、品の良さが保たれつつ、ピアノならではのハーモニーの厚みと色彩が楽しめる。福間も協力して楽譜が出版されたワイセンベルク「シャルル・トレネによる6つの歌の編曲」は、親しみやすいメロディから多様な感情を受け取ることができる。いずれも肩の力が抜けたこれぞフランスの粋という表現と音で、作品を自分のものとしていることが伝わる。福間の洗練された感性とバランス感覚、高いテクニックが生きたアルバム。(高坂はる香)常任指揮者・川瀬賢太郎と神奈川フィルによる、管弦楽法の大家ふたりの名作集にして、同楽団の名コンサートマスターふたりをクローズアップする好企画。川瀬は颯爽とオケをドライヴしながら、込み入ったテクスチュアは美しく聴かせて、清潔かつ華麗な音色で好演を作り上げる。「英雄の生涯」の﨑谷直人は、透明感のある丁寧なソロで聡明な「英雄の妻」の姿を浮かび上がらせ、「シェエラザード」の石田泰尚のソロは、美音で端正な流れを作り、わずかなニュアンスで主人公の妖艶さをも引き出して絶妙。両者とも劣らず見事な名技で、同楽団の良好な状態を象徴するアルバムとなった。 (林 昌英)ある楽器がピアノの音に対して四分音をぶつけると、なぜか本来調律が固定されているはずのピアノの音が狂ったように「ずれて」聴こえる。この現象の追求のため山本裕之がベリオの「セクエンツァ」シリーズよろしく様々な楽器を用いて不定期な連作としたのが「輪郭主義」。実際、これを聴くと相当にたまげる。楽器によってその“狂い具合”に差異があるように聴こえるが、とりわけトロンボーンによる「輪郭主義Ⅲ」にそれが顕著に聴き取れるように感じる。なぜ斯様な事態が発生するのかは山本自身も未だ判らないとライナーで書いているが、ともあれこの作品群は実に面白い。(藤原 聡)飯森範親と日本センチュリー響のハイドン全集第7弾。モダン楽器を使いながら、歴史的情報を取り入れ、チェンバロも通奏低音で使う。斬新で現代的なハイドン。アンサンブルは上質で、透明な響きが美しい。交響曲第37番は最初期の作品だが、転調や対比の構築に後年の作品を予感させる。第78番は中期のハ短調作品で、管楽器の扱いが巧みで、むしろ明るさや楽しさが際立つ曲だ。第16番はフガートやバスの動きに工夫があり、爽やかな運動性もある。第100番「軍隊」では、細部まで緻密なテクスチュアが、野卑なほどの軍楽の響きと対置されることで、演奏の洗練ぶりがより強く印象づけられる。(横原千史)SACD
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