eぶらあぼ 2019.6月号
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160CDCDシューマン:チェロ協奏曲 他/堤剛&小林研一郎&日本フィルミルコ・ラザール作品集/北谷直樹&杉田せつ子Három barátnak~コダーイ:無伴奏チェロ・ソナタ 作品8 他/川上徹チマローザ:宮廷楽士長&ペルゴレージ:奥様女中/佐藤征一郎シューマン:チェロ協奏曲チャイコフスキー:交響曲第3番「ポーランド」堤剛(チェロ)小林研一郎(指揮)日本フィルハーモニー交響楽団ラザール:チェンバロとオブリガート・ヴァイオリンのための「バレエ組曲」、同「マルガレーテ組曲」、2段鍵盤チェンバロのための「4つの小品」より北谷直樹(チェンバロ)杉田せつ子(ヴァイオリン)コダーイ:無伴奏チェロ・ソナタ op.8、アダージョ/宮川彬良:バラードール~チェロとピアノのための/町田育弥:手紙~無伴奏チェロのための、じいちゃんのエンドロール川上徹(チェロ)町田育弥 宮川彬良(以上ピアノ)チマローザ:歌劇《宮廷楽士長》/ペルゴレージ:歌劇《奥様女中》 他佐藤征一郎(バスバリトン)川口耕平(ピアノ)紙谷加寿子(ソプラノ)櫻井利幸(バリトン)収録:2019年1月、サントリーホール(ライヴ)マイスター・ミュージックMM-4056 ¥3000+税録音研究室(レック・ラボ)NIKU-9021 ¥2800+税オクタヴィア・レコードOVCL-00686 ¥3000+税収録:1984年12月、音楽の友ホール(ライヴ) 他ナミ・レコードWWCC-7895 ¥2500+税わが国を代表する巨匠ふたりが揃った、今年1月の日本フィル定期が早くもCD化。シューマンのチェロ協奏曲は、今風の軽快さとは無縁の悠揚迫らぬ歩みで進み、不思議な“静けさ”すら漂う。堤の孤高の境地が示された表現を、小林がしっかりと受け止めて、余人の及ばぬ協奏の世界が創出される。チャイコフスキーの3番でも、第1楽章主部の力強い第1主題がしなやかに歌われるなど、全体に落ち着きや流麗さが際立ち、楽曲最後の祝祭まで深みを伴う。「炎のコバケン」という言葉だけでは表現し尽くせないような円熟のアプローチで、実演機会の少ない本作の真価を掬い上げる。(林 昌英)ピリオド楽器を時代という枠組みから切り離し、個性的な表現手段として用いる動きは今や盛ん。現代スロヴェニアのミルコ・ラザールが、スイスを拠点に活躍するチェンバリスト、北谷直樹のために書いた作品集。多様な色彩とリズムの前に、「高貴で繊細」といったイメージを押し付けられてきた楽器が、時に艶めかしく、時にダイナミックに語り掛けてくる。バロックヴァイオリンの名手、杉田せつ子は、複数の弓を使い分け、ピュア・ガットをどう“共鳴”させるかを追究。北谷と共に、楽器の可能性の拡大へ挑む。同梱のDVDでは、演奏や楽器の製作過程、録音の意図などが紹介される。 (寺西 肇)新日本フィルのフォアシュピーラーを務める傍ら、サイトウ・キネン・オーケストラへの参加やソリストとしても活躍する川上徹のコダーイ「無伴奏」。派手な技巧で華麗に弾き飛ばす演奏もままある中、ここでの川上は卓越した技巧を遠心の方向ではなく腰の据わった求心のベクトルへ向ける。その音楽は落ち着きがあり、そして音楽の表情に実に深みがある。中でも第2楽章の味わいは絶品だ。宮川彬良、町田育弥の両作品は意外な併録曲と思えるが、あえて言えばコダーイのもう1曲の収録曲「アダージョ」と近親性のあるロマンティックかつリリカルな曲調で、チェロの歌謡的魅力を存分に生かしている。(藤原 聡)17〜18世紀のイタリアで、シリアスなオペラの幕間に息抜きとして上演され人気を博した「インテルメッツォ」。その有名な2作品に挑んだ、日本の名バスバリトン佐藤征一郎による絶頂期(1984年)のライヴ録音が登場。オーケストラの練習風景を各楽器奏者と格闘するマエストロの視点で描いた一人芝居《宮廷楽士長》はイタリア語、小間使いが金持ち老人の妻の座におさまる過程を面白おかしく描いた《奥様女中》は日本語訳による上演だが、どちらもステージ上の楽しげな雰囲気が絶妙に伝わってくる。両公演のピアノ伴奏を担当した川口耕平の明るい音色も素晴らしい。(東端哲也)CDCD+DVD
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