eぶらあぼ 2019.5月号
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49舘野 泉 & ラ・テンペスタ室内管弦楽団 ~2つのピアノ協奏曲~日本とフィンランドの国交樹立100周年を讃えて文:高坂はる香5/25(土)14:00 東京オペラシティ コンサートホール問 ジャパン・アーツぴあ0570-00-1212 http://www.japanarts.co.jp/ 20代後半でフィンランドに移住し、以来、日本とフィンランドの架け橋として多彩な活動を行う舘野泉。左手のピアニストとして活動するようになった82歳の今も、レパートリーの拡張や新作初演に精力的に取り組む。日本フィンランド国交樹立100周年の今年は、親善大使に就任。ラ・テンペスタ室内管弦楽団と記念公演に出演する。同管弦楽団は、舘野の息子であるヤンネ舘野がコンサートマスターを務め、フィンランドの仲間たちを中心に結成されたもの。 取り上げるのはまず、シベリウスやラウタヴァーラ、ノルドグレンという、19世紀後半から21世紀初頭に生きたフィンランドの作曲家。ノルドグレン「左手のためのピアノ協奏曲第3番」は、小泉八雲の怪談『死体にまたがった男』から着想を得て書かれた作品で、舘野によれば「人間の中にある恐怖、絶望、苦しみが音楽で表現され、最後は静かに“それでも世界は過ぎてゆく…”ということが示される」。 日本人作品では、舘野が「ピアノが人生の一部であることを感じさせる曲を書く人」と評する熊本出身の作曲家、光永浩一郎の「左手ピアノと室内管弦楽のための『泉のコンセール』」が演奏される。2016年の熊本地震をまたぐ時期に書かれた作品で、最後は生きる希望を感じさせる音楽で閉じられるという。 いずれもこの公演でなくてはなかなか聴けないうえ、舘野とラ・テンペスタ室内管弦楽団の共演で聴くことに意義のある作品ばかり。初来日となる気鋭、エーロ・レヒティマキの指揮にも注目したい。ラ・テンペスタ室内管弦楽団アンドリュー・リットン(指揮) 東京都交響楽団初夏を彩る、律動感とパワー漲るサウンド文:飯尾洋一第878回 定期演奏会 Aシリーズ 5/28(火)19:00 東京文化会館問 都響ガイド0570-056-057 https://www.tmso.or.jp/ 5月の東京都交響楽団定期演奏会Aシリーズには、アンドリュー・リットンが4年ぶりに登場する。ニューヨークに生まれ、イギリスのボーンマス交響楽団桂冠指揮者、ノルウェーのベルゲン・フィル桂冠音楽監督を務めるリットンだが、現在はニューヨーク・シティ・バレエ音楽監督の任にもある。コンサート、バレエ、オペラ、すべての分野で活躍する才人だ。プログラムは、バーバーの管弦楽のためのエッセイ第2番、プロコフィエフのピアノ協奏曲第3番、チャイコフスキーの交響曲第4番という、アメリカ&ロシア音楽プロ。 オーケストラ作品を「エッセイ」と名付けるのはバーバー独自の発想だろう。意味合いとしては、単一楽章ながら起承転結のある絶対音楽といったところか。単に演奏会用序曲とする以上の緊密な音のドラマを感じさせる作品だ。ブラス・セクションの荘重な響きが聴きもの。 プロコフィエフのピアノ協奏曲第3番では、ロシア出身のアンナ・ヴィニツカヤがソロを務める。ヴィニツカヤは2007年エリーザベト王妃国際音楽コンクールの優勝者。高度な技巧に支えられたスケールの大きな表現が期待できる。 チャイコフスキーの交響曲第4番は名曲中の名曲。作曲者自らが記すように「運命の力」との戦いと克服が描かれる。リットンが都響から輝かしくパワフルなサウンドを引き出してくれるにちがいない。アンナ・ヴィニツカヤ ©Marco Borggreveアンドリュー・リットン ©Danny Turner舘野 泉 ©Akira Muto

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