eぶらあぼ 2019.5月号
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48©Taisuke Yoshidaヴィオラスペース 2019「ヴィオラで巡る音楽の旅」5/30(木)19:00 大阪/あいおいニッセイ同和損保 ザ・フェニックスホール5/31(金)19:00 仙台/宮城野区文化センターPaToNaホール6/4(火)19:00 紀尾井ホール6/5(水)19:00 上野学園 石橋メモリアルホール問 テレビマンユニオン03-6418-8617 http://www.tvumd.com/※佐々木亮は5/31には出演しません。マスタークラスほか、各会場での演目については上記ウェブサイトでご確認ください。佐々木 亮(ヴィオラ)「ヴィオラスペース」は自分を成長させてくれた重要なイベントです取材・文:林 昌英Interview ヴィオラの魅力を広め続けてきた「ヴィオラスペース」も今年で28年目。今回は「旅」をテーマに、例年にも増してユニークな演目が並ぶ。そこで中心的存在となるのが、NHK交響楽団首席奏者の佐々木亮である。 佐々木は東京藝術大学卒業後、ジュリアード音楽院に留学。当初はヴァイオリンを学んでいたが、「ヴィオラに触れた瞬間に『ああ、自分はこの楽器を一生やっていくんだな』と直感しました」という劇的な出会いからヴィオリストに。ニューヨークを拠点に活躍していたが、2001年の同時多発テロで「人生観が大きく変わりました。活気に満ちていたニューヨークが暗い雰囲気に覆われ、様々なことを考え直す機会になりました」と振り返る。03年に帰国し、翌年にN響入団。08年より首席を務め、ヴィオラ・セクションの顔となっている。 彼にとって「ヴィオラスペース」は「素晴らしい奏者たちと多くの曲に出会えて、自分を成長させてくれた重要なイベント」であるという。今回は東京(2日間)と大阪の出演で、東京では両日ともメイン楽曲を担当。初日はベルリオーズ「イタリアのハロルド」からソロの出番が多い第1・第2楽章が取り上げられ、佐々木は第1楽章を弾く。 「第2楽章を弾くのは、私が最も尊敬する演奏家のひとりである今井信子先生です。先生のこの曲の録音はベストと言える素晴らしさ。滅多にない形の共演で緊張感もありますが、この上なく光栄な機会です」 東京2日目は、佐々木が指導する桐朋学園のヴィオラ奏者たちとの共演で、ブレット・ディーン(元ベルリン・フィル ヴィオラ奏者)作曲の「テスタメント」の日本初演と、ピアソラ「ル・グラン・タンゴ」を。大阪では同じくディーンの無伴奏作品に取り組む。 「『テスタメント』はヴィオラ12人が対等にアンサンブルを作る面白い作品です。学生でも一緒に弾くとなれば“共演者”ですから、先生と生徒という感じとは違ってきますし、楽しみです。彼のソロ作品も、難しさの中にも同じヴィオラ奏者として通ずるものがあり、何かを伝えられる曲だと思います。あと、タンゴを弾きそうなイメージはあまりないかもしれませんが(笑)、実は苦手じゃありませんので、ピアソラも楽しみにしてください!」 ヴィオラの魅力について「一人ひとりが全く違う音を持っていて多様性があり、どんな人の演奏からも得るところがあります」と語る佐々木。その誠実さは彼自身の演奏、ひいては楽器そのものの特長にもつながっている。マスタークラスも担当する彼の八面六臂の活躍を通して、ヴィオラの奥深さを体感する場となる。ロナルド・ブラウティハム(フォルテピアノ)共鳴し合う、ウィーン古典派2人の名ソナタ文:寺西 肇 底鳴りする低音を味方につけたかと思えば、次の瞬間には、戯れる子どものような軽やかさを伴って。まさに変幻自在の音楽創りに、一瞬たりとも“耳”が離せない。 モダンとピリオド、両方の楽器の個性をきっちりと弾き分けつつ、自身のしなやかな感性を反映した瑞々しい響きを紡ぎ出すオランダの鬼才、ロナルド・ブラウティハム。ルドルフ・ゼルキンら伝統的ピアニズムの巨匠らに学ぶ一方、フォルテピアノ演奏では、その表現の可能性の限界に挑み続けてきた。5/15(水)19:00 トッパンホール問 トッパンホールチケットセンター03-5840-2222http://www.toppanhall.com/©Marco Borggreve 今回は、ウィーンの名工アントン・ワルター製作の銘器(1800年頃)をモデルとして、アメリカ出身のポール・マクナルティが手掛けた、レプリカのフォルテピアノを使用。 セレクトされたのは、第3番と第21番「ワルトシュタイン」、ベートーヴェンの2つのハ長調作品に、ハイドン晩年の第49、第52番と2つの変ホ長調作品。4つの名ソナタが鬼才の強烈な個性で結び付けられ、やがて不思議な共鳴を呼び起こしてゆく。
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