eぶらあぼ 2019.5月号
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40CD『牧神の午後への前奏曲~フルート・アンサンブルの愉しみ~』マイスター・ミュージックMM-4053 ¥3000+税※「フルート・ライヴ in Hakuju」については本誌P.64の紹介記事を ご参照ください。工藤重典(フルート)名匠二人の妙技とフルート・オーケストラの魅力取材・文:宮本 明Interview フルート界のトップランナー工藤重典が新譜『牧神の午後への前奏曲~フルート・アンサンブルの愉しみ~』をリリースした。工藤のソロによる「牧神」が初録音だというのもやや意外だったが、一方の注目が、ヴィヴァルディ「4本のフルートのための協奏曲」や、ハチャトゥリアン「剣の舞」など、収録8曲中6曲がフルート・オーケストラでの演奏ということ。その魅力を工藤はこう言う。 「ひとつは、“歌うオルガン”というイメージ。今回のCDの中でもボワモルティエの『5本のフルートのための協奏曲第1番』(フルート・オーケストラ版)がまさにそう。ノン・ヴィブラートで音程だけ合わせて吹けばオルガンのような響きにはなるのですが、やっぱりみんな笛吹きなので、その中で“歌う”。そこが独特だと思います」 ピッコロ、フルート、アルト・フルートに、珍しいバス・フルート、超レアなコントラバス・フルートの加わったフル編成の響きは実に多彩だ。 「そして、フルーティストだけで協奏曲が演奏できるというのもいいんですよ!」 名曲のひしめくフルート協奏曲だが、管弦楽と共演する機会は限られる。それをフルート奏者たちだけで演奏できれば演奏機会は格段に広がるというわけだ。日本は世界的に見てもフルート人口の多いフルート大国。毎年全国各地の大ホールで行われるフルートフェスティバルには大勢の奏者たちが集う。大編成はそこでの演奏にも大いに活用できる。 そしてアルバムのもうひとつの聴きどころが、工藤と同じランパル門下の“兄貴”アンドラシュ・アドリアンとの共演だ。 「ちょうど10年違いの同じ誕生日なんです。最初に会ったのは僕が20歳の時。ニースの夏期アカデミーで、彼はランパルのアシスタントでした。とてつもなく上手い奏者がいると驚いた。音楽の表現力はもちろん、発信する力が強い。今回参加した若い生徒たちも彼にすごく刺激を受けていました」 工藤のフルート・アンサンブルやオーケストラのレパートリーの多くは、Hakuju Hallで主宰するコンサート「フルート・ライヴ in Hakuju」のために生まれた編曲。 「もともとは90年代に渋谷のジァン・ジァンで始めた企画。客席とステージの近さが気に入って、10人ぐらいの仲間でやってみたら大成功でした」 ジァン・ジァンが閉館して中断していた企画が、2008年にHakuju Hallで蘇った。6月29日にはその10回目の公演がある※。「想定できる曲をすべて集めた」という、昼夜各2時間半のプログラムによる豪華2本立てだ。残念ながら今回を集大成とし、「フルート・ライヴ」はいったん終了とのこと。絶対に逃せない機会だ。5/1(水・祝)14:00 紀尾井ホール問 プロアルテムジケ03-3943-6677https://www.proarte.jp/バソンの世界連休中に愉しむ、稀少なバソン・ワールド文:柴田克彦小山 清 「バソン」という楽器をご存じだろうか? いわゆる「フランス式ファゴット」で、標準型のファゴットよりも古雅で温かく表情豊かな、独特の音色をもっている。管楽器ファンはレ・ヴァン・フランセの奏者、ジルベール・オダンの使用楽器として認識があるだろうし、『のだめカンタービレ』でも紹介された。 だが「バソンのための」音楽を楽しむコンサートとなれば実に稀少。それが同楽器の第一人者・小山清によって開催される。小山は、パリ音楽院で学び、バソンのソリストとして欧米各地で活躍してきた世界的名手。「バソンの世界」と銘打った今回、前半の「バソンと弦楽オーケストラ」では通常のバソンで協奏曲、後半の「日本の雅」では、東日本大震災の折に津波で倒された樹齢260年の松で作ったボネ(先端部分)を用いたバソンを使い、室内楽曲が披露される予定。フランスの名フルート奏者ピエール・モンティをはじめ共演陣も多彩。大澤徹訓の協奏曲の世界初演や、吉松隆のフルート、バソンとピアノのための作品など、演目もきわめて興味深い。10連休の最中、耳新たな音楽体験はいかが?
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