eぶらあぼ 2019.5月号
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37ジョナサン・ノット(指揮) 東京交響楽団時代を証言する20世紀の傑作2編文:林 昌英第670回 定期演奏会 5/25(土)18:00 サントリーホール問 TOKYO SYMPHONY チケットセンター044-520-1511 http://tokyosymphony.jp/第113回 新潟定期演奏会 5/26(日)17:00 りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館問 りゅーとぴあチケット専用ダイヤル025-224-5521 https://www.ryutopia.or.jp/ ショスタコーヴィチとブリテン。共に時代の深淵を覗き込み、その闇を後世に伝える傑作を数多く遺した、20世紀のソヴィエトとイギリスを代表する巨人である。実際に彼らは親交を持ち、作品を献呈しあうほど互いに尊敬しあっていた。 5月の東京交響楽団の定期は、そのふたりの聴きごたえある作品のカップリング。1937年、スターリン体制の大粛清の真っ只中という時期に、自らの芸術家人生を賭して書かれたショスタコーヴィチの交響曲第5番。39年、第二次世界大戦開戦の時期に書かれ、当時の複雑な感情が反映されたというブリテンのヴァイオリン協奏曲。いずれも当時の世界的な「恐怖」を背景とする名作であり、意義深い組み合わせだ。この秀逸なプログラムはもちろん、東響音楽監督ジョナサン・ノットの思いが反映されたもの。ノット得意の20世紀ものを、時代の証言とも言える作品で体験できるのは嬉しい。 ブリテンのソロは世界的名手のダニエル・ホープ。バロックから現代作品まで、自在にしてユニークな表現で独自の存在感を確立している。彼は英国王立音楽大学で学んでおり、イギリスの名匠ノットとのブリテンとなれば、本作の理想的な演奏が体験できそうだ。また、ノットと東響によるロシアものといえば、昨年11月のラフマニノフ第2番の圧倒的な名演奏の記憶が鮮烈に残っている。今回のショスタコーヴィチも、作品の光と影を浮かび上がらせる理知的なアプローチと、それをも忘れさせるほどの興奮を覚えるような、充実の名演への期待が高まる。ダニエル・ホープ ©Nicolas Zonviオペラ夏の祭典2019-20 Japan↔Tokyo↔Worldプッチーニ《トゥーランドット》(東京文化会館公演)国内外最高峰の演奏家が集結する一大イベント文:室田尚子7/12(金)18:30、7/13(土)14:00、7/14(日)14:00 東京文化会館問 東京文化会館チケットサービス03-5685-0650※新国立劇場、びわ湖ホール、札幌文化芸術劇場 hitaruの各提携公演情報は下記ウェブサイトでご確認ください。 https://opera-festival.com/ オリンピック・パラリンピック・イヤーの2020年に向けて、東京文化会館と新国立劇場という日本を代表する2つの劇場が共同制作を行う「オペラ夏の祭典2019-20 Japan↔Tokyo↔World」。その第一弾として、2019年はプッチーニの《トゥーランドット》を上演する。7月12日、東京文化会館での公演を皮切りに、新国立劇場、びわ湖ホール、札幌文化芸術劇場 hitaruでの全11公演が予定されている。指揮は新国立劇場オペラ芸術監督の大野和士、そして演出は、大野とリヨン歌劇場で共作の経験のあるバルセロナ出身の演出家アレックス・オリエが務める。オリエは「東京のようなメガロポリスを連想させる美的要素を盛り込みつつ、未来的な舞台をつくりたい」と語っており、この一大イベントにふさわしい、ゴージャスでアーティスティックな舞台が期待できそうだ。 出演者は全てダブルキャスト。タイトルロールには現代を代表するドラマティック・ソプラノとして知られるイレーネ・テオリンと、アメリカ生まれでこの役を得意とするジェニファー・ウィルソン。他に、カラフはテオドール・イリンカイとデヴィッド・ポメロイ、そしてリューを世界で活躍する日本人ソプラノ中村恵理と砂川涼子が務めるなど、国内外の一流歌手が集結。合唱は新国立劇場合唱団・藤原歌劇団合唱部・びわ湖ホール声楽アンサンブルの混合チームで、これも今までになかった組み合わせだ。管弦楽は大野が音楽監督を務めるバルセロナ交響楽団。まさに日本と海外のオペラ界が手を組んでつくりあげる「オペラの祭典」になるだろう。ジョナサン・ノット ©K.Miura左より:大野和士/アレックス・オリエ/イレーネ・テオリン/ジェニファー・ウィルソン/テオドール・イリンカイ ©Petrica Tanase/デヴィッド・ポメロイ
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