eぶらあぼ 2019.5月号
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174て短パン。身体は太めからガリガリ、毛むくじゃらと多様だ。 恥の内容は「ばれない放屁の方法」といった個人的なことから、公的な事柄に広がっていく。虚を突かれたのはマケドニア人のダンサーが「野良犬の殺し方」について語るシーンだ。「腹を裂く。毒もいい」……しかし犬の話として聞いていた内容が、いつの間にかギリシャとマケドニアの国境で足止めされ劣悪な環境に留め置かれているシリア難民達へと重なっていく。そしてパフォーマー達は「これはあなた達一人ひとりの問題だ」と客席を指差して迫ってくるのである。しかしそれも途中で「あ、これはお芝居なんで」と笑顔に戻るあたり、バランス感覚も絶妙だった。 田代は観客に「両親はイギリス人と日本人だけど、私の外見は日本人ぽくない。私は誰なの?」と問いかけた後、決然として「でもピュアなアイデンティティなんて、いったい誰が持っているの?」と叫ぶ。シルヴィアの皮肉とユーモアのセンスは実にシャープだった。日本人にも共通する様々な問題を鋭角に切り取っており、ぜひ日本に招聘して欲しい。 本来「恥」とは、極めて個人的な感情である。にもかかわらず、ときに公的な力によって強制されてしまう。それはイタリア政府から一方的に「恥」と見なされたマテーラの歴史とも重なる。価値の基準を自分の中に持ち続けることの大切さをあらためて思った。第55回 「恥」がテーマのフェス、マテーラへ 「南イタリアの悪夢」「イタリアの恥」と言われた町、マテーラへ行ってきた。長靴形をしたイタリアの、土踏まずの部分にあたる町だ。有史以前から人々が住み着き、岩を掘った洞窟住居が今も残っている(岩=サッソの複数形でサッシという)。栄えた時期もあったがスラム化し、近代に入っても電気・ガス・上下水道といった最低のライフラインも皆無なまま。ロバなどの家畜も家の中に同居(暖房代わりにもなる)する貧困の極みだが、1950年代でも多くの人が洞窟住居に住んでいたのだ。これを「恥」としたイタリア政府は52年に法律を作り、15年かけて住民を強制退去させ、一帯は廃墟となった。しかしその歴史的な建物群はパゾリーニの『奇跡の丘』など多くの映画のロケ地になり、再評価する声が高まった。人々も徐々に戻り、政府も強制退去させた罪滅ぼしに帰郷支援した。93年には世界文化遺産に登録され、いまではイタリアが誇る人気の観光スポットに変貌を遂げたのである。2019年度の欧州文化首都に選ばれ、「恥」をテーマにしたイベントが開催された。ディレクターのフランコ・ウンガロがEU・ジャパンフェストの招きで日本にリサーチに来た時に、オレは「日本の身体文化における恥の概念」についてレクチャーし、今回の招聘につながったのである。 目玉はイタリアを代表する振付家シルヴィア・グリバウディによる『ヒューマン・シェイム』というダンス作品である。会場はなんと150人の囚人を収容しているガチの刑務所内の一室。事前にパスポートで申請し、入り口では鞄とスマホを預け、刑務所の奥へ奥へと進んでいく。 ワークショップで選ばれたイタリア、マケドニア、コソボ、日本(田代絵麻)それぞれのパフォーマーが「恥」をテーマにハイテンションで語り続け、踊る。むき出しの蛍光灯に囲まれ、胸にガムテープを貼っProleのりこしたかお/作家・ヤサぐれ舞踊評論家。『コンテンポラリー・ダンス徹底ガイドHYPER』『ダンス・バイブル』など日本で最も多くコンテンポラリー・ダンスの本を出版している。うまい酒と良いダンスのため世界を巡る。http://www.nori54.com/乗越たかお

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