eぶらあぼ 2019.5月号
165/199

162CDCDCDマーラー交響曲第8番「千人の交響曲」/小泉和裕&九響片山敬子 プレイズ シューマン、ベートーヴェン、ショパンブラス・ジャーニー/東京メトロポリタン・ブラス・クインテットショパン:ピアノ協奏曲第1番・第2番/リシャール=アムラン&モントリオール響マーラー:交響曲第8番「千人の交響曲」小泉和裕(指揮) 並河寿美 大隅智佳子 吉原圭子(以上ソプラノ) 加納悦子 池田香織(以上アルト) 望月哲也(テノール) 小森輝彦(バリトン) 久保和範(バス) 九響合唱団 他 九州交響楽団シューマン:アラベスクベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第4番ショパン:24の前奏曲片山敬子(ピアノ)バッハ:イタリア協奏曲より第3楽章/ヘンデル:サラバンド、私を泣かせてください/ミラー:金管五重奏曲/チャップリン:スマイル/クルー&ゴーディオ:君の瞳に恋してる 他東京メトロポリタン・ブラス・クインテット【高橋敦 中山隆崇(以上トランペット) 小田桐寛之(トロンボーン) 佐藤潔(テューバ) 西條貴人(ホルン)】ショパン:ピアノ協奏曲第1番・第2番シャルル・リシャール=アムラン(ピアノ)ケント・ナガノ(指揮)モントリオール交響楽団収録:2018年9月、アクロス福岡シンフォニーホール(ライヴ)フォンテックFOCD9805 ¥2400+税ナミ・レコードWWCC-7893 ¥2500+税オクタヴィア・レコードOVCC-00148 ¥3000+税収録:2018年10月、モントリオール(ライヴ)ANALEKTA/東京エムプラスPAN29146 ¥2857+税九響創立65周年を記念した定期公演のライヴ録音。2013年から音楽監督を務める小泉のもと、日本を代表する歌手と福岡の合唱団が多数参加して繰り広げた、「千人」の九州初演奏という、モニュメンタルな公演の記録である。だが演奏は祝祭イベントのレベルを超えている。まずは全体の設計が見事。そしてこうした機会特有の熱気や高揚感は十分に保ちながら、細部まで息づいた精緻な音楽が展開される。終始絶叫型の第1部のこまやかな抑揚も光るし、得てして弛緩しがちな第2部前半の雄弁な表現はとりわけ賞賛に値する。終結へ向かう場面は無条件に感動的。(柴田克彦)ライナー筆者の「改めて演奏とは何かを考えさせられた」という言葉を噛みしめる。半世紀近い活動で自らの音楽を深め続けるピアノの名匠、片山敬子の練達の技が詰まった新譜。肩肘張らずとも十分な質感があり、精妙な和声感と流麗な流れで、ベートーヴェンがあたかもシューベルトのように響く。ショパンも力みの抜けた歌と淡いロマンが、メンデルスゾーンやシューマンさえ思わせる。いずれも“〜らしさ”という固定観念が心地よく覆るような説得力。無理のないタッチから自ずと詩情が立ちのぼり、曲の清新な美しさだけが心に響いてくる。今こそ聴かれるべき至芸。(林 昌英)都響の精鋭5名から成る東京メトロポリタン・ブラス・クインテットの新譜タイトルは『ブラス・ジャーニー』。“大陸”ドイツのバッハ「イタリア協奏曲」から始まり、同時代のもう1人の巨匠ヘンデルで海を越えイギリスへ。マルコム・ベネット作品を経て「ロンドンデリーの歌」でアイルランドへ足を伸ばした後は大西洋を渡ってアメリカへ。ルイス・ミラーから黒人霊歌、フォー・シーズンズのフランキー・ヴァリによる大ヒット曲「君の瞳に恋してる」まで、この「ジャーニー」は地理的な旅であると同時に多彩な音楽への「ジャーニー」でもあるだろう。演奏・アレンジも実に秀逸、楽しい1枚! (藤原 聡)2015年ショパンコンクール第2位、モントリオール生まれのリシャール=アムランが、モントリオール交響楽団、同楽団音楽監督のケント・ナガノと行ったショパン録音。コンクールでも演奏した協奏曲第2番は繰り返し弾いているレパートリーだけに、各場面のコントラストが大胆で息遣いも自然。切々と語りかける1楽章、遅めのテンポでゆったり歌う2楽章、生き生きとしたマズルカの表現がスパイスとなる3楽章へと続く。第1番は、感情を解き放つ場面もどこか落ち着きがあって心地よく、オーケストラがその自由な抑揚に寄り添う。持ち味の優しく包容力あるピアノの音を存分に聴くことができる。(高坂はる香)CD

元のページ  ../index.html#165

このブックを見る