eぶらあぼ 2019.5月号
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160CDCDCDラフマニノフ:交響曲第2番/ノット&東響シューマン:ピアノ・ソナタ第3番/古ふるみ海行やすこ子牧神の午後への前奏曲~フルート・アンサンブルの愉しみ~/工藤重典シューベルト:フォルテピアノによる4手連弾作品全集 第1巻 エキゾティシズムと対位法/山名敏之・山名朋子ラフマニノフ:交響曲第2番ジョナサン・ノット(指揮)東京交響楽団シューマン:ピアノ・ソナタ第3番/リスト:超絶技巧練習曲第5番「鬼火」/大澤壽人:てまりうたロンド(世界初録音)古海行子(ピアノ)ドビュッシー:牧神の午後への前奏曲/ハイドン:ロンドン・トリオ第4番/モーツァルト:アンダンテ ト長調(K.448より)/ボワモルティエ:5本のフルートのための協奏曲 op.15-1/ドップラー:アンダンテとロンド/ハチャトゥリアン:剣の舞 他工藤重典(フルート/指揮)アンドラシュ・アドリアン(フルート) 他シューベルト:ハンガリー風ディヴェルティスマンD818、6つのポロネーズD824より、英雄的大行進曲D885、創作主題による8つの変奏曲D813、幻想曲D940、幻想曲(大ソナタ)D48、フーガD952 他山名敏之 山名朋子(以上フォルテピアノ)収録:2018年11月、サントリーホール(ライヴ)オクタヴィア・レコードOVCL-00691 ¥3200+税日本コロムビアCOCQ-85450 ¥2000+税収録:2018年6月、Hakuju Hall(ライヴ) 他マイスター・ミュージックMM-4053 ¥3000+税コジマ録音ALCD-9192,9193(2枚組) ¥3400+税10年以上にわたる音楽監督任期延長が発表されたとき、ノットはキャリアの一番脂の乗った時期を東響と共に築こうとしているのだな、と思った。東響も熱意に応え、ノットが得意とする現代ものやドイツもので心に残る多くの成果を挙げた。いま、彼らはそこから踏み出して、広大なレパートリーを渉猟しようとしている。このラフマニノフをその狼煙と聴いた。たっぷりとしたサウンドが滔々とした流れを生む第1楽章や、むせ返るロマンを感じさせる第3楽章。第2楽章はパンチが効いていて、フィナーレは明るく輝かしい。どこにも力みがなく、細部まで整えられている。黄金時代到来を感じさせる快演だ。(江藤光紀)新コンセプトで若手を紹介するOpus Oneレーベルの初回発売5点中の1枚。昭和音大在学中ながら、2018年高松国際ピアノコンクールで日本人初優勝を果たした古海のデビュー盤である。同コンクールで弾いたというシューマンのソナタ第3番の明るく伸びやかで活気あふれる演奏が、まずは魅力充分。リストの難曲「鬼火」も軽やかな運びで聴く者の胸を弾ませる。大澤壽人の「てまりうたロンド」は1943年作の世界初録音。これもアルバムの流れの中でごく自然に聴かせる。しなやかに表現される音楽が心地よさを与えてくれる、楽しみな俊英の登場。 (柴田克彦)工藤重典が定期的に開催するフルート・アンサンブル。彼のソロを聴けるのはもちろん、彼を慕う奏者たちがその芸術を継承していく場でもあり、寄せ集めではない練られたアンサンブルが聴ける。表題曲はフルート合奏になると妖艶さよりも快い美しさを味わえて新鮮。もとよりフルートの響きと相性が良い古典作品は、この楽器ならではの典雅な美を楽しめる。共にランパルの薫陶を受けた工藤とアドリアンによるドップラーのデュオ作品は、二人の世界的名手の手腕と歌心が聴きもので、曲を知り尽くした合奏メンバーの共感も深い。「剣の舞」は毒気が抜けてなんとも微笑ましい。(林 昌英)連弾作品はシューベルトの作品の中でも重要な位置を占めるものであるにも関わらず、作品の音楽的な特徴、込められた意味といったものを筆者は見過ごしていた。特にこれだけ緻密に対位法が駆使されていたということには非常に驚かされた。また、フォルテピアノだからこそできる表現というものも、山名夫妻の演奏を聴くことで納得である。動機の関連性、構造の美しさが、こだわった音色の重なり合い、やりとりによって鮮やかに表現されている。特に名曲「幻想曲へ短調D940」は、構築美が明瞭に示されることで、作品に込められたシューベルトの苦悩が一層鮮やかに伝わってきた。(長井進之介)SACD
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