eぶらあぼ 2019.5月号
161/199

158CDCDCD王のパヴァーヌ/平尾雅子オッフェンバックでコロラトゥーラ~喜歌劇の技巧的名歌集~/ジョディ・ドヴォショパン:バラード第1番、24の前奏曲/牛田智大ベートーヴェン:交響曲第7番/春口巌&ヴィエナ・インストゥルメンツ作者不詳:王のパヴァーヌ/ナルバエス:皇帝の歌(千々の悲しみ)/カベソン:「騎士の歌」によるディフェレンシャス 他平尾雅子 櫻井茂(以上ヴィオラ・ダ・ガンバ) 上杉清仁(カウンターテナー) 古橋潤一(リコーダー 他) 永田平八(リュート、ビウエラ) 能登伊津子(ダブルハープ、オルガン) 上尾直毅(スピネット、ミュゼット、ギター) 神田佳子(パーカッション)オッフェンバック:喜歌劇《雪だるま》、《地獄のオルフェ(天国と地獄)》、《ファンタジオ》、《月世界旅行》、歌劇《ホフマン物語》より 他ジョディ・ドヴォ(ソプラノ)ローラン・カンペローネ(指揮)ミュンヘン放送管弦楽団アデル・シャルヴェ(メゾソプラノ)ショパン:バラード第1番、24の前奏曲牛田智大(ピアノ)ベートーヴェン:交響曲第7番春口巌(プログラミング)ヴィエナ・インストゥルメンツマイスター・ミュージックMH-4054 ¥3000+税Alpha/ナクソス・ジャパンNYCX-10039 ¥2700+税ユニバーサル ミュージックUCCY-1096 ¥3000+税ディスク クラシカ ジャパンDCJA-21042 ¥2000+税古楽の演奏には、技術や資料研究だけでなく、想像力も不可欠。その点で、日本人にとっては、鎖国前の時代にキリスト教と共に伝来し、鳴り響いたであろう、後期ルネサンス音楽は特に魅力的。では、織田信長の御前演奏があったとしたら、どんな音の宴が繰り広げられたのか。ヴィオラ・ダ・ガンバの第一人者、平尾雅子の構成のもと、国際的に活躍する8人の日本人奏者が結集。選曲から楽器編成、解釈に至るまで、想像の翼を広げ、時にロックのグルーヴ感、時に邦楽に通じる侘び寂びの雰囲気を交えつつ、時空を超えた旅へと誘う。2004年録音盤の高音質リマスター。 (笹田和人)「シャンゼリゼのモーツァルト」と称されたフランス・オペレッタの開祖オッフェンバックの生誕200年記念盤。その知られざる膨大な作品群から超絶技巧が際立つアリアを厳選して、ベルギー出身の若きソプラノが艶やかに紡ぎ出す。有名な《ホフマン物語》の機械人形オランピアの歌のような、装飾音型を凝らしためくるめく曲も盛り沢山(特に《月世界旅行》のお姫様が歌う〈ムズムズするの〉が楽しい!)だが、《天国と地獄》の〈死神は笑顔で現れる〉や《ファンタジオ》のエルスベート姫のロマンスなど、派手さ控えめの甘美な曲も魅力的。詳細な解説と対訳が嬉しい。(東端哲也)昨年浜松国際ピアノコンクール第2位という快挙を成し遂げた牛田が挑んだのは、ショパンの“魂”が詰まった作品である難曲「前奏曲集」。ピアニストとして更に高いステージに立った彼の芸術性が存分に発揮されたものとなっている。凛とした佇まいを感じさせる透明感のある音色は曲の進行とともに多彩な表情を見せ、一曲ごとに美しい詩を読んだ時のような感動に包まれる。カップリングの「バラード第1番」は、練り上げられたフレージングによって、壮大な物語が語られるように音楽が展開。緩急のバランスも見事で、感動的なドラマが決して大仰になることなく紡ぎ出されている。(長井進之介)大量の音素材をサンプリングしたソフトを駆使し、一つひとつの音に表情を付け、バランスを調整し…と気の遠くなる作業を経て作られた「ベト7」。リアルなオケとの違いはまだ分かるけれど、この曲の爆発的なエネルギーを表現したいという春口の意図もきちんと伝わってきた。「原理的には誰もが指揮者になれる」とか、「AIを導入すればもっと手軽にできるのでは」とか、「音楽のコストの問題が解決されるかも」とか、「でも音楽家の食い扶持はどうなる!?」などなど、この試みの持つ可能性や問題提起が、ベートーヴェンのパワーに押されながらぐるぐると頭を巡る。刺激的な聴取体験だ。(江藤光紀)CD

元のページ  ../index.html#161

このブックを見る