eぶらあぼ 2019.4月号
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79トリフォニーホール・グレイト・ピアニスト・シリーズピョートル・アンデルシェフスキ ピアノ・リサイタルピアニスト人生の節目を彩ってきた変奏曲にいま再び対峙する文:江藤光紀6/4(火)19:00 すみだトリフォニーホール問 トリフォニーホールチケットセンター03-5608-1212 https://www.triphony.com/ 知的な顔立ちそのままに安定感のある演奏で多くの聴衆を魅了してきたピョートル・アンデルシェフスキ。デビュー当時まだあどけなさの残る20歳そこそこだった青年も、今年で50歳を迎える。節目の年のツアーに彼がメインに選んだのが、ベートーヴェンの「ディアベリ変奏曲」だ。 実はこれ、アンデルシェフスキのキャリアにとって切っても切れない曲だ。「ディアベリ」はベートーヴェンの後期作品の中でもとりわけ謎めいた曲だが、彼は1990年のリーズ国際コンクール予選で、いきなり同作品を選び話題を呼んだ(本選は棄権)。2000年にエラートと専属契約を結び最初に録音したのも「ディアベリ」で、数々の賞に輝いた。この時、名監督ブルーノ・モンサンジョンと組んだ最初のドキュメンタリー映画も作っている。まさに勝負曲なのである。「ディアベリ」の何が彼のピアニスト魂を刺激するのだろうか? 楽譜出版業を営んでいたディアベリの作った主題は、いわゆる通常のメロディーと伴奏という形ではなく、小さな動機の組み合わせのようになっている。この主題をベートーヴェンは細部を拡大したり、変容させたりと徹底的に分解・敷衍し、1時間近くもかかる33の変奏曲を書き上げた。変奏の概念を根底から覆したのである。 若きアンデルシェフスキは主題の痕跡を追い、要素がどこに隠れ、どう加工されているかを分析することに熱中したのだろう。作曲時ベートーヴェンは50代前半だったが、その年代にさしかかったアンデルシェフスキは、今、何を思い、その指先はどんな「ディアベリ」を紡ぎだすのだろうか。©Simon FowlerアルカスSASEBO Mプロジェクト2019多様なアプローチでメンデルスゾーンの芸術性を浮き彫りに文:笹田和人会場:佐世保/アルカスSASEBO 問 アルカスSASEBO 0956-42-1111※「アルカスSASEBO Mプロジェクト2019」の詳細は下記ウェブサイトでご確認ください。http://www.arkas.or.jp/ 「Mプロジェクト」とは、年間を通じて1人の作曲家をテーマに据え、様々なステージで同じ作曲家の作品を取り上げる中から、その音楽性のみならず、人間像を掘り下げてゆく、佐世保のホール、アルカスSASEBOのオリジナル企画。4年目となる2019年度は、生誕210周年を迎える夭折の天才・メンデルスゾーンにスポットを当てる。 シリーズ全11ステージの中でも、特に注目のひとつは、創立から60余年、わが国を代表するプロ声楽家集団として活躍を続ける東京混声合唱団の特別公演(6/9 大ホール)。音楽監督の山田和樹の指揮、福間洸太朗のピアノで、メンデルスゾーンの合唱の名曲の中から「三つの民謡」を。ここへ、「この道」「手紙」ほか、合唱に編曲された古今の日本の名曲を共鳴させる。 また、第1ヴァイオリンの川崎洋介はじめ、国内外の一線楽団の首席級で組織された、レジデンス(座付き)弦楽四重奏団「アルカス・クァルテット」が、第9回定期を開催(7/20 中ホール)。メンデルスゾーンの第5番を軸に、ヴィクトル・ウルマンとフィリップ・グラスの第3番、バーバー「アダージョ」やガーシュウィン「子守歌」など近現代の作品を組み合わせ、ユダヤ民族が生み出した、特有の美学を浮き彫りに。 秋には、常任指揮者の広上淳一に率いられ、関西の精鋭・京都市交響楽団が来演(9/8 大ホール)。人気ヴァイオリニストの古澤巌を迎えてのメンデルスゾーンの名協奏曲ほかを披露する。そして、ベルリン・フィルに史上最年少の17歳で入団した、敏腕コントラバス奏者、エディクソン・ルイースのリサイタルにも期待したい(9/29 中ホール)。来年2月には、ヴァイオリニストの豊嶋泰嗣を音楽監督に、名手が集結したホール独自の室内楽団「チェンバー・ソロイスツ・佐世保」も登場(2020.2/23 中ホール)。鮮烈なサウンドで、シリーズを締め括る。左より:山田和樹 ©Yoshinori Tsuru/アルカス・クァルテット/広上淳一 ©Greg Sailor/古澤 巌/エディクソン・ルイース/豊嶋泰嗣

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