eぶらあぼ 2019.4月号
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74Nコン2019 全日本合唱コン × 東混これぞ最高の手本なり!文:宮本 明5/20(月)19:00 東京文化会館問 東京混声合唱団事務局03-3200-9755 http://toukon1956.com/ 老舗プロ合唱団・東京混声合唱団(東混)がNHK全国学校音楽コンクールと全日本合唱コンクールの課題曲を歌う「Nコン2019 全日本合唱コン × 東混」。指揮は音楽監督の山田和樹。山田が掲げる「アマチュアを含めた合唱界全体のオピニオン・リーダーになりたい」という目標の一環だ。リハーサル期間を通常より長く設け、しかも中高生と同じように暗譜で臨むという本気モード(けっして暗譜自体が尊いわけではないけれど)。課題曲レベルの難易度の合唱曲を、世界屈指の実力の東混が丁寧に作り込めば鬼に金棒。東混にとっても新しいチャレンジだ。 「Nコン」の課題曲は、中学校の部が人気ガールズバンド「SHISHAMO」の宮崎朝子作詞・作曲「君の隣にいたいから」(加藤昌則編)。高校の部は映画『モテキ』コンビで、映画プロデューサー川村元気作詞、岩崎太整作曲の「僕が僕を見ている」(横山潤子編)。「全日本」のほうは複数の課題曲からの選択制。課題曲のための公募作曲コンクール「朝日作曲賞」により選ばれた「雪」(混声)の作曲者・川浦義広がゲスト出演する。 歴代の課題曲数曲のほか、東混レジデントアーティスト信長貴富作曲の「くちびるに歌を」を、客席から上がって一緒に歌える「スペシャル・ステージ」も(要事前申込)。東混のソリッドでタイトなハーモニーを身をもって体験する大チャンス! 客席を使ったシアターピースなど東混の十八番が聴ける「プレコンサート」(18:30スタート)もうれしい。山田和樹(中央)&東京混声合唱団 ©Taira Tairadate大野和士(指揮) 東京都交響楽団新シーズンは抒情とロマンに満ちた20世紀作品で開幕文:飯尾洋一第877回 定期演奏会Bシリーズ 4/26(金)19:00 サントリーホール問 都響ガイド0570-056-057 https://www.tmso.or.jp/ 大野和士音楽監督のもと、次々と意欲的なプログラムを披露する東京都交響楽団。4月の第877回定期演奏会Bシリーズでは、武満徹の「鳥は星形の庭に降りる」、シベリウスの交響曲第6番、ラフマニノフの交響的舞曲という3曲の20世紀作品をとりあげる。 前半の武満とシベリウスの作品は、清冽な抒情性や透明感のあるテクスチャーが共通項といえるだろうか。「鳥は星形の庭に降りる」の題は武満が見た夢に由来する。「無数の白い鳥が星形の庭に向かって降りていく。そのなかに一羽いた黒い鳥が群れをリードしていた」というイメージがオーケストラ作品として昇華されている。一方、シベリウスが交響曲第6番について述べたのは、「他の作曲家たちは色鮮やかなカクテル作りに夢中だが、私は一杯の清らかな水を提供する」という一言。時代の趨勢に左右されず、わが道を行くシベリウスならではの表現だが、どこか武満作品とも一脈通じるようなところも。 後半のラフマニノフの交響的舞曲は晩年の大傑作。持ち前の豊かなロマンティシズムに、アメリカ時代に身につけた輝かしく壮麗なオーケストレーションが融合して、独創的な作品が生まれた。過去の自作からの引用があったり、ラフマニノフがたびたび用いたグレゴリオ聖歌「怒りの日」の旋律が使われるなど、まさに集大成的な作品であり、事実、これがラフマニノフの最後の作品となった。大野和士と都響のコンビが、華麗なサウンドを堪能させてくれることだろう。大野和士 ©Herbie Yamaguchi

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