eぶらあぼ 2019.4月号
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714/23(火)19:00 東京オペラシティ リサイタルホール問 東京オペラシティチケットセンター  03-5353-9999https://www.operacity.jp/東京オペラシティ Bビートゥーシー→C 茨木智博(オカリナ)楽器のイメージを覆す表現力と超絶技巧文:小室敬幸©Akita Daisuke/Universal Music オカリナをアマチュアの趣味やヒーリング音楽で吹かれる楽器だと思っている人ほど、この演奏会に衝撃を受けることになるだろう。20年以上の歴史をもつ「B→C」シリーズにオカリナ奏者が初登場。茨木智博の演奏を聴けば、誰もがその表現力と可能性に驚かざるを得ないはず。なんてったってモーツァルトのオーボエ協奏曲を全楽章、何の違和感なく吹ききってしまう腕前なのだから。清廉な響きはリコーダーにも近いが、音色も豊かで、いくつかのオカリナを組み合わせたような複数管オカリナの場合、音域はフルートに匹敵する。 今回のリサイタルでも、バッハの管弦楽組曲第2番やジョリヴェの協奏曲、更には武満徹の遺作「エア」まで、フルートのために書かれた多様な音楽が披露される。もちろん、オカリナのオリジナル作品も充実。テレビや映画の音楽でお馴染みの山下康介によるモダンな楽曲に、美しい和声感をもつ伊左治直や山中千佳子に委嘱された新作も楽しみだ。共演は森浩司(ピアノ)と関聡(パーカッション)。「B→C」にとっても新たな挑戦となる刺激的な一夜をお聴き逃しなく。4/19(金)18:45 名古屋/ドルチェ・アートホール、4/20(土)14:00 ヤマハホール問 プロアルテムジケ03-3943-6677https://www.proarte.jp/デヴィット・ザイデル ファゴット コンサート2019ファゴットの“魔法”にかかってみる?文:笹田和人©Nancy Horowiz デヴィット・ザイデルは、魔法使いかもしれない。ファゴットという“杖”を使って、魅惑の音色を紡ぎ出し、皆を虜にしてしまうのだから。オーストリア・ザルツブルク出身。1998年にウィーン放送交響楽団へ入団し、2004年からは首席奏者に。変幻自在の音色を操る名手として、ウィーン・フィルやミュンヘン・フィルなどにも客演、主要室内楽アンサンブルのメンバーとしても妙技を披露している。 前半は、ピアノの宇根美沙惠が共演。“テッパンの名曲”とも言うべきシューマン「幻想小曲集」を、デュティユー「サラバンドとコルテージュ」とエロード「ソナタ・ミラネーゼ」、2つの20世紀の佳品で挟み込む。 そして、都響の岡本正之と新日本フィルの河村幹子、2人の首席奏者をはじめ、5人のファゴットの名手を迎えての後半。18世紀のミシェル・コレットによる4つのファゴットのための協奏曲「不死鳥」や、19世紀のカスティル=ブラーゼ「三重奏曲第3番」とフランスの傑作に、ロッシーニ《ウィリアム・テル》序曲と多彩なプログラムを披露する。5/17(金)~5/19(日) 三軒茶屋/サロン・テッセラ問 オーパス・ワン042-313-3213※音楽祭の詳細は下記ウェブサイトでご確認ください。https://www.atarashii-mimi.com/新しい耳 第24回 テッセラの春 音楽祭ユニークで新鮮な“歌”を並べて魅了する文:伊藤制子中川賢一 ©Shuhei NEZU ピアニストの廻由美子が主宰する「新しい耳 テッセラの春 音楽祭」も第24回を迎える。5月17日の第1夜(19:00開演)では、バリトンの松平敬とピアノの中川賢一という現代音楽のスペシャリストの共演で、シューマンとR.シュトラウスから成るドイツ・ロマン派プログラムが組まれた。シューマン作品では、「不思議な角笛を持った少年」「夜の歌」など、演奏機会は多くはないが、味わいのある歌曲が並んだ。シュトラウスからは、テニスンの名作に基づく1897年作曲の長大なメロドラマ「イノック・アーデン」が取り上げられる。原田宗典の日本語訳による朗読とピアノという編成で、3人の男女がつむぐ抒情的な愛の物語である。船乗りイノック・アーデンはアニーと結婚し、幸せに暮らしていたが、船が難破しひとり漂流生活へ。悲嘆にくれるアニーに手を差し伸べたのが粉屋フィリップ。そして10年後、3人の運命は…。松平の巧みな語りで、歌曲、オペラ作曲家シュトラウスのひと味違う側面に光が当たることだろう。松平 敬 ©石塚潤一

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