eぶらあぼ 2019.4月号
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64堀 正文 70th Anniversary Concert名奏者を寿ぐ最高にゴージャスなステージ文:山田治生5/19(日)15:00 サントリーホール問 MIYAZAWA&Co. 03-4360-5102 http://miy-com.co.jp/ 長年にわたってNHK交響楽団のソロ・コンサートマスターとして活躍した堀正文の古希(70歳)を祝うコンサートがサントリーホールで開催される。富山県出身の堀は、京都市立堀川高校音楽科卒業後、ドイツに渡る。フライブルク音楽大学を卒業し、ダルムシュタット国立歌劇場管弦楽団のコンサートマスターを経て、1979年から2015年までN響のコンサートマスターの重責を担った。また、教育活動にも熱心に取り組み、現在も桐朋学園大学教授として後進の指導にあたっている。 今回のコンサートでは、日本の音楽界を牽引してきた実力派ヴァイオリニストであり、名教師である堀のために、N響メンバーのほか、ヴァイオリンの諏訪内晶子、漆原啓子、澤和樹、四方恭子、豊嶋泰嗣、松田理奈、ヴィオラの篠﨑友美、チェロの上村昇、辻本玲、藤原真理、ハープの吉野直子、ピアノの仲道郁代、清水和音、指揮の山下一史ら総勢約90名が集う。 3部構成で15時スタート、19時終演予定というボリュームも魅力。クライスラーのヴァイオリン小品から、ドヴォルザークのピアノ五重奏曲、メンデルスゾーンの弦楽八重奏曲、バッハの2つのヴァイオリンのための協奏曲、メンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲、モーツァルトの交響曲第41番「ジュピター」(それぞれ1つの楽章)まで、多彩なプログラムを披露する。堀本人だけでなく、聴き手にとっても千載一遇の豪華なコンサートといえよう。©Shigeto Imuraジョナサン・ノット(指揮) 東京交響楽団ベートーヴェンと現代作品がノットのタクトで交錯する文:江藤光紀東京オペラシティシリーズ 第109回5/18(土)14:00 東京オペラシティ コンサートホール問 TOKYO SYMPHONY チケットセンター044-520-1511 http://tokyosymphony.jp/ 音楽監督ジョナサン・ノットが登場する5月の東京交響楽団東京オペラシティシリーズは、現代音楽とベートーヴェンを組み合わせたプログラム。 ノットは2000年から3年間にわたり現代音楽の専門団体アンサンブル・アンテルコンタンポランの音楽監督を務めたが、世界最先端を走るこのグループを創設したのが、作曲家=指揮者として活躍したピエール・ブーレーズ。彼の「メモリアル」で演奏会を始めるのは、3年前に没したこの巨匠を追悼するためであろう。フルート独奏とホルン、弦楽器が繊細に絡み合う「メモリアル」は度重なる加筆・改訂を経て、管弦楽と電子音が協奏するブーレーズの代表作「…爆発的-固定的…オリジナル」へと発展していく。その点でも重要な作品だ。フルート独奏は東響首席奏者の相澤政宏。 実質的にチェロ協奏曲であるヤン・ロビンの「クォーク」(16年初演)は、ミクロな世界の響きが宇宙空間のように広がり聴き手を包む。ロビンもまたアンサンブル・アンテルコンタンポランを傘下に持つIRCAMで学んだ。初演を務めた同アンサンブルのチェロ奏者エリック・マリア・クテュリエが、特殊奏法が続出する独奏パートを担う。ノットのフレンチ・コネクションが実現した“今、一押し”の逸品だ。 後半はベートーヴェンの交響曲第7番。すでに5、6、3、4番を演奏、年末には「第九」も予定されるなど、ノットと東響はベートーヴェンを着実に制覇しつつある。ところでベートーヴェンこそ作品ごとに革新をもたらした作曲家。現代の作品によって研ぎ澄まされた感性で接すれば、リズム主題を執拗に繰り返す「第7」の先鋭性にも気づかされるはずだ。相澤政宏 ©Naoya Ikegamiエリック・マリア・クテュリエ©Marco Borggreveジョナサン・ノット©K.Miura
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