eぶらあぼ 2019.4月号
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184CDSACDCDCDブルックナー:交響曲第9番/上岡敏之&新日本フィルベートーヴェン:弦楽四重奏曲第14番・第16番/エルデーディ弦楽四重奏団ポーランドの歌 ショパン・チェロ作品集/桑田歩シュトラウス&フランク/瀬﨑明日香&エマニュエル・シュトロッセブルックナー:交響曲第9番(ハース/オーレル版)上岡敏之(指揮)新日本フィルハーモニー交響楽団ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第14番・第16番エルデーディ弦楽四重奏団【蒲生克郷 花崎淳生(以上vn) 桐山建志va 花崎薫vc】ショパン:ポーランドの歌(桑田歩編)、チェロ・ソナタ、序奏と華麗なるポロネーズ、ショパン&フランショーム:マイヤベーアの歌劇《悪魔のロベール》の主題による協奏的大二重奏曲桑田歩(チェロ)尾崎未空(ピアノ)R.シュトラウス:ヴァイオリン・ソナタフランク:同瀬﨑明日香(ヴァイオリン)エマニュエル・シュトロッセ(ピアノ)収録:2018年10月、サントリーホール、横浜みなとみらいホール(ライヴ)オクタヴィア・レコードOVCL-00683 ¥3200+税コジマ録音ALCD-1181 ¥2800+税マイスター・ミュージックMM-4051 ¥3000+税VIRTUS CLASSICS/ナクソス・ジャパンVTS-007 ¥2800+税上岡&新日本フィルのCD第6弾にして、コンビ初のブルックナー録音。上岡は、終始内側を見つめ、あらゆるフレーズに光を当てながら、じっくりと歩を進めていく。冒頭から様々な動きが息づいており、第2楽章中間部のフルートのオブリガードの煌めき等が耳を奪う。第3楽章はもはや永遠に終わらない音楽であるかのよう。ゲネラルパウゼも恐ろしく長い。しかし弛緩することはなく、楽曲の広大な宇宙と神秘的な深みが、奥底から滲み出るように表現されている。実演を聴いた際には感知できなかった様々な発見に驚かされる、上岡ならではのブルックナーの世界。(柴田克彦)ギラギラしすぎず枯れすぎず、ちょうどいい渋み。結成30年を迎えたエルデーディ弦楽四重奏団が取り組むベートーヴェン後期作品集。持ち前の澄んだ響きで、特別な傑作群にも自然体で臨みつつ、深い敬意と理解が伝わるような、円熟のアンサンブルを聴かせる。推進力があり瑞々しさを失わない演奏で、後期作品を聴く際に見逃しがちな古典性にも気づかされる。孤高の境地である14番であっても、深い神秘性と同時に親密さや軽妙さも感じさせてくれるのは貴重。謎めいた遊び心に満ちた16番は、名人たちの交歓という趣が心地よく、それがそのまま作品の魅力につながっていく。(林 昌英)NHK交響楽団の首席代行奏者を務めつつ、同楽団のチェリスト4人からなるラ・クァルティーナのメンバーとしても活躍中の桑田歩が、若き閨秀・尾崎未空の好サポートを得て録音したショパン集。リストによるピアノ独奏版でも名高い「悲しい河」など歌曲5曲を自ら編曲して導入部とし、ショパンが残した5つの室内楽曲のうち、チェロとピアノのために書かれた3曲をコンプリート。ショパンが知遇を得た当時のチェロの名手フランショームと初演した「ト短調ソナタ」や「協奏的大二重奏曲」も見事だが「序奏と華麗なるポロネーズ」が醸す高揚感が圧巻。(東端哲也)「シュトラウスが“歌”ならば、フランクは“詩”…」と、瀬﨑明日香は言う。東京藝大からパリ国立高等音楽院に学び、日本音楽コンクール優勝など、国内外の登竜門で実績を重ねた気鋭のヴァイオリニスト。前作から約10年、満を持しての録音で「自分に最も近い作品」へ対峙した。同時期に書かれながらも、全く雰囲気を異にする2曲だが、濃密なロマンティシズムに彩られている点では共通。しかし、瀬﨑は決して感情のままに押し流されない。艶やかな美音に一筋、凛とした覇気を漲らせ、大胆かつ繊細に歌と詩を織り上げる。共演するピアノのシュトロッセも、そんな彼女の感性へそっと寄り添う。(笹田和人)

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