eぶらあぼ 2019.3月号
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72片岡綾乃 パーカッション・リサイタル ConText ̶観・そして・感̶ vol.3 “Decade”5/23(木)19:00 東京オペラシティ リサイタルホール問 イチマルマルニ03-3264-0244 https://www.1002.co.jp/片岡綾乃(パーカッション)現代パーカッション作品はかくも多彩なり取材・文:宮本 明Interview アメリカを拠点とする打楽器奏者・片岡綾乃が、日本ではおよそ10年ぶりのリサイタルを開く。「ConText─観・そして・感─」と銘打ったシリーズの3回目。「context」は「文脈、前後関係」であり、その語源「con text」の「織り込む」という意味にも惹かれたという。そして視覚的に観て、感じて。 「パーカッションというイメージの枠にとらわれずに楽しんでいただきたい」という言葉のとおり、いきなり枠の外から変化球が飛んでくる。マーク・アップルバウムの『アフェイジア(失語症)』(2010)は、奏者は一音も発しないジェスチャーのための作品。細かく指定されたサインの中には日本の特撮ヒーローのポーズも登場する。 日本初演となる〈樹 風 メタル〉(2016)は、アレハンドロ・ヴィニャオの作品。コンロン・ナンカロウの自動ピアノ作品などにも影響を受けているという作曲家で、「リズムが変わってゆくなかでの移ろいが非常に精巧に書かれている」という。 マウリシオ・カーゲルは、片岡にとって重要な作曲家。カーゲルの「ミュージック・シアター」の概念が、彼女の「ConText」のコンセプトと呼応するようだ。演奏する〈ノイズ・アート〉(1994~95)は、フラメンコのカスタネットや中東のダラブッカなど、世界の打楽器とそのスタイルを取り入れた作品。賛助出演としてジョシュア・ペリー(パーカッション)が参加。 「西洋のパーカッショニストがそれらを叩くときは、いわば専門外の初心者。そのギャップや違和感、ぎこちなさが作曲者の狙いだと思います」 奏者がティンパニの皮を破って飛び込む〈ティンパニ協奏曲〉など、冗談音楽のように扱われることも多いカーゲルだが、それは本意ではないはずだと力を込める。 「作曲家のコンセプトをきちんと知ったうえでの解釈とプレゼンテーションが大切。そこはしっかり押さえたい」 もう一曲の日本初演が、スティーブン・マッキーの室内協奏曲「ミクロ・コンチェルト」(1999)。 「ギタリストでもある彼の作品は、センスがよくて、おしゃれで、機知に富んでいます。フルートの小池郁江さん、チェロの古川展生さん等との共演となります」 そしてヤニス・クセナキスの〈ルボン〉(1987~89)。現代打楽器音楽の名曲だ。 「大学生の頃から長年付き合ってきたので、やるたびに、そのときの自分を知ることができる。あ、今日の私はこういうふうに感じているんだ、と。とても楽しみです」 「どれも視覚的に非常にアピールできる作品ばかり」という自信のプログラム。「現代音楽はちょっと…」という方も理屈抜きに圧倒されるはずだ。それをぜひ会場で、自分の目で。第8回 音楽大学フェスティバル・オーケストラ“炎のマエストロ”が次世代の若き才能たちを熱く導く文:長井進之介 「音楽大学オーケストラ・フェスティバル」は、首都圏の音楽大学が協力し、交流をもつことを目的に始まった企画。首都圏9つの音楽大学と2つの公共ホール(東京芸術劇場、ミューザ川崎シンフォニーホール)が連携して行っている。この特別編として、各大学の選抜メンバーによる「音楽大学フェスティバル・オーケストラ」が開催される。今回は日本を代表する指揮者であり、世界でもその名を轟かせる巨匠である「炎のコバケン」こと小林研一郎が、ベルリオーズの「序曲『ローマの謝肉祭』」に「幻想交響曲」、チャイコフスキーの「序曲『1812年』」という3/30(土)15:00 東京芸術劇場 コンサートホール問 東京芸術劇場ボックスオフィス0570-010-296 http://www.geigeki.jp/3/31(日)15:00 カルッツかわさき問 ミューザ川崎シンフォニーホール044-520-0200/カルッツかわさき044-222-5223https://www.kawasaki-sym-hall.jp/小林研一郎 ©山本倫子“十八番”のプログラムで若き才能たちを導く。“炎の”という代名詞そのままに、どこまでも熱い演奏が繰り広げられるはずだ。本公演は2016年から地方の音楽大学とも交流を図ってきており、今回は北海道と沖縄の学生も参加する。新しい風を呼び込んでくれることであろう。未来の音楽界を担う若きスターたちの演奏をぜひ輝かしいプログラムで味わってほしい。
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