eぶらあぼ 2019.3月号
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57エリアフ・インバル(指揮) 東京都交響楽団インバルの魅力全開、ショスタコ春の嵐文:林 昌英福岡特別公演 3/23(土)15:00 福岡シンフォニーホール名古屋特別公演 3/24(日)14:00 愛知県芸術劇場 コンサートホール第874回定期演奏会 Aシリーズ 3/26(火)19:00 東京文化会館問 都響ガイド0570-056-057 https://www.tmso.or.jp/ この3月、1年ぶりにエリアフ・インバルが東京都交響楽団の指揮台に立つ。常に高い機能性と誠実な演奏を誇る都響だが、長年にわたり同団を鍛え上げたインバルの登壇となると、聴衆も含めてやはり特別な空気が漂う。特に今年は福岡と名古屋でも特別公演を行うということで、広く期待が高まっている。 特別公演とA定期(3/26)の演目は、1曲目はブラームス「悲劇的序曲」、メイン曲はショスタコーヴィチの人気作、交響曲第5番。後者はスターリンの恐怖政治下で書かれ、作品の真意について様々な解釈や意見が絶えないことでも知られるが、今回はこの作曲家を殊に得意とするインバルだけに、彼ならではの質実剛健なサウンドで、その奥深い真髄を聴かせてくれるはず。 2曲目には、インバル&都響と2度目の共演となる、世界的チェリストのガブリエル・リプキンが登場。彼独特の音色と表現が楽しみだが、演目にも注目したい。A定期で選ばれたのは、スイス生まれのユダヤ人作曲家、ブロッホの代表作「シェロモ」。タイトルは、古代イスラエルを繁栄させた名君ながら、後年は享楽にふけり国を混乱に陥れた「ソロモン王」のこと。イスラエル出身のリプキンとインバルの共演で聴けるのは貴重だし、前後の曲も併せると重いメッセージが浮かぶ、意味深長なプログラムではないだろうか。一方、福岡と名古屋の2曲目はチャイコフスキーの典雅な名品「ロココ風の主題による変奏曲」。こちらはタイプの異なる名作が並び、定期とはまた違う形でコンサートの喜びを満喫できそうだ。エリアフ・インバル ©堀田力丸至高の室内楽 MOSTLY KOICHIRO vol.4弦の名匠たちが一堂に会する極上のアンサンブル文:笹田和人3/16(土)14:00 紀尾井ホール問 アスペン03-5467-0081http://www.aspen.jp/ 「今から50年前、当時の日本で最先端の音楽教育を行っていた桐朋学園で共に学んだ仲間が、これからは将来の日本を背負って立つ音楽家を育てる年齢になりました。今回は久しぶりに昔の仲間たちと室内楽の名曲を演奏します」 東京クヮルテットの第1ヴァイオリン奏者として、1970年にミュンヘン国際コンクール弦楽四重奏部門で優勝して脚光を浴び、ソリストとして世界中の檜舞台で名演を披露してきた原田幸一郎は言う。桐朋学園で学び、ジュリアード音楽院では、ドロシー・ディレイやイヴァン・ガラミアンら巨匠に師事。現在は母校・桐朋学園をはじめ、韓国国立芸大やマンハッタン音楽院で、自身が後進の指導に力を注ぐ立場になっている。 古くからの音楽仲間から俊英まで、多彩な名手たちとの共演を通じて、室内楽の達人としての原田の魅力を浮き彫りにしてゆくシリーズ「MOSTLY KOICHIRO」。その第4弾では、元NHK交響楽団コンサートマスターの徳永二男をはじめ、ヴァイオリンの池田菊衛、ヴィオラの川崎雅夫と磯村和英、チェロの岩崎洸と毛利伯郎、桐朋学園の同窓にして、国際的に活躍する名奏者が集結する。 盟友たちが奏でるのは、陽光と詩情にあふれたチャイコフスキーの「フィレンツェの想い出」と、圧巻の変奏曲を擁するブラームスの第1番、全く異なる色彩を持った、ふたつの弦楽六重奏曲の傑作。さらに、第1楽章で各パートが親密に歌い交わす様から「鳥」の愛称を持つ、ハイドンの弦楽四重奏曲第32番が披露される。極上の体験が約束できよう。徳永二男©Hikaru Hoshi池田菊衛 ©Marco Borggreve川崎雅夫磯村和英 ©Marco Borggreve岩崎 洸毛利伯郎原田幸一郎 ©堀田力丸

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