eぶらあぼ 2019.3月号
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54クリスチャン・ツィメルマン ピアノ・リサイタル満を持してショパン・スケルツォ全曲に臨む文:伊熊よし子2/28(木)19:00 サントリーホール(Aプログラム) ※完売3/5(火)19:00 東京オペラシティ コンサートホール(Bプログラム)問 ジャパン・アーツぴあ03-5774-3040※全国公演の詳細は右記ウェブサイトでご確認ください。 https://www.japanarts.co.jp/ 1975年のショパン国際ピアノ・コンクールで優勝の栄冠に輝いて以来、40年以上に及ぶ演奏活動において常に第一線で活躍を続けているピアニスト、クリスチャン・ツィメルマンは、こだわりの音楽家。自身の楽器を運び、調律にも精通し、ホールの音響にも気を配る。すべては最良の演奏を聴衆に提供するためである。そこから生まれ出る音楽は完璧なる美に貫かれ、しかも堅苦しさは微塵もない。 「私はひとつの作品をステージで演奏するまで約10年はかけます。完全に作品が自分のなかに入ってくるまで、人前では演奏しません」 以前のインタビューでこう語っていたツィメルマンがプログラムに組んだのは、ブラームスのピアノ・ソナタ第3番にショパンのスケルツォ全曲(Aプログラム)と、ショパンの「4つのマズルカ op.24」、ブラームスのピアノ・ソナタ第2番とショパンのスケルツォ全曲(Bプログラム)。満を持して登場するショパンのスケルツォ全曲とブラームスのソナタは、真摯で思慮深く、一途に作品の内奥へと没入していくツィメルマンの真骨頂となりそうだ。細部まで神経を張り巡らせた完璧なるピアニズムは、作曲家が作品に込めた美の世界へと近づき、哲学的な面にまで歩み寄ろうとする精神性の高いもの。本物のピアノを聴く至高の喜びがそこには存在する。 「子どものころから弾いている作品でも、真の意図に近づくためには膨大な時間がかかります。いま弾くべきだと思う時期がきたら、意を決してステージに乗せるのです」 ツィメルマンのピアノを聴く―それは彼から作曲家の魂を受け取ることにほかならない。©Bartek Barczykトリトン晴れた海のオーケストラ ベートーヴェン・チクルスⅢ & Ⅳ指揮者なしで作り上げる“新しきベートーヴェン像”文:林 昌英ベートーヴェン・チクルスⅢ 6/29(土)14:00ベートーヴェン・チクルスⅣ 11/30(土)14:00第一生命ホール 2/27(水)発売問 トリトンアーツ・チケットデスク03-3532-5702 https://www.triton-arts.net/ 2020年に生誕250年を迎えるベートーヴェン。この数十年、様々なスタイルや解釈のパフォーマンスが出現し続けていて、名指揮者が名門団体と作る演奏も多様化しているが、いま最も熱いのは室内オーケストラによる交響曲演奏ではないだろうか。小・中編成では奏者一人ひとりの自発性が何より必要であり、その意欲はそのままベートーヴェン作品の強烈な表現力につながる。そして、日本でその最先端の挑戦を続けているのが、東京都交響楽団コンサートマスターの矢部達哉がリーダーを務める「トリトン晴れた海のオーケストラ」である。 晴海のトリトンスクエアにある第一生命ホールは、室内オーケストラにとって理想的な音響をもつ。そこを本拠地とする同団は、名手たちが集い15年に結成され、18年からは記念年での全9曲完奏を目指してベートーヴェンに取り組んでいる。昨年は2回の公演で完成度の高い鮮烈な演奏を実現、「新しいベートーヴェン像」と称えられるほどの評判を得てきた。今年は6月に4・7番、11月に8・6番を取り上げるということで、期待がさらに高まっている。 同団の魅力は「指揮者なし」のリスクを楽しんでいること。指揮者なしでも破綻なく合奏すること自体はアマチュアでも可能だが、彼らはその上で“いかに守りに入らず、自分たちの音楽を表現するか”という次元で音楽づくりをしている。個々人の能力と自発性を最大限まで拡大し、それをリーダーが受けとめて演奏として構築していく様は圧巻。いまという時代でこそ出会えるベートーヴェンだ。©大窪道治

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