eぶらあぼ 2019.3月号
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Presented by Japan Century Orchestra 日本センチュリー交響楽団(センチュリー)は2019/ 20年のシーズン中に記念すべき創立30周年を迎える。首席指揮者の飯森範親に新シーズンへの取り組みと抱負を聞いた。まずはザ・シンフォニーホールでの定期演奏会から。4月のブルックナーの交響曲第9番でスタート。 「ブルックナーはこれまで第4番と第7番を演奏しています。このオーケストラは今までブルックナーにそれほど熱心ではなかったのですが、ハイドンマラソンを続けるうちにオケの演奏のクオリティが向上し、その成果をブルックナーで生かしたいと思ったのです。第9番は楽団としては初挑戦となります。同じく“未完”のワーグナーの交響曲ホ長調と組み合わせます」 7月はダンディの「フランスの山人の歌による交響曲」ほかフランス作品が並ぶ。 「センチュリーは定期ではフランスものは多くなかったのですが、ここ数年楽団の特徴として、和声面に透明な響きが出せるようになり、こうした作品でも充分実力を発揮するようになったのです。多彩な音色のパレットは日本でもトップクラスで、世界のどこに出しても恥ずかしくないレベル。ダンディ作品では横山幸雄さんのピアノも期待してください。ラヴェルの『ボレロ』では各ソリストの力量も聴きものです」 10月は今年の目玉とも言うべきブラームス「ドイツ・レクイエム」を。 「この曲は記念年にふさわしい。今の日本人に何が必要か、何が足りないか。様々な問題を抱えた世の中で人としてどう生きるか。ブラームス独自の聖書解釈の中にその答えを感じ取ることができるかと思います。かつてセンチュリーが委嘱初演した團伊玖磨作品と共に、オケの原点に回帰すると同時に未来志向の選曲だと思います」 20年3月にはファジル・サイ作曲の新作となるチェロ協奏曲を初演。チェリスト新倉瞳の委嘱によるものだ。 「サイとは10年以上前から14,5回共演していて、ドイツや日本で彼の初演も多いんです。良い付き合いの中で新倉さんとの新作の話も決まりました。サイの曲はわかりやすく聴きやすい。カップリングのチャイコフスキー交響曲第5番も定期で私が振るのは初めてです」 さらに、いずみホールでのシリーズ「ハイドンマラソン」にも意欲を見せる。新シーズンは4ステージ。 「交響曲は異なる時期の曲、できればタイトルのある作品を毎回1つは入れたいですね。ハイドンの場合、毎回練習前に装飾音の追加やテンポ変化などの非常に細かい指示をスコアに書き込み、自分のやりたいことを楽員にイメージしてもらいます。そのほうが練習も効率的で、自分の解釈に対する楽員の自発的な意見や議論も出やすいのです」 取材前にハイドンマラソンのリハーサルを見学したが、確かに楽員からの意見や発案が活発で、非常に緻密な造形が創り上げられるのがよくわかった。飯森が首席指揮者になって5年。この間のオケの感触の変化を聞くと、「まったく変わりました! 初めはお行儀のいい大人しいオケでしたが、今はキャラクターが明るくなり、エスプリも自発性もある。ポテンシャルも非常に高いと思います。安心して音楽ができる環境や基盤を整えたい」。 30周年を記念する新シーズンにますます期待が高まる。問 センチュリー・チケットサービス06-6868-0591日本センチュリー交響楽団http://www.century-orchestra.jp/2019/20シーズンプログラムhttp://www.century-orchestra.jp/topics/2019-20program/ハイクオリティな日本センチュリー交響楽団の新シーズンを聴いてください!取材・文:横原千史Norichika Iimori/指揮©山岸 伸

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