eぶらあぼ 2019.3月号
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180CDCDCDCDベートーヴェン:交響曲第9番「合唱付」/朝比奈隆&新日本フィルバッハ:ゴルトベルク変奏曲/アンサンブル「音楽三昧」タイユフェール:2台のピアノのための作品集/中島彩也香&花岡千春Four Elements Vol.1:Water/小菅優ベートーヴェン:交響曲第9番「合唱付」朝比奈隆(指揮) 新日本フィルハーモニー交響楽団豊田喜代美(ソプラノ) 秋葉京子(メゾソプラノ) 若本明志(テノール) 多田羅迪夫(バリトン)栗友会合唱団J.S.バッハ(田崎瑞博編):ゴルトベルク変奏曲アンサンブル「音楽三昧」【菊池かなえ(ft/b-pi) 川原千真(b-vn/gb) 田崎瑞博(b-vc/b-va) 蓮池仁cb 加久間朋子cm】タイユフェール:バレエ音楽「鳥商人」、小さなお船があったとさ、コラールと変奏、ブルレスク組曲、「新しきシテール島」より、野外遊戯、2台のピアノのためのソナタ 他中島彩也香 花岡千春(以上ピアノ)メンデルスゾーン:「無言歌集」より「ヴェネツィアのゴンドラの歌第1番~第3番」/フォーレ:舟歌第5番・第10番・第11番/ラヴェル:水の戯れ/藤倉大:Waves/ショパン:舟歌/武満徹:雨の樹素描Ⅰ・Ⅱ/リスト:エステ荘の噴水、バラード第2番 他小菅優(ピアノ)収録:1998年6月、サントリーホール(ライヴ)フォンテックFOCD9800 ¥2500+税CRÉATIONCRT-1300 ¥2500+税ナミ・レコードWWCC-7889 ¥2500+税ORCHID CLASSICS/ナクソス・ジャパンNYCX-10037 ¥2500+税朝比奈隆が手兵大阪フィル以外で恒常的に指揮したのが新日本フィルで、《指環》全曲など名録音を多く残した。彼らとの最後のベートーヴェン・ツィクルスも、この「第九」で完結した。90歳になろうという巨匠の芸の奥行が随所で感じられる。冒頭楽章がとても立派な造形である。ヴィブラートをたっぷり効かせた弦の美しいこと。第1主題の頂点やカタストロフ的再現では、凄まじいエネルギーが放出される。反復を律儀に行うスケルツォや緩徐楽章の内面から沸き上がるような格調高い歌、終楽章の堂々たる歩みと有無を言わせぬ感動は、朝比奈ならでは。栗友会の合唱も素晴らしい。(横原千史)ピリオド楽器も交え、バッハからショスタコーヴィチ(!)まで聴かせてきた「音楽三昧」の最新盤は「ゴルトベルク変奏曲」。鬼才・田崎瑞博のユニークな編曲は、5人の奏者が変奏ごとに様々な組み合わせで登場し、原曲に忠実なものから、旋律線まで手を入れる思い切った創作まで多様。すべては名曲の世界に没入して全力で「遊ぶ(≒演奏する)」ために考え抜かれたもの。チェンバロ独奏のモノクロームなアリアの後、第1変奏からカラフルな音が広がる効果はアンサンブルならでは。愉悦を極めたお祭り(30の変奏)が終わり、楽しい夢からさめた後のモノクロのアリアがなんとも沁みる。(林 昌英)じつにユニークなアルバムが生まれた。フランス6人組の紅一点、ジェルメーヌ・タイユフェールによる2台ピアノ作品集である。バレエ音楽「鳥商人」、「ブルレスク組曲」「小さなお船があったとさ」「新しきシテール島」など、標題からも胸踊るような楽しい小品で構成されており、シンプルかつエスプリの効いた世界観が伝えられる。「2台のピアノのためのソナタ」も明るく小粋でエレガント。演奏は中島彩也香と彼女の恩師である花岡千春によるアンサンブル。カラフルでありながら統一感のある響きは、師弟関係・音楽家同士の厚い信頼関係を窺わせる。 (飯田有抄)ベートーヴェンのピアノ・ソナタ全曲演奏と録音を終え、「四元素」と題したコンサートシリーズを行っている小菅優が、ついにそのシリーズの第1弾を録音で発表した。今回は「水」をテーマに様々な国の、水に直接、もしくは間接的に関わる楽曲を集めた。思索的で哲学的なアイディアのもとに集められた楽曲たちが、小菅の豊かな表現力によって鮮やかに彩られながら、藤倉大の「Waves」を軸に静謐と激情の“波”が押し寄せてくる。改めて小菅優というピアニストの奏でる音楽があらゆる芸術への造詣の深さによって導き出されたものであることが実感できるだろう。 (長井進之介)
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