eぶらあぼ 2019.3月号
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174CDCDCDCDリサイタル ライヴ・イン・コンサート 2018/ペーター=ルーカス・グラーフドビュッシー:前奏曲集 第1巻 第2巻/浅田真弥子メシアン:トゥーランガリラ交響曲/佐渡裕&トーンキュンストラー管ベートーヴェン:交響曲第9番「合唱」/久石譲&ナガノ・チェンバー・オーケストラヘンデル:ソナタ op.1-11/ラウバー:3つのフモレスク/シューベルト(グラーフ編):アルペジオーネ・ソナタ第1楽章/ルーセル:笛吹きたち/福島和夫:冥/ゴーベール:ノクチュルヌとアレグロ・スケルツァンドペーター=ルーカス・グラーフ(フルート)田原さえ(ピアノ)ドビュッシー:前奏曲集第1巻・第2巻浅田真弥子(ピアノ)メシアン:トゥーランガリラ交響曲佐渡裕(指揮)ロジェ・ムラロ(ピアノ)ヴァレリー・アールマン=クラヴリー(オンド・マルトノ) トーンキュンストラー管弦楽団ベートーヴェン:交響曲第9番「合唱」久石譲(指揮) ナガノ・チェンバー・オーケストラ 安井陽子(ソプラノ) 山下牧子(メゾソプラノ) 福井敬(テノール) 山下浩司(バリトン) 栗友会合唱団 信州大学混声合唱団 市民合唱団収録:2018年8月、昭和音楽大学ユリホール(ライヴ)マイスター・ミュージックMM-4049 ¥3000+税収録:2018年10月、金沢市アートホール(ライヴ)シャッツグレーバーSHZ-IO3 ¥2315+税収録:2017年10月、ウィーン(ライヴ)エイベックス・クラシックスAVCL-25979 ¥2000+税収録:2018年7月、長野市芸術館 メインホール(ライヴ)オクタヴィア・レコードOVCL-00699 ¥3000+税1929年スイス生まれのフルート界の大重鎮的名手が、昨年89歳時に行った日本公演のライヴ録音。バロックから現代に至る重要作品で構成された内容は、往年の大家の余芸的なものではなく、第一線の奏者たる矜恃を保っている。演奏はどれも無駄な力が入らずして雄弁かつ瑞々しい。中でも無伴奏2曲の密度の濃さは驚異的だし、全体的な歌い回しはやはり至芸と言うに相応しい。自身の体で音を作る管楽器で、90歳間近にしてかくも強靭なパフォーマンスが可能であることを示した本作は、貴重なドキュメントの意味を持ちながら、聴く者に勇気を与えてくれる。(柴田克彦)パリのエコール・ノルマル音楽院に学び、国際的なコンクールにも多数入賞。巨匠ルービンシュタインの弟子インジックのもとで研鑽を重ね、薫陶を受けたピアニスト浅田真弥子のリスト作品集(2018年1月)に続く最新盤。昨年10月に金沢で行われたオール・ドビュッシー・リサイタルから「亜麻色の髪の乙女」などで知られる前奏曲集を全曲ライヴ録音。それぞれの曲が作曲者によって着想源が記されてタイトルとなっているが、演奏しだいで聴き手のイマジネーションを自由に掻き立てるのがこの作品の魅力。第1巻「沈める寺」や第2巻「枯葉」に古都金沢の風情を感じた! (東端哲也)ムジークフェラインにおけるまろやかな音質の録音も含め、柔らかい響きでふっくらと仕上げられた「トゥーランガリラ」。佐渡はオケを決して絶叫させずに響きを溶け合わせてこの曲に美しい落ち着きを与えている。熱狂ではなく覚醒させる演奏とも言えるが、これはユニークだ。「トゥーランガリラ」ももはや完全に古典作品となったことで多様な解釈が出て来る余地があるのだろうが、これは同曲の演奏史でも独自の地位を占める秀演と言い得る。メシアンその人の薫陶を得た2人のソロもさすがに卓越している(オンド・マルトノが極めて明晰に収録されているのが嬉しい)。(藤原 聡)久石譲が、音楽監督を務めるナガノ・チェンバー・オーケストラ(NCO)と、ついに「第九」をリリースした。腕のいい若手を結集したNCOの機能性、絞り込んだ編成だからこその透明度、生き生きとしたアーティキュレーションなど美質は多々あるが、最大の魅力は全編を貫いている疾走感。ピリオド・アプローチとも似て非なるこのリズム感・躍動感が、「ロックの先をいくベートーヴェン」という現代的コンセプトを体現している。裾野の広い聴衆を持つ久石だが、本作はこれからクラシックに親しみたいというファンのみならず、コア層にも訴えるクオリティとアクチュアリティを持っている。(江藤光紀)

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