eぶらあぼ 2019.2月号
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46©成澤 稔クァルテット・ウィークエンド2018-2019 エルデーディ弦楽四重奏団~ベートーヴェン充実の中期とモーツァルト純化の晩年~2/23(土)14:00 第一生命ホール問 トリトンアーツ・チケットデスク03-3532-5702 http://www.triton-arts.net/蒲生克郷 & 花崎淳生(ヴァイオリン/エルデーディ弦楽四重奏団)2大楽聖の中期と晩年の傑作に挑む取材・文:山田治生Interview エルデーディ弦楽四重奏団は、2018年に第一生命ホールでベートーヴェンの後期弦楽四重奏曲のシリーズを完結させ、19年からは同ホールでベートーヴェンの中期とモーツァルトの晩年の弦楽四重奏曲に取り組む。その初回となる2月のコンサートについて、第1ヴァイオリンの蒲生克郷と第2ヴァイオリンの花崎淳生に聞いた。 今回取り上げるのは、ベートーヴェン「ラズモフスキー第2番」とモーツァルト「プロイセン王第1番」。 蒲生「ベートーヴェンの後期の演奏を終えて、今度は非常に充実している中期を取り上げたいと思いました。ラズモフスキー3曲のなかで、第2番は特に情緒的でスタイルが個性的。その上唯一短調で書かれています。僕らがアマデウス弦楽四重奏団の講習(1990年~92年)を受けたときに、最初に弾いたのがラズモフスキーの第2番で、思い出のある曲です。この曲のレッスンのあと、家に帰って彼らのレコードを聴いたら、レッスンで言っていたこととすべて同じでびっくりしたのを覚えています。彼らは細かいことよりも解釈の要についてしっかりと教えてくれました」 花崎「ベートーヴェンは美しいだけでは充分ではなく、真実がなければならない、ともおっしゃっていましたね」 蒲生「『プロイセン王』、特にこの公演で演奏する第1番は、プロイセン王がチェロを嗜んでいたので、モーツァルトはチェロ・パートに華を持たせています。華を持たせるとは、チェロが高い音域を弾くことであり、そのために低音が薄くなって、和音が密集して、派手さがなくなるのです。ですからハイドン・セットよりも演奏される機会が少ないのかもしれませんが、決して曲の価値が低いわけではありません」 花崎「『プロイセン王』は響きが薄くなり、透明になりますね。ハイドン・セットはものすごく密度が濃いのですが、『プロイセン王』になると、書法が簡潔になり、ハイドン・セットにはなかった魅力もあります。モーツァルトの第2ヴァイオリンは、役割、立場が目まぐるしく変わるので、ついていくのが大変ですが、非常に面白くやりがいがあります」 また、両作品の間にはイベールのクァルテットを挟む。 蒲生「フランスには、ドビュッシーやラヴェルのほかにも名曲があることを知っていただきたく、イベールの弦楽四重奏曲を取り上げます」 花崎「明快な音楽です。第3楽章ではドビュッシーやラヴェルのピッツィカートの伝統が聴かれますね」 最後に、エルデーディ弦楽四重奏団の特徴について聞いた。 蒲生「みんな真面目なんですね。個人個人が“堅物”なのです(笑)」 花崎「作曲家の書いた作品を伝えるのが自分たちの一番の役割であるということで一致しています。その大前提があるので、最終的に互いに寄っていけます」銀座ぶらっとコンサート #131 鈴木大介 映画と音楽6 ~映画の日本~冬の午後に浸る“昭和ノスタルジー”文:オヤマダアツシ 銀座の街で昼下がりに音楽とティータイムを。常に人気が高い王子ホールの主催公演「銀座ぶらっとコンサート」だが、中でもギタリストの鈴木大介による映画音楽シリーズは、安定の人気を誇っている。 その第6回目となる2月20日は、鈴木自身が演奏などで関わった作品や、彼の代名詞となっている武満徹作曲による映画音楽からのセレクション。池辺晋一郎や林光、伊福部昭、小六禮次郎といった作曲家たちの音楽、ジャズ・ミュージシャンとして注目される菊地成孔の曲や、意外なところでは古賀政男の「影2/20(水)13:30 王子ホール問 王子ホールチケットセンター03-3567-9990 https://www.ojihall.jp/©横田敦史を慕いて」(実は鈴木自身が出演した映画『一枚のハガキ』で演奏)も。加えて、この日がちょうど命日にあたる武満徹の作品からは、鈴木がサウンドトラック用の自筆譜にあたって編曲した作品などを演奏する。 ジャンルを超越したさまざまな音楽を、多彩な表情とスタイルで弾きこなす鈴木のギターは、冬の午後に心地よい時間をプレゼントしてくれるだろう。

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