eぶらあぼ 2019.2月号
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43上岡敏之(指揮) 新日本フィルハーモニー交響楽団フランスの色彩溢れる魅惑の三編文:江藤光紀第601回 定期演奏会 トパーズ〈トリフォニー・シリーズ〉3/22(金)19:00、3/23(土)14:00 すみだトリフォニーホール問 新日本フィル・チケットボックス03-5610-3815 https://www.njp.or.jp/ 新日フィルの3月のトパーズ・シリーズでは、音楽監督の上岡敏之が芸術の都パリをテーマにしたプログラムを組んでいる。フランス風の色彩感をどう聴かせるかというあたりがみどころだが、ドイツの劇場で長くキャリアを築いた上岡ならではのひねりも効いてきそうだ。 まずはモーツァルトの交響曲第31番「パリ」。この曲は母と共にザルツブルクを離れ、マンハイムを経てパリにたどり着いたモーツァルトが久々に書いた交響曲。マンハイム楽派のスタイルを消化した上で、耳の肥えたパリの聴衆を満足させる堂々としたシンフォニーに仕上がっている。ドイツ流の音楽にフレンチの味付けを施した、とでも言ったらよかろうか。 後半はマニャール「交響曲第4番」。マニャールはドビュッシーやサティと同世代に属し、第一次大戦で非業の死を遂げるまで、寡作ながら質の高い作品を残した。最後から二番目の作品番号を持つこの交響曲は、よく流れる旋律を煌びやかなオーケストレーションが彩っており、ゴージャスでドラマティックだ。ドイツの影響を消化した19世紀後半のフランス器楽運動が、20世紀に入りダンディに学んだマニャールにおいて美しく花開いた。隠れ名曲、再発見の起爆剤になりそうだ。 ラヴェルの「ピアノ協奏曲」を弾くソロのクレール=マリ・ル・ゲは、着実なキャリアを積み表現の幅を広げてきた中堅で、パリ高等音楽院でも教鞭を執るなど、フランスを代表するピアニストとして存在感が増してきた。2つの骨太の交響曲に挟まれ、生粋のパリジェンヌが聴かせるエスプリが一層映えそうだ。クレール=マリ・ル・ゲ下野竜也(指揮) 東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団オペレッタ序曲特集で二人の作曲家のアニバーサリーを寿ぐ文:柴辻純子第322回 定期演奏会 2/16(土)14:00 東京オペラシティ コンサートホール問 東京シティ・フィル チケットサービス03-5624-4002 http://www.cityphil.jp/ 東京シティ・フィル2月の定期演奏会は、下野竜也の指揮で、19世紀後半のウィーンに縁のある作曲家が取り上げられる。ウィーンでオペレッタが爆発的に流行したのは、1850年代後半にオッフェンバックの作品が上演されたことがきっかけ。その流行を受けて、スッペ、ミレッカー、J.シュトラウスⅡの3人が競って作品を発表し、ウィンナ・オペレッタの黄金期「金の時代」が作られた。 今回は、2019年が生誕200年となるオッフェンバックとスッペの序曲が特集される。フレンチカンカンで有名なオッフェンバック《天国と地獄》序曲やスッペ《軽騎兵》序曲といった誰もが耳にしたことがある賑やかな曲を中心に、ウィーン特有の優美な旋律が揺れ動く、スッペ《美しいガラティア》序曲など、華やかな音楽ばかり。 一方、序曲の間にはさまれるのが、ウィーン生まれ、新ウィーン楽派のアルノルト・シェーンベルクの難曲「ヴァイオリン協奏曲」(1934~36)。アメリカ移住後に作曲され、彼が創始した十二音技法が用いられた。ハイフェッツが初演を断ったという晦渋な協奏曲だが、ヒラリー・ハーンの録音はじめ、なぜかこの曲、女性奏者による演奏が多い。今回もドイツを拠点に活躍する南紫音がソリスト。ロン=ティボー国際コンクールやハノーファー国際ヴァイオリン・コンクール上位入賞の若手実力派である。彼女の研ぎ澄まされた音色と超絶技巧、下野の緻密な組み立てが、作曲家独自の音楽の地平をどのように切り開くか楽しみだ。南 紫音 ©Shuichi Tsunoda上岡敏之 ©堀田力丸下野竜也 ©Naoya Yamaguchi

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